イヤーフックが痛くない。期待通りの高い遮音性
イヤーフック付きのイヤホンは装着が面倒に思えるかもしれませんが、装着感がとても安定するメリットがあります。Powerbeats Proの場合、イヤーフックでポジションを安定させて、ビーツの狙い通りのサウンドをユーザーに楽しんでもらうことも狙っているのだとウッド氏がPowerbeats Proのデザインを決めた理由を語っていました。
身につけてみるとイヤホンのハウジング、ボディやイヤーフックの“アタリ”がほぼ皆無でストレスフリーな装着感に驚きます。Powerbeats3 wirelessに比べると、本体を少し薄く縦長にして緩やかなカーブを付けて、耳に当たらないように設計されていることがわかります。
装着した状態は、Powerbeats3 wirelessが耳に対して横一文字に見えるのに対して、Powerbeats Proは斜めに掛かっているようなスタイルになります。イヤーフックの素材はPowerbeats3 wirelessよりわずかに硬めに感じられますが、肌へのアタリはとてもソフト。メガネともぶつからないので痛くありません。心地よい装着感が持続します。イヤホンのノズルの向きがPowerbeats3 wirelessよりも少し斜めに傾いて長くなっています。これも素直でプレッシャーの少ない装着感が得られる理由のひとつです。
Powerbeats Proは体を激しく動かしても耳から外れません。本機はアップル独自の評価基準による厳しい耐久テストをパスした耐汗・防沫対応のイヤホンなので、ジムなどでワークアウトを楽しみながら音楽を聴く用途にも最適です。イヤーフックで装着が固定されると、例えば人にぶつかられても簡単には外れません。通勤・通学の時にも安心して満員電車に乗りながら音楽が聴けます。密閉型構造なので、よほどボリュームを上げない限り周りに音も漏れにくいでしょう。
遮音性がとても高いので、例えば飛行機の中で音楽を聴く用途にも十分使えそうです。ただ反対に身に着けると外の音があまり聞こえなくなります。賑やかな昼間のカフェで試してみたところ、音楽再生を始めてしまうとまわりのざわつく声がほぼ気にならなくなる反面、これは外で歩きながら使う時には音楽のボリュームを下げる必要もありそうです。マイクで外の音を集音して取り込めるヒアスルー機能が欲しいと感じました。少し気の早い話ですが、Beatsの完全ワイヤレスイヤホン第2弾以降にぜひ実現して欲しいです。
リモコン操作が覚えやすい・迷わない
完全ワイヤレスイヤホンが多機能になるほど、本体に搭載するリモコンボタンの操作が複雑化しています。例えば「早送りは左側のボタンを●回」「音量アップは右側を●秒押し込む」といったコマンドを、1台のイヤホンで覚えるだけでも大変なのに、複数のイヤホンを使い回すようになると、特にイヤホンどうしで共通のルールがあるわけではないため、またそれぞれのコマンドを苦労して覚えなければなりません。
Powerbeats Proは左右のイヤホンに同じ形のリモコンボタンが乗っていて、どちら側からでも同じ操作ができます。特に使う頻度が高い、ボリュームのアップ・ダウンが個別のボタンに切り出されて配置されていることが素晴らしいと思います。サイドパネルの「b」ボタンのシングルクリックが音楽の再生・一時停止、ハンズフリー通話の受話・終話になっています。ダブルクリックが早送り、トリプルクリックは早戻し。ボタンの長押しとハンズフリーの呼び出しでSiriが起動します。これだけ覚えておけば、左でも右でも同じ操作ができるので、迷う要素はグンと低くなります。なおAndroidスマホとペアリングした場合もボタンの操作は一緒。長押しで音声アシスタントが起動します。ボタンの感度は鋭すぎず、鈍くもないレベルにほどよくチューニングされているので、誤操作は低く抑えられると思います。
格段に進化した上質な低音。ワークアウトにも最適
音質をチェックするため、iPhone XにペアリングしてApple Musicの曲を再生しながら確かめてみました。一聴してわかるのは厚みとスピード感のバランスがとてもよいこと。そして特に質の高い低音再生。中低域のつながりがとてもスムーズで、音楽再生のグルーヴ感が一味違います。低音の打ち込みが鋭く、音像はふくよかで弾力にも富んでいます。Powerbeats3 wirelessもクールで爽やかな中高域を特徴としていましたが、Powerbeats Proはこれに豊かな低域を加えた感じのサウンドです。広い音場感はそのままに、ボーカルや楽器の定位がますます鮮明になっています。
試聴した楽曲の中では例えばCOMPLEXの名曲「恋をとめないで」がとてもよくハマりました。吉川晃司のパワフルなボーカルが前のめりに張り出してきて、スピード感あふれるベースとドラムスの低音がどっしりと演奏の足場を固めます。布袋寅泰のエレキもハイトーンが炸裂。広々としたステージの様子を堂々と描いてくれました。tofubeatsの「クラシカロイド モーツァルト ムジーク」から冒頭の楽曲「アイネクライネ・夜のムジーク」も星咲花那のボーカルがとてもイキイキとしていて、リアルな存在感を目と鼻の先の距離に感じられます。伸びやかな開放感と繊細なニュアンスの高い表現力に引き込まれることうけあいです。
厚みのあるバンドサウンドがこんもりとダマにならず、ボーカルや楽器の音の定位をビシッと描いてくれるので、例えばほかにも上原ひろみのピアノトリオや、クラシックのオーケストラにも力負けせず、スケールの大きな景色をゆったりと見せてくれます。一方で音調がややドライなので、落ち着いたピアノのソロやアコースティックなバラード系のボーカルを再生すると、もう少ししっとりとした艶っぽい質感も欲しくなりました。
ジムでワークアウトをしながらアップテンポな音楽も聴いてみました。やはりリズムが足元から勢いよく立ち上がるような迫力がたまりません。ボーカルの色鮮やかさも疲れた体を前に突き動かしてくれます。遮音性が高いので、自分が聴いている音楽の世界に深く没入できます。たいへんに頼もしいワークアウトイヤホンだと思います。きっとこれから多くのアスリートに選ばれるでしょう。
カラバリは夏ごろ登場予定
AirPodsの装着感や遮音性に不満があった皆様には、対極の魅力を前面に打ち出してきたBeats初の完全ワイヤレスイヤホンは待ち望んでいた愛機になると思います。発売時はブラックから先行されますが、後に続くアイボリー/モス/ネイビーを合わせた4色のカラバリ展開も予定されています。2019年を代表する強力な完全ワイヤレスイヤホンのメガヒット誕生の予感がしています。