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2023/6/28 6:30

「ベビー・トーク」は赤ちゃんの言葉の発達に役立つ? 役立たない? 豪の最新研究で分かったこと

育児中のパパ・ママの関心事の一つは、赤ちゃんがいつから話し始めるか? できるだけたくさん話しかけて、子どもが少しでも賢くなればと思っている人も少なくないかもしれません。

↑普通に話すだけではつまらない

 

幼児の世話をする人が、幼児に対して用いる言葉を「ベビー・トーク(baby talk)」もしくは「ケアテイカー・スピーチ」と言います。ベビー・トークのわかりやすい特徴として以下の3つが挙げられます(『英語教育用語辞典』〔大修館書店〕を参考)。

 

  • 短い文が多い
  • 明瞭な発音が用いられる
  • 誇張したイントネーションを伴うことが多い

 

実はこんなベビー・トークに関して研究者の間ではさまざまな意見があり、ベビー・トークは幼児の言語理解や習得を促進するという意見もあれば、逆にあまり役に立たないという人もいます。しかし、先行研究の多くは欧州の言語や中国の広東語、日本語を対象にしていたので、まだまだ研究の余地があります。

 

そこで、オーストラリアの研究チームが、同国の中央部で3000人以上に話されているワルピリ語のベビー・トークを調べ、最近その結果を発表しました。やはりベビー・トークは幼児の言語習得の役に立つと言うのです。

 

本稿で研究の内容に立ち入る余裕はありませんが、同研究チームによれば、ワルピリ語でもイントネーション(特に音の高さ)が変化することが初めて明らかになったそう。ワルピリ語のベビー・トークは英語のそれと似ているようですが、違う点もいくつかあったようです。

 

例えば、ワルピリ語のベビー・トークは音が高くなるうえ、母音の音がまるで幼児が発したかのような音に変わるとのこと。これによって幼児の注意が発話に向かいやすくなると考えられるそうです。また、ワルピリ語の話者は母音の音を変えることで、物に名前があることを幼児に教えていることも判明しました。このようにして、幼児は世界を認識していくのですね。

 

ワルピリ語の話者がこのようなベビー・トークをすることができるのは、母音の数が3つだからだと同研究チームは考えています(日本語は5つ)。つまり、母音の数によって、幼児の世話をする人たちが取るコミュニケーション戦略が変わるのです。

 

このような理由で、同研究チームはベビー・トークは役に立たないものではなく、幼児の言語習得を助ける大切なものであると述べています。今回の結果を踏まえれば、ベビー・トークは決して疎かにできませんね。

 

【出典】
Rikke Louise Bundgaard-Nielsen, et al. A new study of Warlpiri language shows how ‘baby talk’ helps little kids learn to speak. The Conversation. June 23 2023