2022年10月、文房具界隈にちょっとしたザワつきが起きた。というのも、YouTubeのパイロット公式チャンネルで「FRIXION 3.0 デビュー!」という旨のティザームービーが公開され、そこで新型の「フリクションボールノック」を11月に発売する、と発表されたのである。
2007年に発売された初代フリクションボールが“FRIXION 1.0”だとして、ノック式のフリクションボールノックが2.0になるのか、あるいは画期的なシナジーチップ搭載の「フリクションポイントノック04」を2.0とするのか、そこは分からない。
ただ、なににせよそれぐらいのインパクトがないと、ステージを一段上げた3.0などという表現はしないはず。つまり、とにかくすごい新フリクションが登場するに違いないのである!
新型フリクションボールは注目機能を全部のせ!?
……と、そこまで発売前にハードルをガン上げしてきた3.0こと「フリクションボールノックゾーン」(以下、ノックゾーン)が、いよいよ11月18日に発売となった。
昨年に比べてボールペンの話題がやや盛り上がりに欠けた2022年だが、このタイミングでいよいよビッグタイトル来たか! という感じである。
パイロット
フリクションボールノックゾーン ラバーグリップモデル
ボール径0.5mm(左)・0.7mm径(右)
各500円(税別)
ラインナップは、税別3000円のマーブル調樹脂グリップモデル、税別2000円の木製グリップモデルと、写真のラバーグリップモデル(税別500円)があるが、今回は上位2モデルの用意が間に合わず、ラバーグリップモデルのみのレビューとなる。
とはいっても、主な違いはグリップと口金の素材だけであり、基本機能は共通だ。
まずビジュアルだが、従来のフリクションボールノックと比較して分かりやすいのが、全長の違いと金属リングだろう。
長さはノックゾーンが4mmほど長くなっており、その分だけスマートに感じられる。加えて、最近のパイロットが「アクロ1000」「ILMILY油性ボールペン」など1000円前後のやや高額なシリーズに導入している軸中央の金属リングが、落ち着いた高級感を演出している。
つまり、パイロットとしては「ノックゾーンは高級フリクションですよ」とアピールしているようだ。最も安いモデルですら従来の2倍以上の価格なので、実際高級フリクションと言って、間違いはないだろう。
1.新インキ「プレミアムフリクションインキ」を充填した金属製レフィル
ノックゾーンに搭載された目玉機能は3つ。まず「プレミアムフリクションインキ」なる新インキを搭載した、金属製の「Ver.2レフィル」。これまでフリクションのインクは、「黒が灰色に見える」と言われてきたほどアッサリしたものだったが、プレミアムフリクションインキは従来よりもくっきり濃い発色に。
なるほど、黒で書き比べてみると、かなり濃くくっきりとした黒さが見て取れる。インクの薄さが苦手でフリクションを嫌うユーザーというのは意外と多かったようだが、これなら納得してもらえるのではないか。
シナジーチップの潤沢なインクフローによって、クッキリとした濃さを表現していたポイントノック04と比較しても、確実に黒くて濃い。
しかも、その濃いインクを搭載したリフィルは、金属化によってパイプの肉厚を薄くすることで、インク容量を従来比70%増量。筆記継続距離も40%アップとなっている。
ただ、このリフィルはかなりずっしりとした重量があり、結果としてペン全体の重心がやや後ろ気味に来ているのは気になるところだ。
ちなみにこれは、ラバーグリップモデルの場合。サンプルを試してみた感じでは、木製グリップとマーブル調グリップなら、グリップ重量と相殺されて、ほどよいバランスとなっているように感じた。重心が気になるタイプの人は、高級グリップモデルの方を試してみると良いだろう。
ノック時の衝撃を吸収する「ノイズカットノック」
ノックノブを押し下げると、その手応えが柔らかいことに気付くかも知れない。それが静音性を高めた「ノイズカットノック」機能である。ノックパーツ内部にバネを追加することでノック時の衝撃を吸収。ノック音を従来比78%カットしたとのこと。
個人的な体感として、78%カットという数値的な部分はピンと来ないが、とはいえノックの高音域がバッサリとカットされて響きにくくなっているのは、聞けばすぐに分かると思う。
また、押し込んだ状態のノックノブを内蔵バネのテンションで固定することで、ペン自体を振ったときにノブがカチャカチャ鳴らないようになっている。これも地味に嬉しい効果だ。
3.ペン先のブレを抑える「チップホールドシステム」
3つめの機能が、ノック式特有のペン先のブレを抑制する「チップホールドシステム」。口金の中に三又形状の「チップホルダー」という新パーツを搭載し、これがノックON時のリフィル先端を、ギュッとホールドする仕組みである。
書いてみると、確かに先端ブレはほぼ完全に抑えられているようで、筆記感はスムーズ。特に細かな文字を密度高く書こうとすると、ブレはない方がありがたい。