パナソニックといえば家電メーカーというイメージが強いですが、実は昔から自転車を製造・販売してきたメーカーでもあります。ケイリンに使用する本格的な競技車両も手掛けてきただけに、スポーツタイプの電動アシスト自転車であるe-Bikeに積極的に取り組んでいるのは言わば必然だと言えるでしょう。
そんなパナソニックが作るクロスバイクタイプのe-Bike「XU1」がモデルチェンジされました。オリンピックのケイリン競技で先導車を提供したノウハウを反映し、大きく進化した新型モデルの乗り味を体感してみました。
ケイリン先導車の低重心フレームを採用
パナソニックは電動アシスト自転車の国内トップメーカーですが、スポーツタイプのe-Bikeは「Xシリーズ」として展開しています。「XU1」はそのシリーズの売れ筋モデル。クロスバイクタイプではありますが、太めのタイヤに前後フェンダーやキャリアを装備するなど長距離ツーリングも視野に入れているのが特徴です。
e-Bikeの心臓部であるモーターとバッテリーはともにパナソニック製。自社で車体からモーター、バッテリーまで製造できるのがパナソニックの強みです。ママチャリタイプの電動アシスト自転車とは異なり、アシストの出力軸とペダル(クランク)の軸が一体となった1軸式の「スポーツドライブユニット」を採用しているのがe-Bikeの特徴。ペダルの回転数(ケイデンス)を上げてもスムーズなアシストが得られます。バッテリー容量は8Ah(36V)で最大82kmのアシスト走行が可能。充電時間は約3時間です。
モデルチェンジで大きく変更されたのがフレームの設計。ケイリン競技の先導車はバンクのついた競技場で時速50km以上で先導する必要があるため、高速域でも安定して走行できるように低重心化されています。そのノウハウをフィードバックし、新型「XU1」は従来モデルに比べてフレームの跨ぐ部分が40mm下げられていて、重心を下げるとともに跨ぎやすさも向上しました。適応身長は159~178cmとなっています。
変速ギアはリアのみの9段。フロントには変速機構を搭載していないのは、近年のe-Bikeには共通する傾向です。ブレーキは油圧式のディスクで24.5kgの車体をしっかり止めることができます。バッテリーから給電されるライトなど、日常で便利な機能も装備。
オリンピック先導車から継承された安定性を実感
700×50Cというタイヤはかなり太めなので、見た目には漕ぎ出しが重そうにも見えるかもしれませんが、実際に走り出してみるとアシストが強力なのも手伝って、あっという間に速度が伸びます。e-Bikeは一般の電動アシスト自転車に比べてスムーズなアシスト感が特徴ですが、モーターを手掛けるメーカーによってそれぞれ特徴あります。パナソニック製は割と出だしから強力にアシストする傾向なので、e-Bike初心者にもアシストの恩恵が実感しやすいと言えます。特に登り坂では、アシストの強さを感じやすいはずです。
スピードが乗るサイクリングロードも走ってみましたが、オリンピックの先導車からフィードバックされたという安定感はさすが。横風が吹き付けるような状況でも振られることなく安心してスピードをキープできます。アシストが効く時速24km以下で走るのが快適ではありますが、それを超えた速度での巡航でも不安感はありません。低重心化されたフレームと、フロントフォークの角度が少し寝た安定性重視のセッティングとなっているのが効いているようです。反面、曲がるときは普通のクロスバイクに比べて慣れるまでは大回りする傾向が感じられました。
クロスバイクやロードバイクというと細いタイヤを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、太いタイヤはエアボリュームが大きく振動の吸収性が高いので、長距離走ったときに疲れにくいという特徴があります。近年はロードバイクなどでも太めのタイヤが見直されてきていますが、e-Bikeは漕ぎ出しの重さをアシストで補えるので、メリットだけを享受することができます。
安定性重視のフレーム設計と相まって、走行中の気持ち良さは格別。乗っていると遠出がしたくなってきます。e-Bikeであれば、体力に自信がない人も帰りの疲れを心配する必要もないので、安心して長距離ツーリングに出掛けられます。少し長い距離の通勤などにももちろん対応できるので、リモートワークでたまの会社への出社はe-Bikeで、といった使い方にも良さそうです。
撮影/松川 忍
【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】