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2023/4/2 11:30

Onの最新テクノロジー搭載「クラウドサーファー」レヴュー!/大田原 透の「ランニングシューズ戦線異状なし」

ギョーカイ“猛者”大田原 透が、走って、試して、書き尽くす! ランニングシューズ戦線異状なし

2023「On」春の陣③ On「クラウドサーファー」の巻(後編)

 

2023年、Onが最も注力するシューズが、3月23日に正式に発売を開始した「クラウドサーファー(Cloudsurfer)」だ。“雲の上の走り”というOnの特徴を継承しつつ、クラウドサーファーには全く新しいテクノロジーが搭載された。興味が尽きない一足である。

↑3月23日に正式に発売された「クラウドサーファー」(東京マラソンEXPO2023にて、限定先行発売)1万8480 円(税込)。Creek White、All Black、White Frost の3カラー展開。サイズ展開は、メンズ25~32cm、ウィメンズ22~28cm

 

本連載の前編では、オン・ジャパンの前原靖子さんに、最新のミッドソールテクノロジーの「クラウドテック フェーズ」の話を中心に、クラウドサーファーのターゲットや環境対応など質問攻めにした。

 

後編では、ペンをシューズに換えて、クラウドサーファーを実際に、履いて、走って、レビューする。クラウドサーファーのインプレも、次の4つのシーンを想定して行う。まずは、シューズに足を入れた感覚およびウォーキングのインプレ。そして、「運動不足解消」が目的で走る、1㎞を約7分(=キロ7分)の、の~んびりペース。

 

続いて、脂肪を燃焼させる「痩せラン」に適した、1kmを約6分(=キロ6分)のゆっくりペース。最後は、距離ではなく、走る爽快感重視の、1㎞約4分30秒~5分で走る(キロ4.5~5分)「スカッとラン」だ。いずれも、“たまには、走ってみようかな~♪”と思った際に目安になるペースである。

 

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いよいよ、クラウドサーファーを試走!

【まず、履いてみた!(走る前の足入れ感&ウォーキング)】

“雲の上の走り”を標榜するOnだけに、足入れ感への期待は大。しかも、従来のクラウドテックを進化させたクラウドテック フェーズである。見た目の厚みからは、ピンと来ない軽さ。アッパーのタン(甲に当たる部分)もふかふかで、足入れ感は◎だ。

 

すっくと立ちあがると、ミッドソールの穴が潰れて、カラダが沈むのか分かる。(乗ったことはないが)なるほど雲。歩き出すと、一歩一歩沈む。これで走って大丈夫なのか……、と思うほどの優しさ。なぜなら、着地時に大きく沈み込むと、エネルギーロスとなり、推進力が得られないからだ。

 

試しに3㎞ほど歩いてみるが、鼻歌混じりのゴキゲンな人のような不思議な歩み。エネルギーロスは感じないが、スタスタ速くではなく、気分よくテンポを落としたくなる感覚だ。安っぽい作りの軟らかすぎるソールのシューズだと、最初は快適でも、後から、踵骨の下部(足底筋膜と接する、踵着地のポイント)が痛くなったりする。もちろん、クラウドサーファーにその心配は無用そうだ。なるほど、面白い!

 

【運動不足解消ジョグ(1㎞を7分で走るペース)】

歩きの次は、走り。最初は、運動不足の解消が目的なので、ゆっくり。その理由は、速く走ったら、ケガのリスクも高まるし、疲れちゃうから。信号待ちのレストタイムも含め、少なくとも15~20分は走りたい。“もっと走れるけどね”で切り上げれば、三日坊主とも卒業できるはずだ。

 

で、クラウドサーファー。歩いただけで、ミッドソールの穴が潰れるので、走ったらどーなる? ところだが、ピョコピョコ走りにはならない。不思議、きれいな反発力を生んでいる。爪先から踵にかけてのロッカー構造(揺りかごのようなカーブ)で、自然とカラダが前に進んでいる。

 

この撮影とは異なる日(まさにOnが日本上陸10周年を記念し、全国各地を走るイベントに参加して)、運動不足解消ジョグのペースで7㎞ほど走ったが、全くもって快適。ちなみにこのイベント、東京から福岡までの約1700㎞間、OnFriendsというコミュニティを走って結ぶという(正式名称は、Meet OnFriends Tour2003)。

 

【痩せラン(1㎞を6分で走るペース)】

定期的に走れば、脂肪は燃える。カラダの神様は、お腹周りも、お腹の中も、顎の下も、えこ贔屓せずに減らしてくれる。食事の“量”も、そして“質”も変えたくなければ、走れば良い。痩せランで減らせるエネルギーの目安は、自分の体重(㎏)×距離(㎞)。70㎏の人が10㎞走れば、約700キロカロリーを消費できる。軽めのランチ1食分がチャラという計算だ。昼抜きが辛いか、10㎞ランが辛いか、半分抜いて半分走るかは自由自在。痩せるためには、多少の犠牲は必要だ。食べてしまった過去は、変えられない。

 

で、クラウドサーファーである。“走る楽しさ”をMAX体感できるのは、やはり痩せランペースだろう。歩きと、走りで、着地感が変わる面白さ。カラダは少々重いが、シューズはとても軽い。気持ちは後ろ向きでも、ロッカー構造でカラダは前へ進む。クラウドサーファーなら、気が付けば2、3㎞はあっという間に過ぎているはずだ。

 

ランニングシューズは、玄関の靴箱には収納せず、常時、出陣の機会を与えよう。ステップの刻みと呼吸のリズムが調和して、どこまでも走れる気分になったら、体重計も楽しみになる。いつでも、玄関にあるクラウドサーファーが一緒に走ってくれる。

 

【スカッと走(1㎞を4.5~5分で走るペース)】

快調に走れるようになると、のろのろと前を走るランナーを抜かしたくなる時がある。ちょっとした坂を、無言で叫びながら駆け上がりたくなる時がある。走る楽しみは、何かと競う楽しみでもある。子どもの頃の、ただただ無心に駆け回っていた自分を取り戻そう。

 

残念ながらクラウドサーファーは、何かと競うには、優しすぎるシューズだ。ペースを上げるほどに、衝撃吸収性に富んだミッドソールのクッションが効いてくる。板バネであるスピードボードがないから、当たり前と言えば当たり前だ。

 

この撮影から1週間後のハーフマラソンは、残念ながらクラウドサーファーとは別のシューズで行うことに決めた。新たな起用は、“日常履きからレースまで万能”と噂の人気選手On「クラウドモンスター」である。次回は、クラウドモンスターの実走インプレをお届けしよう!

 

撮影/中田 悟

 

 

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