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2022/8/13 21:00

田んぼ&歴史+景勝地「秋田内陸縦貫鉄道」の魅力にとことん迫る

おもしろローカル線の旅91〜〜秋田内陸縦貫鉄道(秋田県)〜〜

 

秋田県の内陸を南北に縦断する「秋田内陸縦貫鉄道」。車窓からは秋田らしいのどかな田園風景と田んぼアート、美林、景勝地が楽しめて飽きさせない。94kmの路線距離を2時間〜2時間半ほどで、乗り甲斐たっぷりの路線だ。そんな秋田内陸縦貫鉄道の魅力に迫ってみたい。

 

※取材は2014(平成26)9月、2016(平成28)年9月、2022(令和4)年7月30日に行いました。一部写真は現在と異なっています。
8月15日現在、豪雨災害の影響で鷹巣駅〜阿仁合駅間が不通となっています。運行状況をご確認のうえ、お訪ねください。

 

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【内陸線の旅①】国鉄阿仁合線として始まった路線の歴史

東北地方の中央部を南北に貫く奥羽山脈、その西側を秋田内陸縦貫鉄道が走る。その概要を見ておこう。

 

路線と距離秋田内陸縦貫鉄道・秋田内陸線:鷹巣駅〜角館駅間94.2km
全線非電化単線
開業1934(昭和9)年12月10日、阿仁合線(あにあいせん)鷹ノ巣駅〜米内沢駅(よないざわえき)間が開業、1989(平成元)年4月1日、比立内駅(ひたちないえき)〜松葉駅間が延伸開業し、秋田内陸線が全通
駅数29駅(起終点駅を含む)

 

今から88年前に鷹ノ巣(現・鷹巣)駅から米内沢駅まで開業した阿仁合線は、その後に延伸されていき、1936(昭和11)年9月25日に阿仁合駅(あにあいえき)まで開業する。太平洋戦争の後に、再び延伸工事が続けられ1963(昭和38)年10月15日には比立内駅まで路線が延びた。

 

一方の角館駅側の路線の歴史は浅く、国鉄角館線として1970(昭和45)年11月1日に角館駅〜松葉駅間が開通した。

↑阿仁合駅前に建つ「内陸線資料館」。秋田内陸線の歴史紹介だけでなく、阿仁鉱山や林業に関しても紹介する。入館無料

 

阿仁合線は沿線で産出された木材の運搬と、旧阿仁町内(現・北秋田市)にあった日本の代表的な銅山・阿仁鉱山からの鉱石輸送を行うために路線が建設された。しかし、比立内駅まで延伸された時代には、すでに鉱山の操業も、林業も衰退しつつあり、貨物営業は1980年代初頭で廃止されてしまう。後から造られた角館線も、当初から旅客営業のみの路線だったこともあり、角館線は1981(昭和56)年に、阿仁合線は1984(昭和59)年と次々に路線の廃止承認された。

 

すでに日本鉄道建設公団では、比立内駅〜松葉駅間の鷹角線(ようかくせん)の建設を進めており、廃止承認された阿仁合線と、角館線と、未成線だった鷹角線を引き継いだのが第三セクター経営の秋田内陸縦貫鉄道だった。1986(昭和61)年に阿仁合線と、角館線を暫定的に開業、1989(平成元)年4月1日に完成した鷹角線を結んだ秋田内陸線(以降「内陸線」と略)の営業が始められたのだった。

 

【内陸線の旅②】車両はすべて色違い!特別車両も用意される

秋田内陸縦貫鉄道は3タイプ、計11両の気動車が使われる。みな色違いということもありバラエティに富んで見える。車両形式をここで見ておこう。

↑秋田内陸線のAN-8800形は現在9両が在籍。そのうち6両をならべてみた。写真のようにみな車体の色が異なる

 

◆AN-8800形

↑AN-8808の愛称は「秋田マタギ号」。内装などかなり凝った造りになっている。訪れたこの日も急行「もりよし号」として走る

 

1988(昭和63)年、秋田内陸縦貫鉄道の全線開業時に9両導入されたのがAN-8800形で、新潟鐵工所が開発したローカル線用の軽快気動車NDCシリーズの車両が採用された。他社の軽快気動車とほぼ同様ながら、寒冷地向けに乗降扉が引き戸式とされている。

 

導入された当時は白地にエンジ色の帯という塗装だったが、その後に全車両が異なる塗装に変更された。車内はヒマワリのイラストや、かわいい秋田犬の写真がラッピングされた内装で、楽しめるように工夫されている。またAN-8808のみは「秋田マタギ号」としてレトロな木の内装に変更され、有料急行列車の「もりよし号」に使われることが多い。

 

◆AN-8900形

↑AN-8900形はAN-8905の1両のみ残り「笑EMI」として走る。側面の窓が大きいのが特長となっている

 

秋田内陸線の全通にあわせて設けられた急行列車用に用意された車両で、5両が新潟鐵工所で造られた。そのうち4両は前面が非貫通の造りで、一時期は奥羽本線に乗り入れる臨時列車にも使われた。非貫通の車両は、片側にしか運転席がなく、2両での運行が必要だったために、非効率ということもあり、4両すべてが廃車に。AN-8905のみ両運転台だっため、その後も活かされ、2020(令和2)年に2月にリニューアルされ、愛称も「笑EMI(えみ)」に。主に急行列車用車両として使われている。

 

◆AN-2000形

↑前面に展望席があるAN-2000形。「秋田縄文号」のヘッドマークも付く。側面の窓も広く眺望に優れている

 

1両のみ2000(平成12)年に導入された非貫通タイプの車両で、当初は団体専用車として使われた。2021(令和3)年12月には「秋田縄文号」に改造され、主に急行列車の増結用に利用されている。

 

秋田内陸線の沿線には縄文遺跡、伊勢堂岱(いせどうたい)がある。遺跡をイメージした縄文土器や土偶などのイラストが室内を飾る。先頭部の展望席からは前面展望が、また側面の窓も大きく風景を楽しむのに最適な造りとなっている。

 

なお、特別仕様の車両は運行日が決められている。それぞれの運行は次のとおりだ。

 

AN-8808「秋田マタギ号」:第1・2・4・5土曜日

AN-8905「笑EMI」:第1・2・4・5日曜日

AN-2000「秋田縄文号」(普通車両と2両編成):第3土・日曜日に運行されている。

*検査などで変更されることがあり注意。
↑秋田犬の模様付きのクロスシートを使った車両も(左上)。小さなテーブルには、イラストの路線図がつけられ便利だ

 

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