今回紹介するのは、2016年3月に発売された富士フイルムのミラーレス一眼カメラ「Xシリーズ」のフラッグシップ機「X-Pro2」。2430万画素のAPS-Cサイズセンサー「X-Trans CMOS III」を搭載しており、ローパスフィルターレス仕様で高い解像感を実現していることが特徴だ。画像処理エンジンは、従来機の約4倍の処理能力を有する新開発の「X-Processor Pro」を採用し、キビキビとした動作で軽快に撮影できる。
数あるデジカメメーカーのなかでも、富士フイルムは他社と決定的に違う点がある。現時点で、日本唯一のフィルムメーカーなのだ。そのため、画質へのこだわりは並々ならぬものがある。かつて販売していた「FinePix S」シリーズは、ニコンのFマウントを採用し、撮像素子に独自の「スーパーCCDハニカム」を搭載。その高画質から、特にプロカメラマンの愛用者が多かった。
2011年に発売された「X100」は、レンズ一体型のカメラだが、レンジファインダー機のようなフォルムに、35mm相当の単焦点レンズ、そして光学ファインダーと液晶ビューファインダーのハイブリッドビューファインダーを搭載し話題となった。
2012年には、レンズ交換式の「X-Pro1」を発売。レンズマウントは独自の「Xマウント」を採用。そして、独自のカラーフィルター配列を採用した撮像素子「X-Trans CMOS」を搭載し、APS-C機ながらも35mmフルサイズのデジタルカメラに匹敵する画質を実現した。その後、レンズ交換式のXシリーズはX-E1、X-M1、X-A1とラインアップを拡充し、ついにフラッグシップ機の最新機種「X-Pro2」が登場した。
堅牢かつ操作性に優れたデザイン
それでは、4年の歳月を経て登場したフラッグシップ機「X-Pro2」を見ていこう。
本体サイズはW140.5×H82.8×D45.9mm、重量は約495g(バッテリー、メモリーカード含む)と、やや大柄。これにレンズを装着するとそれなりの重量となる。
背面液晶は3型TFT液晶。チルト機能はない。またタッチ操作には非対応となっている。視認性は悪くないが、晴天時にはやや見づらい。
液晶右側にあるスティックレバーは、フォーカスポイントの移動などに使える。これがなかなか使いやすい。フラッグシップ機らしく、目的の設定にワンボタンでたどり着けるようになっているのは、たいへんありがたい。
ダイヤル部はシャッタースピードダイヤルとISOダイヤルが共存しており、操作にはやや慣れが必要。露出補正ダイヤルが独立している露出補正を頻繁に行う場合は、これはとても便利だ。なお、質感はかなり高い。
シャッターボタン下にはコマンドダイヤルを装備。背面のコマンドダイヤルと2ダイヤルとなるため、操作性はかなりよい。また、右側にあるレバーはファインダーの切り替えレバーだ。これについては後述する。
ファインダーは、光学式と電子式を切り替えられる「ハイブリッドマルチビューファインダー」。これがなかなか快適。光学式の場合、レンズとは違う位置に採光窓があるため、画角がずれるが、有効フレームがきちんと表示されるため、フレーミングに困らない。
また、電子式の場合は実際にレンズを通した画像が表示されるので、より厳密なフレーミングができる。暗すぎるシーンなどでは光学ファインダーよりも電子式のほうが見やすいだろう。表示の遅れもなく、快適に使える。両者の切り替えは、前面にあるレバーで行う。
本体前面にフォーカスモードの切り替えスイッチがある。こういうメカニカルなスイッチが多いと安心感を覚える。
ボディはマグネシウム製となっており、非常に堅牢。また、SDカードが2枚挿入できるデュアルカードスロットとなっている。この辺りにもプロの使用を想定した設計が伺える。
新フィルムシミュレーションは期待を上回る描写
X-Pro2は、フィルムを変えるように画質を変えられるエフェクトモード「フィルムシミュレーション」機能を搭載している。これは、富士フイルムのポジフィルム銘柄である「PROVIA」や「Velvia」などの画質を再現したもので、往年のフィルムカメラ好きにはたまらない機能だ。
それでは、作例を見ていこう。レンズは「XF35mmF2 R WR」を使用した。
鮮やかな芝桜をスタンダードモードである「PROVIA」で。鮮やかだがどぎつさはない。富士フイルムのカメラらしい色合いだ。
鮮やかさを強調するためにフィルムシミュレーションを鮮やかな「Velvia」で撮影。不自然さがなく、安心して使える色味だ。背景に映る山々の描写は立体感がある。
X-Pro2から搭載された新フィルムシミュレーション「ACROS」で撮影。以前よりあるモノクロモード「B&W」はどこか物足りなさがあったが、ACROSの描写はモノクロフィルムのような深みがある。このためだけにX-Pro2を購入したいとさえ思ってしまう。
X-Pro2のもうひとつのお気に入りのフィルムシミュレーション「クラシッククローム」で。非常に落ち着いたトーンとなり、渋い。
上記とちょっと視点を変えてACROSで撮影。水墨画のような印象だ。
コントラストが弱めのフィルムシミュレーション「ASTIA」で夕暮れ時の空を。夕焼けに色づく雲の微妙な色彩がしっかり出ている。
高感度撮影のテスト。Xシリーズのカメラは高感度に強いという印象だが、X-Pro2も期待通り。ノイズが少ない上に解像感もしっかりキープしている。ISO 6400はどんどん使っていける。ISO 12800になると空の部分にはノイズが多く見受けられるが、ISO 6400と比べるとという程度。状況によっては使える画質といえる。
すべてが高次元で末永く使っていけるカメラ
今回X-Pro2を使って、改めてその画質のよさを実感した。特にフィルムシミュレーションの「ACROS」と「クラシッククローム」は、非常に好み。今、X-Pro2が欲しくてたまらない気持ちだ。
また、「ハイブリッドマルチビューファインダー」もとても快適。特に光学式では、撮影情報や有効フレームが表示されるため、慣れれば正確なフレーミングが可能。マクロ撮影などには向いてないが、その際には電子式に切り替えればよい。
富士フイルムのXシリーズは、レンズの性能のよさも忘れてはいけない。ズームレンズもいい描写をするのだが、X-Pro2を使うなら単焦点レンズがオススメ。X-Pro2の描写力を最大限に引き出せるだろう。
フォーカススピードも小気味良く、撮影時のストレスはほとんど感じなかった。シャッタースピードダイヤルとデュアル構造になっているISOダイヤルがやや使いづらいが、これも慣れてしまえば問題ないだろう。
カメラとしての質感の高さ、画質のよさ、そして操作性。どれも高い水準にある。やや高価だが、5年10年と使い続けられると考えれば、それほど高くないのでは。そう思えるカメラだ。
富士フイルム
X-Pro2
実売価格20万6940円(ボディ単体)
APS-Cサイズの撮像センサー「X-Trans CMOS III」を搭載したミラーレス一眼カメラ。従来機の約4倍の処理能力を持つ新開発の画像処理エンジン「X-Processor Pro」を搭載。光学式と電子式を切り替えられる世界唯一の「ハイブリッドマルチビューファインダー」も備える。ボディは防塵・防滴・-10度までの耐低温のタフ仕様。
【SPEC】
撮像素子:有効2430万画素X-Trans CMOS IIIセンサー
レンズマウント:富士フイルムXマウント
モニター:3型/約162万画素
サイズ:W140.5×H82.8×D45.9mm/約445g
【URL】
富士フイルム http://fujifilm.jp/
製品情報ページ http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/x/fujifilm_x_pro2/