テクノロジーの進化がそのまま製品のそれに直結する家電にとって、平成はまさに激動の時代でした。今回は家電のなかでも特に激しい変化を遂げたテレビ&レコーダーの歴史を、AV評論家の藤原陽祐さんのコメントを交えて紹介します。
【ご意見番が平成家電を振り返る!】
AV評論家/藤原陽祐さん
新聞記者、雑誌編集者を経て独立。オーディオ機器から映像機器まで守備範囲が広く、製品の本質をついたレポートには定評があります。
アナログからデジタルへ放送形態に合わせハードも進化
ブラウン管からプラズマ、そして液晶へ。その形状から大幅に変化したのがテレビです。平成初期はブラウン管テレビが成熟期を迎え、画面が大型化。さらにハイビジョン対応や横長テレビなどアナログ放送対応ながら、意欲作が登場します。そんな状況を一変させたのが放送のデジタル化でした。まずはCS、次にBS、地上波と次々にデジタル化の波が到来。ハイビジョンの高画質映像を再現するのに期待されたのが黎明期のプラズマや液晶などの薄型テレビでした。
「エコポイント制度実施でブラウン管テレビからの買い替えが一気に進んだ薄型テレビでしたが、世界標準が液晶テレビとなったことで雌雄が決した」(藤原さん)
その後は周知の通り。さらなる高画質化と大型化に邁進します。一方のレコーダーもビデオテープというアナログメディアからDVD、BDといった光ディスクへと進化。さらにネットワーク機能を搭載するに至ります。平成はまさに激動の時代だったといえるでしょう。
【平成2年】CM効果もあり売れに売れた
松下電器(現パナソニック)
BS内蔵フラットテレビ画王
TH-29VS10
カラーテレビ事業30周年の節目に発売。平面に近い「スーパーフラット&ブラックマスク」ブラウン管を採用し、シリーズ累計300万台超えの大ヒット。津川雅彦扮する王様の派手なCMも話題に。
【平成2年】ハイビジョン普及の先駆けとして未来技術遺産に選定
ソニー
ハイビジョンテレビ
KW-3600HD
世界初のハイビジョン実験放送で採用された、日本独自のアナログハイビジョン規格「MUSE」。そのMUSEデコーダーを備えたテレビ。高輝度・高精細な大画面トリニトロン管を装備しました。
【平成2年】「一家に一台」から「一部屋に一台」の時代を象徴
松下電器(現パナソニック)
テレビデオ 2-SHOT TH-14EV2
録音・再生可能なVHSデッキを内蔵したテレビ。S-VHSテープの簡易再生(画質はVHS相当)にも対応。チューナーは1つで、番組録画中に他チャンネルを見ることができませんでした。
【平成3年】スーファミとテレビを合体させたユニークさ溢れる意欲作
シャープ
スーパーファミコン内蔵テレビ SF-1シリーズ
当時の人気ゲーム機「スーパーファミコン」を内蔵したテレビ。スーパーファミコンとは内部でS端子接続されており「ゲーム」画質モードも用意されているため、コンポジット接続よりも画質が良いです。14型と21型が発売されました。
【平成4年】映画好きが色めき立った業界初の横長ハイビジョンテレビ
松下電器(現パナソニック)
ワイド画王TH-36HD1
MUSE方式を採用した横長アナログハイビジョンテレビとして、業界初の製品。価格は450万円でした。以降、アスペクト比16:9の製品は「ヨコヅナ」シリーズへと受け継がれていきます。
【平成5年】世界初のプラズマテレビとして登場!
富士通ゼネラル
「プラズマビジョンT21」PDT-2100
世界初、フルカラーのプラズマディスプレイを採用したテレビ。21型で、定価は125万円。なお、本機に先駆けてPC接続端子を装備したプラズマモニタ「PDS-1000」も発売されています。
【平成8年】ソニー独自のトリニトロン管で業界初のフルフラットを実現!
ソニー
平面ブラウン管テレビ
スーパーフラット・トリニトロン
KV-28SF5
水平・垂直の両方向にフラットな画面を実現したブラウン管「スーパーフラット・トリニトロン」を搭載。ARマルチコーティングとあいまって、外光の映り込みも最小限に抑えました。
【当時の印象】
「いち早く完全フラット化を実現し、その後、ブラウン管の大きなムーブメントとなった意義深い技術。当時のソニーの先進性の証でもありました」(藤原さん)
【平成8年】
ソニー
BSチューナー内蔵S-VHSハイファイ/ステレオハイエイトビデオデッキ WV-SW1
VHSと8ミリビデオのそれぞれ上位規格「S-VHS」と「ハイエイト」の両方に対応したデッキ。相互にダビング編集も可能。
【平成11年】DVDレコーダーの時代はここから始まった!
パイオニア
DVDレコーダー DVR-1000
DVD-RWメディアへの番組録画再生と、DVDビデオの再生が可能な世界初のDVDレコーダー。1枚のメディアに、標準で120分、圧縮して最大360分の録画ができる。本体は25万円でした。
【平成13年】液晶テレビ普及のきっかけとなったアクオス伝説の始まり
シャープ
液晶カラーテレビ「AQUOS」
C1シリーズ
シャープの主力ブランドのひとつ「アクオス」の第1弾。解像度は640×480ドットで、13型/15型/20型の3サイズをラインナップ。広告には当初から吉永小百合が起用されていました。
【当時の印象】
「デザイナーに喜多俊之氏を起用し、当時、画一的だった液晶テレビのカタチに一石を投じたAQUOS。“おっぱい”テレビとしても親しまれた。記憶に残る1台です」(藤原さん)
「次世代」規格が登場するとき、必ずといっていいほど複数の規格が並立し、競合することになる。平成も、そのような規格が数多く生まれては消えていった時代でした。必ずしも優秀な規格が残るとは限らず、ときの運に左右されることもあるのが難しいところです。
書き換え可能でPCでの使い勝手も良かったのですが、DVD-R/RWが主流に
DVDビデオとの互換性が高かったのですがBDが主流になり、終売となりました