フルサイズセンサー搭載機が各社から登場してきたミラーレス一眼。いま狙うべきはフルサイズ機なのか、それともAPS-Cサイズ機&マイクロフォーサーズなのか、2回にわけて比較検討します。前編の今回は、フルサイズについて実力をチェックしました。
<チェック項目>
1.解像感
解像感は画素数に加え、画像処理の上手さがカギになります。ここでは、静態展示されている飛行機を各機種の最低感度(拡張感度は除く)で撮影し、その一部を拡大してチェックしました。
2.高感度画質
最近は高感度でもノイズが目立つことはほとんどありません。ただ、解像感が低下したり、暗部がつぶれたりするケースは多いです。今回は、ISO12800で夜景を撮影。その一部を拡大して比較しました。
3.EVFの見やすさ
EVFは使用されている表示パネルの画素数や、接眼レンズの設計などによって見え方の良し悪しが決まります。実際に覗いて、画面が広いか、ゆがみや滲みなく見えるかをチェックしました。
4.軽さ
ミラーレス一眼の最大の魅力といえる軽さを比較。ここでは、ボディとキットレンズにメモリーカードとバッテリーを加えた質量を計測し、実際に使用する状態での軽さを比べました。
【判定した人】
ライター/カメラマン・河野弘道
ミラーレスと一眼レフを使い分けています。フルサイズ機に注目するも、予算が追い付かず……。
注目はフルサイズ機ながら非フルサイズも実力は十分
ニコンやキヤノンがフルサイズミラーレス一眼を投入したことで、フルサイズミラーレス一眼で独占的な立場にあったソニーと合わせて、3社のフルサイズモデルが注目を集めています。その一方で、フルサイズ以外のミラーレス一眼にも、高性能モデルが増えています。特にパナソニックや富士フイルムなど、ミラーレス機に特化して開発を進めてきたメーカーの製品は、センサーサイズが小さくても使いやすく、画質的にも満足のいく製品が出揃っています。
両陣営を比べた場合、レンズまで考慮するとかなり高価なフルサイズ機が、どの程度のアドバンテージを発揮するかが焦点です。そこで今回は、最新のフルサイズ機だけでなく、APS-Cやマイクロフォーサーズの新型モデルも加え、画質や軽さなどを比較しました。
一般に高感度撮影では、フルサイズに利があります。反面、軽さはセンサーサイズの違いによる影響が大きく、非フルサイズ機のほうが有利です。このような構造上の得意・不得意があることは、どのメーカーも理解していること。その弱点を、技術革新によってどこまで埋められたか。そして、それは両陣営の価格差を埋めるだけの魅力があるかに注目してほしいです。
【その1】画質だけでなく操作性にも優れた快適・快速モデル
キヤノン
EOS R
実売価格25万6500円(ボディ)
必要十分な画素数と連写速度を備えたキヤノン初のフルサイズミラーレス一眼。同社のミラーレス一眼EOS Mシリーズを発展させた操作性を採用。背面に、タッチやスライドで操作できるマルチファンクションバーを搭載しており、直感的に扱えます。【センサー:3030万画素フルサイズ】【連写速度:約8コマ/秒】【AF測距点:5655点】【質量:660g】
SPEC●センサーサイズ:フルサイズ(約36.0× 24.0㎜)●記録媒体:SD●マウント:キヤノンRFマウント●常用ISO感度:100〜40000●動画:4K30p●サイズ:W135.8×H98.3×D84.4㎜
【解像感:A】
メリハリの効いた画像で解像感はかなり高め
今回取り上げた6機種中ではいちばん画素数が多く、画作りも適度にメリハリが効いている印象。解像感はかなり高めでした。
【高感度画質:B】
暗部は多少つぶれるが不自然さのない写り
ノイズ処理によるムラなども目立たず、解像感は十分。暗部は、フルサイズ機としては多少つぶれ気味ですが、バランスはいいです。
【EVFの見やすさ:A】
ゆがみや滲みは少なく解像力も十分高い
ゆがみや滲みが少なく、十分に広いです。369万ドットという高解像な表示パネルを採用しており、被写体の細部まで確認できました。
【軽さ:C】
標準レンズの重さが難、軽量レンズ登場に期待
ボディは660gと比較的軽量ながら、標準レンズが24〜105㎜ F4の高性能レンズとなる。トータルでは6機種中で最重量級です。
【その2】基本性能の高さと軽さが魅力のフルサイズ・オールラウンダー
ソニー
α7 III
実売価格24万5480円(ボディ)
画素数を2420万画素に抑え、最高約10コマ/秒の連写性能や、常用でISO51200までの高感度性能を確保した使い勝手のいい1台。約5段分のボディ内手ブレ補正を搭載するため、レンズを小型化でき、トータルの質量を軽くできるのも魅力です。【センサー:2420万画素フルサイズ】【連写速度:約10コマ/秒】【AF測距点:693点】【質量:650g】
SPEC●センサーサイズ:フルサイズ(約36×24㎜)●記録媒体:メモリースティック DUO、SD(ダブルスロット)●マウント:ソニーFEマウント●常用ISO感度:100〜51200●動画:4K30p●サイズ:W126.9×H95.6×D62.7㎜
【解像感:B】
階調を重視した画作りで見た目の解像感は低め
階調を重視した画作りで、他機種に比べると解像感が低めに見えます。とはいえ、実際は十分に解像しており、調整で細部も再現可能です。
【高感度画質:A】
メリハリは少なめだが質感描写に優れている
他機種に比べると、メリハリは弱めの印象。とはいえ、ノイズが目立たないだけでなく、暗部の質感まで十分に残っていて好印象です。
【EVFの見やすさ:B】
十分に広く見やすいが解像力でほかに劣る
画面が十分に広く見やすい。ただし、表示パネルが264万ドットで、ライバルのフルサイズ2機種に比べるとわずかながら解像で劣ります。
【軽さ:B】
ボディ、レンズ共に軽量で1㎏以下で持ち歩ける
ボディは650gでほかの機種との差は少ないですが、普及タイプレンズ装着により軽量化が可能。フルサイズ機で唯一1kg以下となりました。
【その3】ファインダーが見やすく基本性能も高いお買い得機
ニコン
Z 6
実売価格27万2700円(ボディ)
高画素タイプの上位機種Z 7と同様のボディを持つ普及機。とはいえ、画素数やAF測距点数が少ないだけで、最高約12コマ/秒の連写性能などはZ 7を上回ります。光学系にもこだわった約369万ドット表示のEVFを搭載します。【センサー:2450万画素フルサイズ】【連写速度:約12コマ/秒】【AF測距点:273点】【質量:675g】
SPEC●センサーサイズ:フルサイズ(約35.9×23.9㎜)●記録媒体:XQD●マウント:ニコンZマウント●常用ISO感度:100〜51200●動画:4K30p●サイズ:W134×H100.5×D67.5㎜
【解像感:B】
メリハリが効いた画作りで画素数以上の解像感
メリハリの効いた見栄えのする画作り。実際の解像度ではほかの2機種に勝ってはいないですが、解像感自体は十分高めに感じました。
【高感度画質:A】
コントラストが高めでノイズやムラは少ない
ノイズやムラが目立たず好印象。ただ、コントラストがやや高めのようで、暗部の質感はわずかにつぶれ気味でした。
【EVFの見やすさ:A】
広く、ゆがみや滲みもない現時点での理想的なEVF
約369万ドットの表示パネルを採用。画面が広く、ゆがみや滲みが限りなく少ないです。見え具合は現時点での理想に近いといえます。
【軽さ:C】
軽量化の工夫は見られるが1㎏超えで軽くはない
ボディ内手ブレ補正の採用や沈胴式レンズの採用など、小型化、軽量化の工夫は見られます。とはいえ、トータル1㎏を超えてしまいました。
【コラム】フルサイズ機はレンズが大きく高価格
フルサイズ用レンズは、高性能タイプの製品が多いこともあり、高価格なものが多いです。レンズ筐体も、APS-Cサイズ機やマイクロフォーサーズ機のレンズに比べると大型化してしまいがち。モデル選びの際は、システムトータルの価格や重さを理解しておきましょう。
コントロールリングをレンズに新搭載
キヤノン
RF24-105㎜ F4 L IS USM
実売価格15万円
開放F4の高性能なLレンズ。約5段分の手ブレ補正を搭載。RFレンズは、鏡筒にコントロールリングを装備します。
軽量で手ブレ補正も搭載の普及タイプ
ソニー
FE 28-70㎜ F3.5-5.6 OSS
実売価格4万8190円
ソニー SONY ズームレンズ FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS Eマウント35mmフルサイズ対応 SEL2870
フルサイズミラーレスを長く作っているソニーには、普及価格のレンズがあります。本品は、低価格かつ軽量で人気です。
コンパクトに持ち運べる沈胴式
ニコン
NIKKOR Z 24-70㎜ F4 S
実売価格13万2300円
Zマウントの標準ズームは、撮影時以外は鏡筒を縮めてコンパクトにできる沈胴式。小型で高画質なレンズです。