装画家・イラストレーターとしても活躍する西村ツチカによる漫画『北極百貨店のコンシェルジュさん』。人間と動物が織りなす奇想天外な世界観が魅力の本作を、「ハイキュー!!」シリーズや「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」など、数々の名作を世に送り出してきたProduction I.Gが映像化した映画「北極百貨店のコンシェルジュさん」が公開中。今作で劇場アニメーション映画初主演を務める川井田夏海さんと、数多くの人気アニメに出演する実力派若手声優・大塚剛央さんの二人に、本作の魅力や、今ハマっていることを語ってもらった。
【川井田夏海さん&大塚剛史さん撮り下ろし写真】
原作の漫画は読めば読むほど自分の中で世界が広がっていった
──『北極百貨店のコンシェルジュさん』は、来店されるお客様が全て動物という不思議な百貨店を舞台に、川井田夏海さん演じる新人コンシェルジュの秋乃が、フロアマネージャーや先輩コンシェルジュに見守られながら成長していくストーリーです。原作と脚本をそれぞれ読んだときの感想をお聞かせください。
川井田 オーディションにあたって原作を読ませていただいたんですけど、独特な絵のタッチを、どういうふうに映像化するんだろう、どういう構成になるんだろうというワクワク感がありました。脚本は、春夏秋冬を通して、秋乃の目線で成長していく姿がしっかりと描かれていて、上手に1本にまとまっているなと思いました。
大塚 最初に原作を読んだとき、パッと読んだだけでは理解できないことが多かったんです。特に僕が演じさせていただいたエルルは謎のペンギン、いつも百貨店内を歩いているキャラクターで、この発言はどういうことなんだろうとか考えて。人間に対する皮肉だったり、人間と絶滅種の動物とのやり取りの温かさだったり、読めば読むほど自分の中で世界が広がっていくという印象でした。台本は秋乃を中心に描かれていて、すごく人情味が強いというか、温かい雰囲気が感じられました。だからエルルを演じる上でも、前向きな姿勢で臨んだほうがいいのかもしれないと思いました。
──アフレコのときは、どのぐらい絵は出来上がっていたんですか?
川井田 色はついていなかったですが、かなり完成形に近くて、キャラクターがヌルヌル動いていたので、分かりやすかったです。たとえば秋乃が走るシーンで、お客様がいるときは正しい姿勢なんですけど、そうじゃないと雑になるところなどは、息遣いの演技するときに参考になりました。森さん(※秋乃の先輩コンシェルジュ)のスンとした感じも、アフレコの時点で十分伝わってきました。
──役作りでどんなことを意識しましたか。
川井田 秋乃が持っている素直さやひたむきさ、一生懸命さを豊かに演じようと思いました。あと、くじけないところですね。たとえばトキワさん(※秋乃を厳しくチェックする外商員)に「向いてない」とバシッと言われたときに、森さんに頼ることなく、泣きながらも「何くそ!」ってへこたれなかったり、お客様に土下座させられても、「私が見送ります!」と食い下がったり。ちょっと頑固なところもあるけど、そういうところも魅力だなと思うので、そこも含めて豊かに演じられるように意識しました。
──川井田さん自身、秋乃に共通するところはありますか。
川井田 私はド末っ子なので、すぐに私生活では「うえーん」って泣きつきます(笑)。ただお仕事のときは、うまくいかないときでも「何くそ!」ってなるので、そこは秋乃に似ているのかもしれません。
──大塚さんはエルルを演じる上で、どんなことを意識しましたか。
大塚 まだ若手の僕をエルル役に選んでいただいたので、若さがあったほうがいいのかなと思っていたんですけど、いざ現場でやってみたら、「もっと落ち着きがあって、しっかりとした説得力が欲しいです」と言っていただいたので、エルルの深みを意識して演じました。エルルは哲学的なことを言うので、百貨店に対してどう思っているのか、秋乃に対してどう思っているのかなどは、原作と脚本を照らし合わせながら考えて作り上げていきました。
──アフレコは何人ぐらいで行われたんですか。
川井田 大体3、4人ぐらいでした。
大塚 まだ制限があったので、掛け合いのある人たちで一緒に録るという感じでした。
川井田 私は一日スタジオにいて、シーンごとにキャストの方々をお迎えして、掛け合いで一緒に録らせていただいて、収録が終わって帰られて、次のキャストの方々をお迎えしてと、本当にコンシェルジュさんになった気分でした(笑)。
人生は季節のように巡っていくんだと前向きになれる作品
──お二人はこれまで共演経験は?
大塚 初めてですね。
──共演した印象はいかがでしたか。
川井田 ザ・落ち着き。
大塚 (笑)。
川井田 個人的に、この作品で一番難しい役はエルルじゃないかなと思っているんですが、大塚さんはかっこよく演じていらっしゃって、落ち着いていて、とても頼りになるし、たくさん助けていただきました。あまり会話をする時間もなかったんですけど、多くは語らずとも、どしっといてくださってすごく心強かったです。
──大塚さん自身がエルルのような存在なんですね。
川井田 そうなんです!
大塚 そんなことはないです(笑)。川井田さんもお話した通り、この作品は、会ってすぐに「始めましょう」みたいな感じだったので、なかなかお話する機会はなかったんですけど、真っすぐぶつかって演じている姿は秋乃と重なって素敵だなと思いました。その後、別の現場でご一緒したときに改めてお話しをしたんですが、いつも元気に接してくださるので、自然と現場が明るくなるんです。
──完成した作品を観た感想はいかがでしたか。
川井田 すごい映像作品が出来上がったなと思いました。一体、何枚絵を描いたんだろうと不思議になるぐらい動きが素晴らしくて、そこに色がついて、音楽がついて、周りのざわめきや呼吸が加わって。クリスマスのシーンではオーケストラもあって。良いときもあれば、悪いときもあるけど、いつだって世界は彩り豊かだというのが伝わって来て、まるで人生みたいな作品だなと。つらいことがあっても、ずっと続くわけじゃない。人生は季節のように巡っていくんだと、観たら前向きな気持ちになれます。
大塚 多種多様な動物がいて、その中には絶滅種である“V.I.A”(ベリー・インポータント・アニマル)もいて、その説明も丁寧に描かれていて、原作を知らない方でも楽しめる作品だなと感じました。音も繊細で、たとえば足音一つとっても、それぞれ動物によって違いがあって、いろんな楽しみ方ができるなと。僕は試写を二度観させていただいたんですが、二回目のときは、「ここに注目しよう」みたいな見方もできて、何度も観たくなる作品です。
──お二人は、どういうときに百貨店を利用しますか?
川井田 食べ物を探しに行くときですね。季節のお菓子が好きなので探しに行って、目当てのものがなかったら別のお菓子を買ったり。まあ、大体あんみつなんですけど(笑)。自分では作れないお菓子がたくさん売っているので、自分へのご褒美として買っています。
大塚 僕も食べ物ですね。今日はいつものスーパーじゃなくて、美味しいものを買って帰ろうかなみたいなときにデパ地下に寄ります。寄った結果、あれも欲しい、これも欲しいって、いっぱい買っちゃうみたいな(笑)。
二人がハマっている家電とゲームとは?
──最近、購入して重宝している家電を教えてください。
川井田 とても生活が変わったなと思ったのが、今年買った最新のiPad Airです。オーディションや仕事の原稿などが家にどんどん溜まっていくので、見返したいとなったときなどに「あの原稿どこだったっけ?」って探すのが大変だったんです。「だったらiPadに入れてしまおう」ということで、iPadを買ってからは荷物が軽くなりました。
──基本はお仕事で使うことが多いんですか。
川井田 そうですね。それこそ原作の本を読んだり、映像のチェックをしたりも全部iPadでできて便利なんです。ちょっとした時間に映画を観るときも、スマホよりも画面が大きくて臨場感があるので、生活の水準が上がりました(笑)。
大塚 僕はソニーのサウンドバーです。家で過ごすのが大好きなので、ゲームをしたり、映画を観たりするときに、どうせなら良い音質で楽しみたいなと思って買いました。ただ買って結構経っているんですが、いまだに設定に苦労するんですよね。一応、「シネマ」とか「ミュージック」とかボタンが付いているんですけど、自分の感覚で聴きたい音声はどれがベストなのかを探すのが難しいです。
──大塚さんはゲーム好きで知られていますが、最近は何にハマっていますか?
大塚 最近は『TROPICO』というシミュレーションゲームにハマっています。自分が大統領になって、政治や経済を動かして街づくりをするんですけど、YouTubeで動画を観て、面白そうと思って始めました。
──川井田さんはハマっているゲームはありますか?
川井田 最近、Nintendo Switchの『ピクミン4』を買ったんですけど、よくやっているのは『ドラゴンクエスト』です。もう何度もクリアしているんですけど、またリセットして一から始めるぐらいドラクエが大好きなんです。映画にしても同じ作品を何度も観て、同じところで泣けるタイプなんですよね(笑)。それはゲームも同じです。
──お二人ともインドア派ですか?
大塚 そうですね。基本的に休みは家で過ごすことが多いです。連休があったら、旅行に行きたいですけどね。国内でも行ったことのない場所がたくさんありますし、京都も修学旅行以来行ってないですし。最近は地方に行くのはお仕事になるので、プライベートで行きたいです。
川井田 私もずっと家にいますね。大袈裟じゃなく、一日中同じ場所に座って動かない、みたいな(笑)。それでソファに座ってゲームをやったり、映画を観たり。外出するとすれば、大好きな観劇をするときぐらいで、連休のときは実家に帰ることが多いです。しかも、いつも地元で同じものを食べるんですよ。鴨うどんを食べて、ラーメンを食べて、おいしいクレープ屋さんでクレープを食べて、スーパーのお団子を食べて。それを全て食べたら東京に戻ります(笑)。
北極百貨店のコンシェルジュさん
絶賛上映中!
【映画「北極百貨店のコンシェルジュさん」よりシーン写真】
(CAST)
秋乃:川井田夏海
エルル:大塚剛央
東堂:飛田展男
森:潘めぐみ
岩瀬:藤原夏海
丸木:吉富英治
給仕長:福山 潤
トキワ:中村悠一
ワライフクロウ夫:立川談春
ワライフクロウ妻:島本須美
ウミベミンク娘:寿美菜子
ウミベミンク父:家中 宏
クジャク:七海ひろき
クジャク彼女:花乃まりあ
二ホンオオカミ:入野自由
二ホンオオカミ彼女:花澤香菜
カリブモンクアザラシ:氷上恭子
ゴクラクインコ:清水理沙
バーバリライオン:村瀬 歩
バーバリライオン彼女:陶山恵実里
ネコ:諸星すみれ
ウーリー:津田健次郎
(STAFF)
原作:西村ツチカ『北極百貨店のコンシェルジュさん』(小学館「ビッグコミックススペシャル」刊)
監督:板津匡覧
脚本:大島里美
キャラクターデザイン・作画監督:森田千誉
コンセプトカラーデザイン:広瀬いづみ
美術監督:立田一郎[スタジオ風雅]
動画検査:野上麻衣子
撮影監督:田中宏侍
編集:植松淳一
音響監督:菊田浩巳
音楽:tofubeats
アニメーション制作:Production I.G
製作:アニプレックス、Production I.G、KDDI、ADKマーケティング・ソリューションズ、トーハン
配給:アニプレックス
主題歌:「Gift」Myuk(Sony Music Labels Inc.)
(STORY)
新人コンシェルジュとして秋乃が働き始めた「北極百貨店」は、来店されるお客様が全て動物という不思議な百貨店。一人前のコンシェルジュとなるべく、フロアマネージャーや先輩コンシェルジュに見守られながら日々奮闘する秋乃の前には、あらゆるお悩みを抱えたお客様が現れます。中でも<絶滅種>である“V.I.A”(ベリー・インポータント・アニマル)のお客様は一癖も二癖もある個性派ぞろい。長年連れ添う妻を喜ばせたいワライフクロウ。父親に贈るプレゼントを探すウミベミンク。恋人へのプロポーズに思い悩むニホンオオカミ……。自分のため、誰かのため、様々な理由で「北極百貨店」を訪れるお客様の想いに寄り添うために、秋乃は今日も元気に店内を駆け回ります。
公式サイト:https://hokkyoku-dept.com/
公式X:https://twitter.com/HOKKYOKU_Dept
公式Instagram:https://www.instagram.com/hokkyoku.dept/
(C)2023西村ツチカ/小学館/「北極百貨店のコンシェルジュさん」製作委員会
撮影/友野 雄 取材・文/猪口貴裕