いまでこそ、各社から10倍以上の高倍率ズームレンズを搭載したレンズ一体型デジカメが発売されているが、その草分け的存在といえばパナソニックの「LUMIX FZ1」だ。発売は2002年。コンパクトデジカメと同じサイズで、35~420mm相当、F2.8の光学12倍ズームレンズを搭載していたというのがかなり画期的で、メーカーからお借りして、雑誌でレビュー記事を書いた記憶がある。その後、コンパクトデジカメに高倍率ズームの波が押し寄せ、現在はひとつのカテゴリとして定着している。
今回レビューするパナソニックの「LUMIX TX1」は、そのFZ1の伝統を受け継ぐモデル。レンズは、25~250mm相当、F2.8~5.9の光学10倍ズーム。撮像素子は1インチの高感度MOSセンサーを搭載し、有効画素数は2010万画素。撮影した4K動画から静止画を切り出す「4Kフォト」機能を搭載しているので、決定的瞬間もしっかり押さえることができる。
高倍率ズームながらコンパクトなボディ
本体サイズはW110.5×H64.5×D44.3mmとコンパクト。重量は約310gで、見た目よりは少し重量感がある。しかし、これくらいの重さがあったほうが撮影しているという感じがでる。
背面液晶は約104万画素のタッチパネル方式。固定式で稼働することはできない。液晶の表示は精細で、思わず自分の写真の腕が上がったような気になる。
なお、約116万画素の電子ビューファインダーも搭載。使ってみると思いのほか見やすい。最近は、電子ビューファインダーの性能もかなり向上。ファインダー派の筆者としてはとてもうれしい。
本体上面にはモードダイヤル、ズームレバー兼シャッターボタン、電源スイッチ、動画録画ボタン、ダイヤルが配置されている。
ストロボはポップアップ式で、光軸上に搭載。
高倍率ズームレンズということで、レンズの伸縮具合が気になるところ。上が25mm時、下が250mm時。結構伸びるので撮影時には注意したい。
なお、撮影時に気になったのが、右手親指の置く場所だ。背面のボタン配置から、Fn1ボタンの左、Fn2ボタンの上になるのだろうが、特に親指を置くための滑り止めなどがあるわけではない。そのためか、撮影時(特にファインダー撮影時)になんとなく本体をホールドしにくいと感じた。ボディがコンパクトなための弊害といってもいいだろう。
広角・望遠・マクロとオールマイティに使える1台
それでは、さっそく撮影に移ろう。撮影日は曇り空が続いた日だったが、少しだけ晴れ間も見えた。
菜の花が咲き乱れる葛西臨海公園にて。広角端で広い範囲を撮影。
望遠端で撮影すると、観覧車の中にいる人まで認識できる。高倍率ズームはこの極端な画角を1台で扱えるのが楽しい。
広角側ではレンズ先端5cmまで寄ってマクロ撮影ができる。広角マクロは楽しい。
望遠端では70cmまで寄れる。望遠ならではの背景のボケと圧縮効果(画像内の遠近感をなくし、被写体同士の距離を縮めて見せる効果)で、菜の花を印象的に撮影。
望遠端の圧縮効果をうまく利用すると、ドラマチックな写真になる。
ヘラサギかな? 近づき過ぎると飛んでいってしまうため、ぎりぎりまで間合いを詰めて250mm相当で撮影。
そこでiAズームを使って500mm相当で撮影。デジタルズームだが超解像技術により精細な画質が得られた。
近づいても全然逃げない猫。広角端で寄って撮影。毛並みがしっかり再現されていて、解像感の高さがわかる。
花をアップで。背景のボケがなだからで美しい。レンズ性能の高さが伺える。
多彩なクリエイティブコントロールが搭載されているのもTX1の特徴。「ハイダイナミック」では、HDR風の撮影が行える。通常の写真よりもドラマチックに見える。
TX1は常用でISO 125~12800、拡張時はISO 80、125、25600が使用できる。ISO 6400で撮影した写真を見ると、充分実用的。高感度撮影での画質低下はあまり気にならない。
コンパクトボディゆえのジレンマも
短い間だったが、TX1で撮影をして、その画質の良さは堪能できた。ひとつ気になったのが、操作性だ。レンズ部分には、露出補正やステップズームなどを割り当てられる「コントロールリング」がある。これは適度なトルク感もあり使いやすい。好みの機能を割り当てて使うと操作性が向上するだろう。
問題は、背面のボタン配置。本体が小さいために、どうしても窮屈になってしまい、目的のボタンが押しづらいと感じた。コンパクトなのに電子ビューファインダーが搭載されているのはとてもうれしいのだが、ISO感度やフォーカスモードの変更をするときに、どうしても違うボタンを押してしまう。かといって、モニターに表示されるメニュー画面からの変更すると時間がかかってしまう。コンパクトな筐体ならではのジレンマともいえるだろう。
本体の横幅をもう少し大きくしてもよいので、ボタンを大きく、余裕のある配置にしてくれれば、普段使いに最適なオールマイティな1台として末永く愛用できるカメラになりそうだ。高倍率ズームは、旅行など荷物を減らしたいシチュエーションでもっとも威力を発揮するカメラ。そのなかでも高画質かつ高感度に強いTX1は、デジタル一眼レフのサブ機としても活躍できるポテンシャルを持っている。
パナソニック
LUMIX DMC-TX1
実売価格7万8520円
コンパクトなボディに10倍光学ズームレンズと手ぶれ補正、電子ビューファインダーを搭載。1インチの高感度MOSセンサーにより、高倍率ズームながらも高画質を実現している。
【SPEC】
撮像素子:2010万画素1型高感度MOSセンサー
レンズ:25~250mm相当(35ミリ判換算)、F2.8~5.9
モニター:3型/約104万画素
サイズ:W110.5×H64.5×D44.3mm/約310g(電池等含む)
【URL】
パナソニック http://panasonic.jp/