吉森信哉のレンズ語り~~語り継ぎたい名作レンズたち~~ 第9回「ペンタックス 新スターレンズ」
焦点距離50ミリ前後の単焦点レンズは、昔から“標準レンズ”として定着してきた(35ミリ判フルサイズのカメラで)。ズームレンズでは難しい明るい開放F値を持ちながら、小型軽量で値段も比較的安価。そんな標準単焦点レンズは、標準ズームのサポート役としても有効である。小型軽量なので携行時の負担が少なく、明るい開放F値を生かして、光量に恵まれない夜間や室内の撮影や、大きなボケ効果を得たい場合などに、その威力を発揮してくれるのだ。
一方、最近の傾向としては、大きさや重さは度外視(?)して、より優秀な光学性能・描写性能を追求した標準単焦点レンズも増えている。今回紹介するペンタックスの「HD PENTAX-D FA★ 50mm F1.4 SDM AW」も、そんな“性能最優先”で開発された製品である。
【今回紹介する製品はコレ!】
リコー
HD PENTAX-D FA★ 50mm F1.4 SDM AW
実売価格14万5650円
Kマウントデジタル一眼カメラ用レンズのなかで、特に高い描写性能を追求した「★(スター)」シリーズの大口径標準単焦点レンズ。デジタルカメラの進化に対応できるよう、社内規格を大幅に見直して、理想の画質を目指して開発された。逆光でもクリアな描写が得られるよう、最新のレンズコーティング技術を採用。また、防塵・防滴構造の採用によって、アウトドア撮影時の厳しい環境下での、信頼性・耐久性も高められている。2018年7月発売。
●焦点距離:50mm ●レンズ構成:9群15枚 ●最短撮影距離:0.4m ●最大撮影倍率:0.18倍 ●絞り羽根:9枚(円形絞り F1.4~2.8) ●最小絞り:F16 ●フィルター径:72mm ●最大径×全長:約80mm×約106mm ●質量:約910g
レンズ構成としては、フォーカス群(ピント合わせを担う)である変形ガウスタイプの後群に加え、前群に補正レンズ群を配置。それにより、変形ガウスタイプでは補正しきれない収差を効果的に補正し、画面全体で均一な解像性能とコントラストを実現しているのだ。
<本レンズの作例一覧(解説は記事後半で!)>
高度な光学設計と、良好な操作性・操作感
デジタルカメラ(ボディ)の画質性能のさらなる進化を視野に入れ、★(スター)レンズの規格を見直して開発された“新世代のスターレンズ”。その第1弾の製品が「HD PENTAX-D FA★ 50mm F1.4 SDM AW」である。3枚の異常低分散ガラスと非球面レンズ1枚を採用して色収差や球面収差を良好に補正。これにより、画面中心から周辺部までクリアでコントラストの高い優れた描写性能を実現している。
また、被写体距離約1mでの歪曲収差をほぼゼロに補正。無限遠から最短撮影距離まで、歪みを抑えた安定した描写を得ることができる。なお、最短撮影距離は40cmという短かさだ。重量級のフォーカス群の駆動に高トルク仕様のリング型超音波モーター(SDM)を採用し、高速で快適なAFレスポンスを実現している。
前述のとおり、昔からから“標準レンズ”として定着してきた50ミリの標準単焦点レンズは、小型軽量で比較的安価な製品が多かった。ペンタックスにも、フィルムカメラの時代から発売されている「smc PENTAX-FA 50mm F1.4」という、小型軽量(最大径×全長:65×37mm、質量:220g)な製品がラインナップされている。
その小型軽量な50mmF1.4と比べると、HD PENTAX-D FA★ 50mm F1.4 SDM AWは、そのボリュームに圧倒される。全長は約3倍、質量は約4倍にもなるのである。だが、そのボリューム感が、重厚な35ミリ判フルサイズ一眼レフK-1シリーズボディにマッチする(個人的な印象だが)。
そして、使用感も良好。リング型超音波モーターを採用した新開発SDMを搭載し、高速かつ静かなAF駆動を実現している。また、AFモードのまま切り換えナシでMFにも移行でき、ピントリングの操作感もスムーズで滑らかである。ちなみに、このピントリングは幅広で操作しやすく、AF駆動時に回転することもないので、安定したホールディングが可能になる。