「iPhoneでRAW撮影」が可能になった昨秋のiOS 10以降、筆者はさまざまなカメラアプリを試している。その数は30種以上。有償のものも少なくないが、新しいカメラを買うことに比べればずっと安価なので、近ごろはすっかりカメラアプリコレクターと化している。そんな私のいまのお気に入りが「Halide」である。
Halideは、元Appleのデザイナーと元Twitterのエンジニアらが開発したことで話題のカメラアプリ。RAWでの撮影はもちろん、ISO感度やシャッター速度、ホワイトバランスの調整など、設定にこだわった撮影ができることが特徴だ。料金はセール中の現在は360円。iOS版のみでAndroid版はない。
写真撮影にじっくりと向かい合える“ツウ好み”のアプリ
RAWやマニュアル撮影に対応した本格カメラアプリといえば、これまでに「Lightroom mobile」や「ProCam 4」「ProCamera.」といった製品が人気を集めている。実はHalideは、これらの既存アプリに比べると機能はかなり乏しい。
凝ったエフェクト機能は特になく、動画や連写、セルフタイマーにさえ非対応だ。HDRもないし、タイムラプスもない、パノラマもない。そんな機能は純正カメラアプリにまかせる、という割り切ったスタンスである。
将来的に高機能化する可能性はあるが、現時点では、一切の無駄を省くことで実現したシンプルな操作インターフェイスこそ見どころだ。そのうえで、純正カメラアプリではできないRAW撮影やマニュアル撮影に対応。写真撮影にじっくりと向かい合うことができる、いわばツウ好みのアプリである。しかもRAW撮影では静音化できるというオマケまでついている。
無駄を省いたシンプルな操作インターフェイス
それでは、Halideの基本操作を見ていこう。下は起動すると表示されるカメラ画面だ。初期状態では「スマートオート」モードとなり、画面下のシャッターボタンをタップして手軽なフルオート撮影ができる。画面上をタップして合焦位置を切り替えたり、画面を上下にスワイプして露出補正を加えたりもできる。AFボタンをタップした場合はピント位置が固定され、必要に応じてピーキング表示も行える。
記録フォーマットをJPEGからRAW(DNG形式)に切り替える場合は、画面の上端をスライドして「クイックバー」を表示させる。クイックバーでは、JPEG/RAWの切り替え(RAW撮影はiPhoneSE以降のみ対応)のほか、ヒストグラム表示、グリッド/水準器の表示、GPS情報の付加、フラッシュモード、イン/アウトカメラの選択などが行える。
マニュアルでこだわり撮影も可能
さらに凝った撮影がしたい場合は、上段中央の「A」をタップして「M」すなわちマニュアルモードに切り替える。マニュアルモードでは、上下のスワイプによるシャッター速度の調整や、ISO感度の選択、ホワイトバランスの切り替えなどが行える。
ユニークなのは、iPhone本体のボリューム設定に応じてシャッター音を静音化できること。通常は「カシャーン」という純正カメラアプリと同じ音が響くが、音量を消音にすると「チッ」というごく短くて小さい音しか鳴らなくなる。大きなシャッター音がマナー違反になる場所で役立つだろう。ただし間隔をあけずに2枚目のシャッターを切ったときや、記録ファーマットをJPEGにしたときは、大きな音が鳴るので注意したい(バージョン 1.0.2の場合)。
再生については、上下のスワイプでコマ送りができ、左右のスワイプでお気に入り登録やゴミ箱への移動が素早く行える。画像編集やRAW現像の機能は特にない。
トータルとしては、RAW対応カメラアプリとして後発ながら、写真愛好家のツボを押さえた製品に仕上がっている。ボリュームボタンによるレリーズができないなど不満や課題はいくつかあるが、そのあたりは今後の改善に期待したい。省ける部分は潔く省き、こだわる部分は徹底してこだわる、そんなカメラアプリに成長してほしい。