麦の酒といえば、価格が手頃になったビールもいまアツい! 背景には2023年10月1日に改正となった酒税法が関係している。では、何がどのようになったのか。概要解説とともに、主役的な銘柄を紹介しよう。
※この記事は「GetNavi」 2023年12月号に掲載された記事を再編集したものです。
海外の成長分野に着目した度数3.5%の冷涼ドライ
アサヒビール
アサヒ スーパードライ ドライクリスタル
実売価格225円
海外市場で成長中のアルコール度数0〜3.5%の飲料に着目し、主力商品「アサヒスーパードライ」の3.5%版を新開発。一部に使用した冷涼感に優れたドイツ産ホップ「ポラリス」が、クリアな味わいを生み出している。
糖質とプリン体を70%オフした日本初のWオフビール
サッポロビール
サッポロ生ビール ナナマル
実売価格225円
酒税法改正に加え、コロナ禍を経た健康意識の高まりにも着目して開発。ビールらしい味わいはそのままに、糖質(※1)とプリン体(※2)の70%オフを実現している。糖質とプリン体の2つをオフにした日本初(※3)のビールだ。
※1:日本食品標準成分表2020年版(八訂)による ※2:通年販売している同社缶ビールブランド平均値比(2023年4月時点) ※3:糖質・プリン体2つのオフを訴求する日本初のビール(Mintel GNPDを用いた同社調べ)
果実のような香りと豊かに広がる余韻
サントリー
ザ・プレミアム・モルツ〈ジャパニーズエール〉ゴールデンエール
実売価格264円
日本人の嗜好に合う、フルーティな味わいと爽やかな香りが特徴の「ジャパニーズエール」シリーズの新作。「磨きダイヤモンド麦芽」を一部に使うことで、数種類のアロマホップによる果実のようなやわらかな香りが鮮やかに。
2つの日本産ホップが香る柑橘感の爽やかなクラフト
キリンビール
スプリングバレーJAPAN ALE<香>
実売価格266円
キリンが注力するクラフトビールブランドの新商品。自社で品種開発した2つの日本産ホップ「MURAKAMI SEVEN」と「IBUKI」を一部に使用し、柑橘を思わせる爽やかな香りが広がるおいしさに仕上げている。
初採用のオレンジピールが斬新な酸味と斬新柑橘感を演出
サッポロビール
ヱビス オランジェ
実売価格284円
2023年2月に誕生したヱビスブランドの新ライン「CREATIVE BREW」の新商品。醸造家が徹底的に吟味したオレンジピールに、柑橘のような香りのホップを一部掛け合わせ、オレンジが香る濃厚な味わいに仕上げている。
厳選されたホップを採用! その香りはまるで白ワイン
サントリー
ザ・プレミアム・モルツ
ホップセレクト華やぐハラタウブランホップ
実売価格264円
ホップに着目したザ・プレミアム・モルツの限定品「ホップセレクト」シリーズの第2弾。白ワインのような上品な香りが特徴のハラタウブランホップが、華やかな香りと豊かなコクを生み出している。11月14日発売。
小麦麦芽のソフトな甘味と軽やかな後口が心地良い
キリンビール
キリン一番搾りやわらか仕立て(期間限定)
実売価格225円
一番搾り製法はそのままに、一部に小麦麦芽を使用。やわらかな甘味と旨味が感じられ、後口は軽やかで爽やかなのが特徴。バランスに優れた、飲みやすい味わいだ。
【PICK UP!】 見逃し厳禁! 毎年恒例の季節限定ビール
■11月7日発売
キリンビール
一番搾り とれたてホップ生ビール(期間限定)
実売価格225円
ホップの名産地・岩手県遠野で、今年収穫した生ホップを急速凍結して使用した旬な一本。ビール通が毎年注目する人気商品で、今年で発売20年目。
■11月21日発売
サッポロビール
琥珀ヱビスプレミアムアンバー
実売価格265円
通常は飲食店でしか飲めない味を家庭用商品にした特別なヱビス。今作は、麦芽比率を微調整し、より宝石のような琥珀色に仕上げている。
価格差という呪縛から解かれてビールに明るい未来が到来する
このムーブメントを大げさにいえば、ビール類における王政復古である。なぜなら、ビール類の中で高価であるがために買い控えられていたビールと、安価でフレンドリーだった発泡酒や新ジャンル(第3のビール)との価格差が狭まってビールが値ごろになるからだ。このビールの低価格化に合わせ、メーカー各社も続々と新商品を投入している。
もともと、ビール類のヒエラルキー誕生は約30年前にさかのぼる。1994年にサントリーが発売した「ホップス〈生〉」は、麦芽使用率の割合によって酒税が変わるという法上区分に注目した発泡酒で、安価にビールテイストを楽しめる革命的飲料だった。そこから次々とビール類の発泡酒がデビュー。ただ、2003年に行われた酒税法改正により、発泡酒の税率が引き上げに。そこで新たに生み出された安価なカテゴリーが、新ジャンルだ。第1号商品は同年発売の「サッポロ ドラフトワン」。同商品は麦芽の代わりにえんどう豆由来の素材を使った独自の味わいで、一世を風靡。その後、開発競争が激化し、麦由来のスピリッツで味を整えたリキュールタイプの新ジャンルも登場し、いまに至る。
こうした3大区分で価格差があったビール類だが、社会や消費の変化で税収も変わる。そこで新たに酒税法が改正されることとなり、2017年に、2026年の税率一本化をゴールに、段階的な増減税の施行が公布された。ちなみに今回の酒税法改正は段階的措置の2回目となり、初回は2020年10月に行われている。
今回の改正で酒税がどう変化したかは左の表のとおりだが、いくつか例を挙げてみよう。350mlのビールであれば1本あたり7円程度安価に。同量の新ジャンルであれば1本10円前後高価になったので、モノによっては約15円ぶんも価格差が狭まったことになる。なお、今回発泡酒の税率は据え置きだが、2026年には酒税が一本化され実質価格差はなくなる。そのときがビール王政の完全復古といえるだろう。今後も新銘柄が続々デビューすることは必至。引き続きビールには注目だ!