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掃除機
2022/6/18 6:00

ダイソンの課題は「2本ブラシの掃除機」がクリアした! 少人数世帯が高く評価する「オムニグライド」の魅力と開発の経緯

2021年4月、ダイソンから今までとは異なるアプローチのコードレス掃除機が発売されました。ヘッドに2本のブラシを搭載し、軽いかけ心地で掃除ができる「Dyson Omni-glide(ダイソン オムニグライド)コードレスクリーナー」(以下、オムニグライド・直販価格 税込6万9300円)です。奇しくも同時期、バルミューダからも2本のブラシを搭載した「BALMUDA The Cleaner(バルミューダ ザ・クリーナー)」が発売。さらに今年5月には、さらにコンパクト化&吸引力がアップした新モデル「BALMUDA The Cleaner Lite」(バルミューダ ザ・クリーナー ライト)」が発売されたのは既報の通りです。

 

国内でも屈指の知名度と注目度を誇る2メーカーから、立て続けに2本ブラシのコードレス掃除機が発売されると、「2本ブラシってそんなにいいの?」と思う人も多いのではないでしょうか。そこで今回改めて、ダイソンのオムニグライドの魅力を探るべく、開発の経緯やいままでのダイソンと違う点について、シンガポールのデザインエンジニアに話を聞きました。

 

全方向に駆動するまったく新しいクリーナー

↑「Dyson Omni-glideコードレスクリーナー」を自宅でも使ってみました

 

まずは、オムニグライドがどのような製品かご紹介しましょう。その特徴は、今までのダイソンクリーナーとはまったく異なります。従来モデルは手元部分に大きなハンドル、その近くに大きなモーター部とクリアビン(ダストカップ)がついており、パイプの先にヘッドがあります。ヘッドに搭載されたブラシはもちろん1本。モーターのパワーや重量、機能に差こそあれ、基本的にはこの構成です。

↑最上位モデル「Dyson V12 Detect Slim Total Clean」(実売価格10万2300円)。毎分最大12万5000回転のモーターや11基のサイクロンを備え、パワフルな吸引力を発揮する

 

一方のオムニグライドの見た目は従来モデルと大きく異なり、ハンドルやモーター部が直線上にあります。さらにヘッドには「Omnidirectional Fluffy(オムニダイレクショナル フラフィ)クリーナーヘッド」と呼ばれる2本のブラシと4つのキャスターを搭載。2本のブラシは内側に回転するため押しても引いてもゴミが吸引できるほか、浮いているようなかけ心地が味わえます。さらに4つのキャスターにより、前後だけでなく左右斜めと全方向にヘッドが動かせます。

↑オムニグライドはハンドルやモーター部が直線上にある

 

筆者も使ってみましたが、今までのダイソンを使ったことがある人なら、おそらく「こんなにも違うのか」と驚くはず。フワッと軽い力で動かせるのはもちろん、横にも斜めにも動くので、掃除したい場所にピタッとアプローチでき、ストレスを感じさせません。軽やかに掃除する、とはまさにこのこと。

↑いすやテーブルの足回りにもスムーズに回り込みます

 

↑180度寝かせた状態で掃除ができるのも、ダイソンでは初の機能。ソファやベッドの下も掃除しやすくなりました

 

やはり横に動くというのは本当に便利。「動かせるのは前後のみ」という制約から解放され、掃除したい場所に自由に動かせるようになりました。

 

実際、この軽快なかけ心地は今までのダイソンユーザーとは異なる層に高く評価され、ダイソンによると「すき間時間にササっと掃除したい」と考える少人数世帯の購入が増えたそう。特にこのコロナ禍、95%の人が昨年と同等もしくはそれ以上の頻度で掃除をしている(「グローバルダスト調査2021」より)ことから、忙しくても確かな吸引力で手軽に掃除が行えるオムニグライドが選ばれたようです。

 

困りごとを解決していったらオムニグライドに行き着いた

では、このオムニグライドはどのようにして生まれたのか、開発秘話をシンガポールのデザインエンジニア、ヴィヴィアン・ティウさんにインタビューしました。

↑ダイソンのデザインエンジニアRDDフロアケアのヴィヴィアン・ティウさん。マンチェスター大学で機械工学の修士号を取得して卒業後、2019年にダイソンに入社。Dyson V12 detect SlimおよびDyson V15 Detectの光学設計に携わり、ヘッドのレーザー技術を開発

――オムニグライドはいままでとは全く異なるコンセプトですが、どのような経緯で誕生したのでしょうか。

 

ティウさん 私たちは常にエンジニアマインドをもってグローバルに市場調査を行い、ユーザーの困りごとを解決するために研究開発に行い、より吸引力が高いモデル、吸引力と軽さを両立したものなどを世に送り出してきました。こうして1つずつ着実に困りごとを解決していくなかで、まだ解決できていなかったのが、「都市部のコンパクトな家に住んでいて、忙しいけれど手軽にきれいに掃除したい」というニーズです。私たちはそれを解決するために、このオムニグライドを開発しました。

 

――なぜブラシを2本搭載しようと思われたのでしょうか。

 

ティウさん 「短時間で効率的に掃除したい」というニーズに応えるため、前に押しても後ろに引いてもホコリがしっかり吸えるよう、2本のローラーをそれぞれ内側に回転するようにしました。それによって2倍とはいきませんが、掃除効率が大幅にアップします。また内側に回転させることによって中央に集められた空気の圧力が高くなり、軽く浮き上がることで、軽快な浮遊感が得られます。これも「手軽に掃除したい」という問題の解決につながると考えたわけです。

 

――開発で難しかった点や時間がかかったところがあれば教えてください。

 

ティウさん ダイソンとしての吸引力は確実に担保しつつ、軽いかけ心地、浮遊感を実現するのが難しかったですね。ヘッドが床にくっつきすぎても浮遊感は出せませんし、浮きすぎると今度はゴミがしっかり取れません。この適切な距離感を導き出すのに時間がかかりました。またキャスターの位置も難しく、場所が悪いとヘッドに引っかかったり、ゴミを弾いたりしてしまうので、適切な場所を見つけるまで苦労しました。オムニグライドは2020年7月に韓国で初めて販売されましたが、そこに至るまでに1年半近くを要しています。

↑2本のブラシ、4つのキャスターの適切な位置が吸引力と浮遊感を実現しているそう

 

↑吸引力も十分です

 

――これは今までのダイソンとは異なる方向性の掃除機と考えていいでしょうか。

 

ティウさん いいえ、ダイソンの理念は創業以来変わっていません。それは冒頭にもお伝えしたように、エンジニアマインドをもってユーザーの困りごとを解決したい、というもの。オムニグライドも、その一環で生まれました。異なる方向性ではなく、より幅広い選択肢を用意することで、ユーザーが生活様式に合わせて選べるようになったと考えています。特に特定の市場に向けて開発したものではありませんが、靴を脱ぎ、床の近くで生活するライフスタイルの日本には非常にマッチしているのではないでしょうか。

 

部屋の空気よりきれいな空気を排出する

――では最後に、ダイソンならではの強みを教えてください。

 

ティウさん ダイソンといえば吸引力が注目されることが多く、私たちも常に高性能なモーターを開発し続けています。このオムニグライドには、毎分最大10万5000回転するDyson Hyperdymium(ダイソン ハイパーディミアム)モーターを搭載しています。そしてもう1つ、ダイソンが創業以来取り組んでいるのが、もう1つの大きな困りごとであるハウスダストの除去。ダイソン微生物研究ラボでは25年以上ハウスダストの研究を行っており、世界各国のホコリのサンプルには何が含まれているか、それを取り除くためには何が必要か、常に研究し続けているのです。

 

そのため、ダイソンクリーナーには、高性能なフィルターが搭載されており、オムニグライドに関しては5段階にわたりゴミを捕集する設計により、0.3μmもの微細な粒子を99.99%捕らえ、部屋の空気よりきれいな空気を排出します。清潔性に敏感になっている今だからこそ、掃除機は吸引力だけでなく、排気にも安心してお使いいただけるものを提供したいと思っています。

↑ダイソンのコードレス掃除機には高性能フィルターが搭載されているため、顔の近くから排気が出ても安心です

 

2本のブラシによって軽快な浮遊感が得られ、横にも斜めにも動くためストレスを感じさせない点、前に押しても後ろに引いてもホコリがしっかり吸える点など、メリットの多いオムニグライド。ダイソンならではのパワーやきれいな排気も魅力です。特にコンパクトな住宅にお住まいで、掃除機の取り回しにストレスをためている方は、ぜひ注目してみてはいかがでしょうか。