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2023/4/8 11:30

「クラウドモンスター」破竹の理由は、Onの愚直さにあり⁉/大田原 透の「ランニングシューズ戦線異状なし」

ギョーカイ“猛者”が走って、試して、書き尽くす! ランニングシューズ戦線異状なし

2023「On」春の陣④「クラウドモンスター」の巻(前編)

 

2022年3月に発売されるや、破竹の勢いで高セールスを記録したランニングシューズがある。一時は店頭から商品が消え、入手困難になったというOn(オン)の「クラウドモンスター(Cloudmonster)」だ。弾力の高いゴムチューブから着想を得た、On独自のミッドソール機能「クラウドテック」をメガ盛りにした圧倒的な存在感。まさにモンスター級のシューズである。

↑On史上最厚のクラウドテックを搭載する「クラウドモンスター」1万8480円(税込)。メンズ、ウィメンズともに5色展開(写真は2023年SSの新色、メンズIron Hay)。サイズ展開、メンズ25~32㎝、ウィメンズ22~28cm

 

「クラウドモンスターのおかげで、ランニングブランドとしてのOnのブランド認知は格段に上がりました。口コミやSNSで高い評価をいただいた結果、“Onを知ってはいたけれど、履いたことがない”、“タウンユースにしているけれど、走ったことがない”などのお客さまから、クラウドモンスターを指名買いしていただけるようになりました」

 

と語るのは、オン・ジャパンでPRリーダーの前原靖子さん。クラウドモンスター大人気の秘密を探るべく、前回「クラウドサーファー」の実走レビューの撮影でもお邪魔した東京・原宿のフラッグシップストア「On Tokyo」に、前原さんを訪ねた。

↑オン・ジャパンPRリーダー前原靖子さん。アジア初となるフラッグシップストア、東京・原宿の「On Tokyo」にて

 

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誰もが刮目した、漆黒のモンスター

「2022年3月の発売以来、クラウドモンスターのモデル変更は行っていません。その代わり、カラーはシーズンごとに新色を増やして、この春、男女とも2色が加わりました。今年の秋冬も、具体的にはお話しできませんが、新色を追加する予定です」(前原さん)

 

新色の登場と言えば、2022年夏の黒のモンスターの登場を抜きには語れまい。漆黒のモンスターが、On大躍進のひとつの原動力となったと言っても過言ではないからだ。ランニングブランドとしてのOnの認知度を大幅に上げたことはもちろん、タウンユースの需要まで急増させたことは、街を歩いて人々の足元を見れば、すぐに実感できるはず。

↑2022年夏に発売され、怒涛の売れ行きを記録した漆黒のクラウドモンスター(現在も発売中)。ちなみに、2023年メンズの新色はIron Hay(TOP画像) とUndyed-White Creek(筆者のインプレにて装用)。ウィメンズはUndyed-White CreekとNimbus Hayだ

 

「発売当初、クラウドモンスターは42.195kmのフルマラソンなどに対応する位置づけではありませんでした。Onのミッドソールのテクノロジーであるクラウドテックを最も厚く配したモデルとして、“雲の上の走り”をマックスで体感しながら、長く走れるシューズであると謳っていました」(前原さん)

 

もちろん、クラウドモンスターは、快適なだけの厚底シューズではない。爪先から踵にかけてのロッカー構造(揺りかごのようなカーブ)は、走行時に着地から蹴り出しへと、転がるようなライドをもたらしている。さらに、靴底には着地衝撃を推進力に換える“板バネ”となるPP樹脂(ポリプロピレン)の「スピードボード」も搭載。高機能のランニングシューズとして備えるべき構造に、先述した着地衝撃をクッションする極厚のミッドソール「クラウドテック」を載せている。

↑クラウドモンスターは、クッション性の要となる「クラウドテック」(穴の開いたオフホワイトのミッドソール部材)をマックスで搭載したモデルだ

 

“あくまでランニングシューズであって、スニーカーではない”

「ロッカー形状とスピードボードのバランスが良く、“スピードを出しやすい”という評価がSNSにたくさん上がりました。そうした皆さまの声が集まって、トレーニングだけではなく、42.195㎞のマラソン大会でも結果が出せる、レースでも使えるシューズという定評が得られました」(前原さん)

 

発売後数か月で、Onのエースとなったクラウドモンスター。ランナーからの支持も高まったが、街でもよく見かけるようになった。いわゆるスニーカーショップの棚にも置かれるが、パフォーマンスの高さを、タウンユースのコンシューマはどこまで理解しているだろう?

↑爪先から踵にかけてのロッカー構造(揺りかごのようなカーブ)によって、走行時には転がるようなライド感が得られる

 

「発売当初から、クラウドモンスターはランニングシューズであって、いわゆるスニーカーではないというメッセージを発信し続けています。ルックス的にスニーカーとして街で履いてくれるお客さまもいますし、街のスニーカーショップでも売られていますが、前提は“パフォーマンスを出せるシューズ”です。快適に走れるクラウドモンスターの機能があるからこそ、街でも選んでいただけていると考えています」(前原さん)

 

日本では、ランニングシーンと街履きのシーンを分ける傾向があるが、Onが生まれたスイスをはじめとする欧米では、ランニングシューズは当たり前にタウンユースとして履かれている。フルマラソンを完走できるほどの機能性がありながら、カジュアルであるなら、ランでもオフでも、あらゆる生活シーンで汎用化されるのは当然だろう。

↑アウトソールの摩耗しやすい部位には、ラバーパッドが貼られている。ラバーパッドには微細な横方向のスリットがあり、地面をグリップし、滑りにくい仕様になっている

 

ファッショナブルであり、かつ高機能というOnの独自性

「Onは、ランニングシューズ開発から始まったブランドです。しかし、ランナーを含めた多くの方たちが、タウンユースでもOnのシューズを履くようになりました。そうした気づきを経て、タウンユース企画のシューズも開発されるようになりました」(前原さん)

 

今でこそタウンユースのラインも持つOnだが、(機能を伴わずとも)ルックスで勝負するスニーカー市場にあっても、Onは変わらず、高機能のランニングシューズを愚直なまでに投入し続けている。こうした堅実なスタンスが幸いし、ファッショナブルであり、高機能でもあるという、誰もが認める独自なブランドに進化したと言えよう。

↑「On Tokyo」の前で前原さんと髭ボブの筆者(右)

 

さらに書き加えたいのは、OnFriendsである。“On好き!”の全国に広がるOnFriendsというコミュニティの存在だ。詳細は、本連載のOn共同代表・駒田博紀さんのインタビュー回で記したが、10年掛けて駒田さんとOnFriendsが築いた自前のコミュニティは、リアルとバーチャルでOnの世界観を共有し、自律した無数の縦横無尽のコミュニティによって、“走る楽しさ”を交歓しあっている。

 

次回はクラウドモンスターの実走インプレをお届けする!

 

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撮影/我妻慶一

 

 

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