家電
オーブン・レンジ
2022/7/6 11:45

内食時代に深まる「レンジ解凍」のお悩みにシロカが出した「一発解答」とは?

2022年で創刊40周年を迎えた、押しも押されぬモノ誌の決定版「モノ・マガジン」と、創刊23年目を迎えたピチピチの“新卒世代”「ゲットナビ」、2誌の編集長が1つのモノにおのおのの角度から迫るコラボ連載は、今回ではや第5回。今回は、進境著しい家電メーカー・シロカに潜入しました!

↑左がモノ・マガジンの前田賢紀編集長、右が筆者・GetNavi編集長の川内一史。中央はこの後に登場する開発者の佐藤さん

スバル「アウトバック」やワークマンのキャンプギアなど、過去の記事はこちらから

 

二つの目で見ればピントが合う! ゲットナビ×モノ・マガジンの「ヒット」スコープ

– Target 5.シロカ「電子レンジSX-18D132」–

ところで、シロカというメーカーにどのような印象を持っていますか? シンプルな機能とデザイン、リーズナブルな価格、ジェネリック家電……これらはあながちすべて間違いではありませんが、いまはそれだけではないのです。同社の製品開発メンバーのひとり、佐藤一威(さとうくにたか)さんはこう語ります。

 

「従来は、既製品を工場から買い付けて、後からデザインして製品化するというやり方が主流でした。しかし、2年前に代表が交代したことを契機に、機能もデザインも新しくシロカらしい製品を作っていこうという、モノ作りの機運が高まったんです」

 

モノ作り企業に生まれ変わったシロカ。そのなかで生まれたヒット製品のひとつが、同社初の電子レンジSX-18D132(実売価格1万7980円/税込)。食材を温める機能だけを搭載したいわゆる単機能レンジですが、その大きな特徴は「解凍」機能にあります。

↑シロカ初の電子レンジSX-18D132と、開発を担当した佐藤一威さん。SX-18D132は現在ブラックのみでの展開となっています

 

手巻き寿司に失敗した社員の声がきっかけだった

コロナ禍で外出に制限がかかるなかで、スーパーで魚や肉を大量買いして自宅で冷凍保存するというライフスタイルが広まりました。メインの冷蔵冷凍庫とは別に“セカンド冷凍庫”を導入する家庭も増えています(川内家でも小型冷凍庫を買いました)。その一方で、従来の電子レンジの解凍機能に不満を抱く人も増加。シロカの社内からも声が上がったそうです。

 

「ある社員が、週末に手巻き寿司を楽しもうと刺身用のマグロをサクで購入して冷凍していたのですが、レンジ解凍がうまくいかず、ツナフレークのようになってしまいガッカリしたという話を聞きました。これはニーズがあるのではと考えて、やさしく解凍できる機能を持つ電子レンジの開発に着手しました」(佐藤さん)

 

ちなみに筆者もたまーに料理をしますが、電子レンジで最も使うのはやっぱり解凍。冷凍ごはんを温めたり、買い置きしていた肉を解凍したり。肉はどうしても火が入り過ぎてしまい、表面が焼けてしまうことがほとんど。どうせその後の調理で加熱するし……と、あまり気にしないように努めていましたが、やっぱり生肉をそのまま調理したときと比べると、味が断然落ちるんですよね。魚の刺身をレンジ解凍するなんて、完全に諦めてました。

↑シンプルでスタイリッシュなデザインも魅力。庫内もスクエアのため汚れた際などに手入れしやすい

 

解凍のカギは低出力での安定

佐藤さんはまず他社の単機能レンジをいくつか購入。社員から要望のあったマグロのサクと、ひき肉の解凍を試してみました。やはり取扱説明書通りに加熱しても、変色したり、ドリップが大量に出たりと、なかなかうまくいきません。一般的な電子レンジの解凍モードでは200W出力で加熱するのですが、これは「ずっと200Wで加熱する」のではなく、「通常の500W出力とオフを断続的に繰り返して平均200W出力にする」という方式を採用しています(下写真参照)。当然ながら最大出力が高いほど食材を傷めるリスクがあるため、佐藤さんはこれをいかに抑えて安定した出力を実現できるかを研究しました。

 

と、理屈ではいけそうな気がするものの、実際に試してみるとそう甘くはありません。加熱には、出力を制御しやすいインバータ方式を採用しましたが、それでも200W出力をキープするのは難しいもの。かといって出力を極端に下げると解凍に時間がかかり過ぎてしまったり、まったく解けなかったり。

 

「ひき肉は適度に脂身があるので、それが先に溶けることでうまい具合に全体へ熱が回るのですが、脂の少ないマグロの赤身は難しかったです。しかも刺身で食べることを考えるとかなり繊細。うまくいくまでの検証に3か月ほどかかりました」(佐藤さん)

 

検証した食材は開発スタッフがおいしくいただかなくてはならないため、開発中に「マグロに飽きる」という苦難を味わいつつも、試行錯誤の末に最大300W出力とオフを繰り返すという最適解にたどり着いたのです。良かった!

↑一般的な電子レンジの解凍モード(左)と、SX-18D132の「やさしさ解凍」(右)の出力イメージ。前者は500Wとオフを断続的に繰り返すのに対して、シロカでは最大出力を300Wに抑えることで食材へのダメージを軽減しています

 

実際に解凍を試してみたらガチだった

論より証拠ということで、実際に解凍を試してみましょう。比較対象として同価格帯の他社製単機能レンジも用意しました。

↑マグロのサク。冷凍庫から出したてのカチカチな状態です

 

↑他社レンジの解凍モードだとこんな感じ。中央部はまだカチカチなうえ、一部が黒く変色してしまっています

 

↑SX-18D132で解凍したものがこちら。他社製と比べて時間はかかるものの、すぐに包丁で切って食べられる状態になりました。解凍ムラが少なく、ドリップもほとんど出ていません

 

↑続いてひき肉で検証します

 

↑他社製では、しっかり解凍できたものの、ドリップが大量に出てしまいました。これでは風味が損なわれてしまいます

 

↑SX-18D132で解凍したもの。ドリップもなく、美しい仕上がりです。スーパーで売っている状態と見た目はほぼ変わりません

 

思っていた以上に違いがはっきりと見てとれました。SX-18D132は最大出力を抑えているため他社製よりも時間は数分長くかかるものの、何度も温め直したり、途中で様子をうかがったりする必要がないので、ストレスはそれほどありません。

 

冷凍ごはんもウマかった!

最後に、私が電子レンジで最もよく使うといっても過言ではない、冷凍ごはんの温めにもチャレンジしました。自宅の冷凍庫で凍らせ、取材に持参した高菜ごはんを解凍してみます。

↑果たして解凍はうまくいくのか? そして気になるそのお味は――?

 

↑解凍後。しっとりとした仕上がりで、解凍ごはん特有のダマ感もありませんでした

 

↑見た目は良いので実食へ。ウッ……ウマい!(古)

 

肉・魚に良し、冷凍ごはんに良しということで、想像以上に使える電子レンジだと実感できました!

 

モノ・マガジン前田編集長によるレポートはこちらから

 

 

撮影/青木健格(ワールドフォトプレス)