静止しているものを撮るのは比較的簡単だが、動いている被写体をしっかりと止めて写すのはちょっと難しい。ブレを防いでシャープに写すためには、高速シャッターと動きに追従できるAFが必要だ。さらに、連写すればいい瞬間を逃さずに撮れる。ここでは、動きモノ撮影に必要不可欠な高速シャッター、追従AF、連写について勉強していこう。
動く被写体を写し止めるには“高速シャッター”を使おう
動く被写体をしっかり止めてシャープに写すには、高速シャッター(シャッター速度が速い状態)で撮る必要がある。というのは、シャッターが開いている間に被写体が動くと、その動きがブレになってしまい、そのぶんシャープさを欠いた写真になりやすいのだ。
逆に考えれば、シャッター速度を速くしてブレを少なく抑えれば、動きの速い被写体でもシャープに写せることになる。そんなわけで、「高速シャッターで撮れ」というのが動体撮影の基本となっているのである。
シャッター速度を速くするには “絞りを開ける” か “ISO感度を上げる”
明るさが一定の場合、シャッター速度を速くするには、絞りを開けるか、ISO感度を上げる必要がある。絞りを開けるとレンズを通る光の量が増えるので、そのぶんシャッターが開く時間を短く(シャッター速度を速く)できる。
一方、ISO感度を上げると少ない光でも適正露出が得られるので、そのぶんシャッター速度を速くできる。このあたりは、露出の理屈がある程度わかっていれば、簡単に理解できるだろう。
動く被写体を写し止めるシャッター速度の目安
実際のところは撮影するレンズの画角(焦点距離)や撮影距離、被写体の動く速さ、激しさなどによって変わってくるので一概にはいえないものの、おおざっぱな感覚としては1/1000秒あたりが写し止めるためのひとつの目安となる。走る子どもやあまり速くない電車などなら1/1000秒程度でだいたい止まってくれる。一方で、飛び散る水しぶきをアップめで撮る際は1/8000秒でもぎりぎりになるだろう。
基本的に、動くものをシャープに捉えるにはできるだけブレを少なくする必要がある。ブレは、たとえばレンズの画角が狭いほど(焦点距離が長いほど)大きくなるし、引いて撮るよりはアップで狙ったほうが目立ちやすい。これらのことも考えてシャッター速度を選ぶ必要があるわけだ。
動体撮影では「コンティニュアスAF(AF-C)」を使うのが基本
ピントを合わせたあとで被写体が前後に動くと、当然だがピンボケになってしまう。なので、動く被写体を撮るときは常にAFを作動させて、ピントを合わせ続ける必要がある。そういうときに使うAFモードが、「コンティニュアスAF(AF-C)」だ。
メーカーによっては「C-AF」だったり、「AIサーボAF」だったりとその名称は異なるが、動作は同じである。なお、シャッターボタンを押してから実際にシャッターが切れるまでのタイムラグの間に、被写体が移動するぶんをすり合わせる動体予測機能も備えているのが普通である。
ちなみに、静止した被写体を撮るのに向く「シングルAF(AF-S)」と「AF-C」を自動で切り替えてくれる「自動切り替えAF(AF-A)」が用意されている機種もあるが、被写体が遠いときや動きがゆっくりのときにAF-Cに切り替わらないこともある。そのため、動体撮影時はAF-Cに設定するのが確実だ。
ピンポイントに合わせるなら「1点AF」、大外しを避けたいなら「ゾーンAF」を使おう
昨今のカメラでは、たくさんある測距点をどう使うのか、というのも大事だ。便利さや手軽さの面では全測距点をカメラ任せにする「自動選択AF(「オートエリアAF」などメーカーによって呼び名は異なる)」がいいが、背景や被写体の手前の障害物などにピントが合ってしまうようなこともあるので、あまりおすすめはできない。特に測距点のカバーエリアが広いミラーレスカメラでは、狙いと違う場所にピントが合ってしまうケースも少なくないので要注意だ。
測距点をひとつだけ使う「1点AF(シングルポイントAF)」は、ピンポイントで被写体を捉えられるぶん、ピント精度の面で有利。撮りたい構図にきちっと合わせ込めるのが強みである。反面、動きの激しい被写体だと、選択した測距点で捉え続けるのが難しいこともある。
それをカバーできるのが、選択した測距点でピント合わせができなかったときに周囲の測距点がカバーしてくれる「領域拡大AF(ダイナミックAF)」だ。被写体のサイズが小さいときや、急な動きをしたときにも逃がしにくくなるのでおすすめだ。
領域拡大AFの代わりに「ゾーンAF(グループターゲット)」を搭載しているカメラもある(両方を搭載している機種もある)。こちらは複数の測距点のグループ内で自動選択AFを行うもの。1点AFよりも広めの範囲でピント合わせを行うので、動きの激しい被写体などにも対応しやすい。機種によってはより広い範囲をカバーする「ラージゾーンAF」を搭載するものもある。
画面内を横切るような動きをするときは「追尾AF」に
画面の中を横切るように移動する被写体に対して、測距点を自動で切り替えながら追いかける機能が「追尾AF」だ。一眼レフでは、画面に対して測距点がカバーする範囲が狭いために制約も多いが、ミラーレスカメラは画面全体がカバーエリアになっているものも多く、それこそ画面の端から端まで追い続けられる。
たとえば、カーブを描きながら近づいてくる列車を、フレーミングを固定した状態で連続的に撮りたいときに対応できるし、飛びまわるチョウにピントを合わせ続けることも可能だ。
ただし、追尾AFは色や明るさなどの情報を使って被写体を識別するため、背景に被写体と同系色のものがある場合などは追尾に失敗することがある。また、画面上の被写体のサイズが小さすぎるとうまく捕捉できずに、ほかのものにピントを合わせてしまうことも。そのような場合は、被写体がもう少し近づいてから半押しをやり直すことで捕捉しやすくなる。
動きモノ撮影では“連写”は必須
撮りたい構図や撮るタイミングががっちり固まっているのであれば、それこそ一発勝負で決める覚悟で狙うのも悪くない。しかし、動く被写体が相手だと、なにが起きるかわからない。だから、撮りこぼしを避けるためにも、連写を使うことを基本に考えたほうがいい。
また、たとえば、羽ばたく鳥などのように形が変わる被写体は、最高のタイミングでシャッターを切るのは至難のワザなので、連写が速いカメラほど有利になると考えるべきだろう。
ただし、たくさん撮れば撮るほどメモリーカードの容量を食うし、書き込みの待ち時間も長くなる。以前はカードへの書き込み待ちのせいでシャッターチャンスを逃がしたなんて話もあった。カメラによっては、書き込み中はメニュー操作ができなかったり、再生できなかったりといった制限もあるので、なるべく撮りすぎないように気をつけたい。カードがいっぱいになるまで撮ると、最後のコマが書き込みエラーになる場合もあるので、早めに交換するのがいい。
ここまで話してきたことは、一眼カメラで動体撮影するうえでの基本である。高速シャッター、追従AF、連写の最適な設定を行えば、どんな動きモノでもビシッと止めて写すことができる。あとは実践あるのみだ!