2022年で創刊40周年を迎えた、押しも押されもせぬモノ誌の決定版「モノ・マガジン」と、創刊23年目を迎えたピチピチの“新卒世代”「ゲットナビ」とのコラボ連載。英国の高級折りたたみ自転車ブランド「ブロンプトン」に、このたび日本法人ができた、ということでメディア向け発表会にお邪魔しました。
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– Target 7.ブロンプトン–
底辺折りたたみサイクリストの憂鬱
かれこれ6年ほど、某国内大手自転車チェーン店のPB(プライベートブランド)折りたたみ自転車に乗っています。価格は1万7800円。自宅マンションの駐輪場代を惜しみ、「玄関前に置いておけるくらい小さい自転車」というつるセコなコンセプトの下に購入しました。モノ誌の編集長を名乗るのをはばかられる買い物だったと反省しつつも、決定的に壊れていないため、なんだかんだでまだ乗り続けています。
当然ながら不満は尽きません。走行エリアは主に筆者の住む東京・世田谷区のなだらかな舗装道路であるにもかかわらず、これまで二度もアスファルトにタイヤを切りつけられてパンクを経験しています。また、サスペンションを搭載し忘れたのかな、というほどダイレクトに段差を感じられ、ロングライドはケツ痛との戦いに。そして何より、折りたたむのが難しいんすよね~。どれくらい難しいかというと、初めて乗ったその日に正しい折りたたみ方がよくわからなくなって諦めてしまい、以来6年間一度も折りたたんでいないほど。そのため自宅マンションの共有スペースにはみ出してしまい、管理会社から何度か警告を受けています。
ブロンプトンは日本で2ラインを展開中
そんな我が愛車の対極にあるのが、英国の高級ブランド「ブロンプトン」。1975年に創業した同社の自転車は、ロンドンにある自社工場で職人の手によって一台ずつ丁寧に作られています。独自の折りたたみ機構も特筆で、20秒以内にホイールより少し大きいくらいのサイズにまで折りたためるのがウリです。エエやん。
現在日本では、オールスチールのクラシカルな「C Line」と、チタンを取り入れた軽量の「P Line」が展開中。C Lineは、街乗りに適した2速の「URBAN」、毎日の通勤が快適になる3速の「UTILITY」、急坂にも耐える6速の「EXPLORE」を用意します。P Lineは4速の「URBAN」のみ。
そして、2023年に日本でのラインナップに加わりそうなのが、オールチタンで7.45kgの超軽量設計を実現した「T Line」。日本での発売日や価格は未定ですが、1速の「ONE」と4速の「URBAN」を用意しています。
「BROMPTON JAPAN」設立発表会に潜入!
同社の製品は、長らく「ミズタニ自転車」が日本の輸入総代理店として販売していましたが、このたび契約が満了。日本法人「BROMPTON JAPAN」が設立されました。去る11月に行われたメディア・ディーラー向けの発表会では、ブランドコンセプトや日本市場での展開などについて紹介。実際に数多くの自転車が展示され、試乗も可能でした。
日本市場へ本格参入した理由
ブロンプトンは日本市場をどのように見ているのでしょうか? ウィルさんとマークさんに話を聞きました。
「かれこれ20年以上もミズタニ自転車さんにお世話になり、日本で製品を展開してきました。英国でのブロンプトンファンは、いわゆる“中年のジェントルマン”が多いのですが、日本でもそれに近い傾向が見られます。ただし、ヨーロッパでは都市部を中心に移動手段としてブロンプトンの自転車を利用する人が多いのに対して、日本では余暇に郊外で散策するための乗り物としているケースが多いのが特徴です」(マークさん)
「日本は郊外や山間部の道路も整備されていて、どこへでも気軽にブロンプトンの自転車を持ち出してサイクリングを楽しむことができます。一方で、コロナ禍をきっかけに、通勤用の交通手段として利用する人も増えており、若い世代のユーザーも増えてきました。環境配慮への意識の高まりに合わせて、今後はより幅広い世代へと広がっていくと考えていますし、女性のユーザーも増えるでしょう」(ウィルさん)
本格的に日本市場へ進出する決め手となったのは、2023年に日本発売が予定されているオールチタンのT Lineだと言います。
「T Lineは、技術とデザインを極限まで高めたフラッグシップであり、私がイメージするブロンプトンの最先端モデルです。もちろんすべて英国の自社工場内で製造しています。開発には10年かかりましたが、チタンをこれほど使いこなしている自転車はほかにないと自負しています。このマスターピースを持ち込むことで、日本の皆さんに『ブロンプトンはこんなことができる』と示したいのです。日本はクラフトマンシップを大切にする文化だと思いますので、きっと受け入れていただけると思います」(ウィルさん)
「日本市場にはとても可能性を感じていますので、よりユーザーへの理解を深めて、正確にニーズをつかんでいきたい、そして我々も進化していきたいと考えています。そのためにBROMPTON JAPANを設立することになったわけです。まずはグローバルモデルのみのラインナップですが、これから2~3年の間に日本限定のデザインは出てくるでしょう。本格的に日本へ進出することで様々な日本のブランドと近づくことができますから、新しいコラボレーションの芽も生まれるでしょう」(マークさん)
ものづくりへのこだわりを大切にする一方で、人々のライフスタイルへ溶け込んでいくことも重要視しているのがブロンプトンの特徴です。
「日本の自転車市場は、一部のファンへ向けたものになっていることは否めないでしょう。しかし、本格的なサイクリストは全人口の2~3%に過ぎないため、これでは本当の普及は望めません。ところが『自転車に乗ったことのある人』は90%もいるわけなので、そういった人々にブロンプトンのストーリーをシェアしていく。そして皆さんに“自分ごと化”してもらえるブランドになれば、自然と選んでいただけるはずです。効率的な移動手段である自転車を日本の皆さんに思い出してもらい、ブロンプトンの製品を生活の一部にしてもらえるようなコミュニケーションをしていきたいです」(ウィルさん)
これからも日本をご贔屓に――!
って、お2人とも随分と日本を贔屓にしてくれてます。メディア向けのリップサービスはあるかもしれませんが、そこまで日本市場を重視して、文化の深いところにまで目を向けてもらえるのはうれしいですね。お2人ともこれまで幾度となく日本を訪れて、ビジネスだけでなく観光も楽しんでいただけているようで――。
「東京のほか、京都、神戸、沖縄などに訪れて、色々な道でサイクリングを楽しみました。19年には妻も来日して一緒にサイクリングしましたよ。サイクリングの魅力のひとつが、思い立ったらふと店に立ち寄って、買い食いなどを楽しめること。10年ほど前に日本で過ごしていたある日、サイクリングしていると小さいお店に行列ができていたのが目に留まりました。何だかわからないけれど、きっとおいしいんだろうと思って私も並んで、一緒に並んでいた日本の方に勧められたものを選んで買いました。これが『おでん』だったのですが、これが驚くほどおいしくて。印象に残っているのは、変わった食感のこんにゃくです。とてもおいしくいただきました」(ウィルさん)
「寿司などポピュラーな日本食も好きですが、なかでも抹茶味のアイスクリームは衝撃的においしかったですね。あとはバナナ味のキットカットかな。お菓子のフレーバーのバリエーションが多いので、自宅へお土産に買って帰ると家族に喜ばれるんですよ。日本は、都市部でも郊外でも、自転車でないと入れないような細い道がありますよね。クルマで移動していたら気づけないようなお店を見つけたり、色々な人と出会えたりするのはうれしいものです。こういった体験を多くの人に味わってもらえたらと思います」(マークさん)
ブロンプトンの自転車が日本でどのように受け入れられ、広まっていくのか。そして日本のカルチャーを受けて、ブロンプトンが今後どのように進化していくのか。2023年はますます見逃せなくなりそうです!
モノ・マガジン前田編集長のレポートはこちら→https://www.monomagazine.com/58082/
写真/中田 悟