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2019/2/13 19:00

フェンダー「ギターアンプ型のBluetoothスピーカー」3機種を聴き比べ!”フェンダーらしい”音とは?

エレクトリックギター/ベースの代名詞FENDER(フェンダー)は、1940年代にアメリカ、カリフォルニア州でレオ・フェンダー(Clarence Leonidas Fender)氏によって設立。FENDERから1951年に発売されたブロードキャスターをはじめ、テレキャスター、ストラトキャスター、プレシジョンベース、ジャズベースなど、現代の世界的定番モデルを世に生み出しています。FENDERのギター/ベースは、ジェフ・ベック、エリック・クラプトン、フリーをはじめ、世界中のトップアーティストが愛用していることでも知られています。

 

そのフェンダーがオーディオ市場に進出し、イヤホンやスピーカーなどを販売。2019年1月にはBluetoothスピーカー「INDIO」(インディオ)をリリースしました。実はライバルのMarshall(マーシャル)もBluetoothスピーカーを発売しているので、オーディオでもFenderとMarshallが対決することになります。歪みと低音の量感でロックを感じさせるマーシャルのBTスピーカーに対して、フェンダーはどんな音なのでしょう。構造上の特徴としては、筺体の素材にウッドを使い、多くのスピーカーが使っているバスレフ式ではなく密閉式を採用します。機能面では低音用と高音用で独立したトーンコントロールを装備。BluetoothコーデックはSBC、AACと高音質なaptXにも対応。さらに有線接続できるライン入力もあります。

 

アメリカンスタンダードとも呼ばれる歪みがなくクリアーなフェンダーサウンドはBTスピーカーにも受け継がれたのでしょうか。サイズと用途別に揃った3モデルを実際に聴き比べてみましょう。

 

コンパクトながら厚みのあるサウンドの「NEWPORT」

最も小型な「NEWPORT」は、コントロールパネルを見れば分かるように「銀パネ」つまりシルバーフェイス時代のアンプデザインを採用。ギターアンプとしては1967年以降のモデルで、キレがよくヌケのいい高音が特徴でした。コンパクトながら重量は1.5kgあり、アンプのパワーは30Wと本格的で、ユニットはフルレンジ2発とツイーター1発の2Way3スピーカーです。連続再生時間は約12時間。

↑NEWPORTはブルー、ブラック、レッドの3色をラインナップ。直販価格は2万6780円

 

・NEWPORT

【SPEC】●スピーカー構成:フルレンジ×2、ツイーター×1 ●再生周波数帯域:80Hz~20kHz 出力: 最大30W ●Bluetooth対応コーデック:SBC、AAC、aptX ●連続再生時間: 最大12時間 ●バッテリー容量: 5200mAh ●サイズ: 約W183×H135×D75mm ●質量: 約1.5kg ●付属品:電源アダプター、USB充電ケーブル、オーディオケーブル(ステレオミニ)

 

↑トップパネルは「銀パネ」。ノブやスイッチのデザインにもこだわっているのがわかる

 

その音は、中高域を邪魔しない低域がポイント。このコンパクトサイズなら、パッシブラジエータを使って低音の量感を補強するのが定石ですが、それと引き換えに低域の解像度の低下、低音のタイミングの遅れ、音のにごりやエッジの甘さなどが気になってきます。フェンダーはいさぎよく、過度な低音の量感を切り捨てて、にごらず、遅れず、だぶつかない低音再生を実現しています

 

全体のバランスはそれでも中低域よりで、音に厚みがあって、低域不足を感じる人は少ないでしょう。井筒香奈江「Laidback2018/You Are So Beautiful」を聞くと、女性ボーカルはやわらかい音色で、周波数レンジはカマボコ型で聞きやすく、音の厚みを感じます。上級機と比較すると帯域を欲張らずに中域を充実させるイメージ。出力は30Wありますが、音量を上げると低域から歪んでくるため大音量再生には向きません。

 

ノリのよさが魅力の「INDIO」

この1月に発表されたばかりの「INDIO」は、重さ4kgで出力60Wにパワーアップされたフェンダー最大のバッテリー内蔵Bluetoothスピーカー。口径約9cmのウーハーと1.6cmのツイーターを搭載した2Way4スピーカーで、曲によってはステレオ感が得られます。また、2台の「INDIO」をLRに使ってステレオ再生もできますが、ボリュームが左右独立なのでそれぞれ調整してバランスをとります。連続再生時感は約25時間。

↑カラーはブロンドとブラックの2色。直販価格は3万9980円

 

・INDIO

【SPEC】●スピーカー構成:ウーファー×2、ツイーター×2 ●再生周波数帯域:20Hz~20kHz 出力: 最大60W ●Bluetooth対応コーデック:SBC、AAC、aptX ●連続再生時間: 最大25時間 ●バッテリー容量: 非公表 ●サイズ: 約W245×H122×D216mm ●質量: 約4kg ●付属品:電源アダプター、USB充電ケーブル、オーディオケーブル(ステレオミニ)

 

↑カラーによってノブやハンドルのデザインを変えている

 

「NEWPORT」の次に「INDIO」を聞くと、低音の沈み込みが格段に違います。 「Laidback2018/You Are So Beautiful」で小川浩史が弾くヴィンテージのFender Jazz Bassのキレが良くブーンという心地よい響きを再現してくれました。従来の小型Bluetoothスピーカーでは音がダンゴになってしまい、こんなのジャズベースの音じゃないと感じることもありましたが、その不満が解消されました。ツイーターが2個になったことで、ステレオ感も若干、感じられます。

 

井筒香奈江のボーカルは高域にまるみがあって優しい音色。ハイレゾ音源なので、イヤモニなどで聞けば驚くほど情報量が多く、ワイドレンジで曖昧さのない録音なのですが、「INDIO」ではアメ車を走らせたようなパワフルで押し出しの強い音になります。ディティールよりノリの良さを優先して馬力で聞かせるタイプです

 

ワイドレンジで音場感に優れた「MONTEREY」

最も大きな「MONTEREY」は、出力120Wで重さ6.8kgとBluetoothスピーカーとは思えないスペックを実現。「Black and Silver」は現行のギターアンプ「’68 Custom Amplifier」を思わせるデザインで、銀パネにハットノブ、パールブルーブロック体のロゴ、青色のジュエルランプなど随所に60年代フェンダーテイストが感じられます。Twin Reverbは使えませんが、SHAPE機能がありFenderらしさをさらに強調できます。バッテリーは内蔵せずにギターアンプと同じ3PタイプのACケーブルを使います。

 

「Tweed」は1947年に登場したギターアンプのデザインで、スピーカーグリル、ロゴ、コントロールパネルやノブのデザインまで「Black and Silver」とは異なるというこだわりのバリエーションモデルです。背面はネジ止めされ完全に密閉されていることが分かります。ライン入力はステレオミニだけでなく、RCA端子にも対応するためフォノイコライザー内蔵のアナログプレーヤーやプリアンプなども接続できます。

↑カラーはブラックアンドシルバーとツイードの2色。直販価格は4万8380円

 

・MONTEREY

【SPEC】●スピーカー構成:ウーファー×2、ツイーター×2 ●再生周波数帯域:20Hz~20kHz 出力: 最大120W ●Bluetooth対応コーデック:SBC、AAC、aptX ●連続再生時間: AC駆動のみ ●サイズ: 約W340×H245×D132mm ●質量: 約6.8kg ●付属品:電源アダプター、オーディオケーブル2種(ステレオミニ、RCA)

 

↑ノブの形状やハンドルの有無など細かいところまで異なるデザインとなっている

 

どのモデルも共通ですが、Bluetoothのペアリング時には電子音の代わりに短いギターフレーズが鳴ります。ペアリングは専用ボタンを押すだけです。The Eagles「Hotel California」のハイレゾ音源を再生すると、イントロからギターのピッキングがクッキリして、高域のヌケがいい。ベースは膨らみ過ぎず、このサイズから想像する低音の量感よりは控え目です。これは我々の耳がバスレフの音に慣れているからで、聞き込んでいくと高域から低域までスピード感の揃った演奏がスキッとするように感じられます。低音が欲しければBASSを回せばグーッと前に出て来ます。高域はいままでのモデルと違い、ややドライですが、TREBLEを回すと明るくなります。

 

左右のスピーカーの間隔が開いたせいか、音場感は3機種のなかでは最もよく、左右の広がり感と前後の奥行き感があります。コンサート会場の広さや、多くの観客、楽器の配置がイメージできました。右から入ってくるくぐもったようなドラムスの低音が音楽の底辺を支え続けます。バスレフスピーカーでは曖昧模糊となった音程も密閉型の「MONTEREY」ならキッチリ描き分けてくれます。剛性の高いエンクロージャーから生まれる低音は、やわなテーブルや家具を共振させるほどパワフルなので、ガッチリとしたラックか床置きがオススメ。「MONTEREY」は3モデルの中で最もワイドレンジでオーディオ的な音を聞かせてくれました

 

Bluetoothでの試聴が終わったところで、有線接続にしたらどうなんだろうとケーブルをつなぎ音を出してみると、いままでフェンダーのチューブアンプらしいと思えていた柔らかい音が影を潜め、クッキリ鮮明で目の覚めるような音になりました。これぞハイレゾという音の粒立ちとエッジの効いた演奏です。あまりの音の違いに驚きましたが、1台のスピーカーで、2つの音が楽しめると考えればお得ですフェンダーらしさを求めるならBluetoothで、情報量と鮮度重視なら有線接続を選べばいいのです。スピーカーは大口径で箱が大きいほど低音が出る、というオーディオの基本を再確認した試聴となりました。

 

協力:楽天市場