さまざまなシーンで「SmartSound」をテスト
では最初にサウンドの感触を報告します。Apple Musicからいくつかジャンルの異なる楽曲を試聴してみましたが、全体にニュートラルなバランスでクセのないチューニングだと思います。音声コーデックがSBCまでの対応になりますが、物足りなさは感じません。細かな音の粒立ちが鮮明で、ハーモニーにもしっとりとした一体感があります。EDMやアグレッシブなロック、ジャズの楽曲は素の状態だとやや物足りなく感じる楽曲があるかもしれません。そんな時には「Jabra Sound+」アプリのイコライザーを活用することをおすすめします。
5バンド構成のイコライザーの設定はユーザー任意にバランスをマニュアルで変えることができます。パーソナライズした値はアプリに「マイモーメント」として、NC効果やヒアスルーの設定と一緒に残せます。いくつかの「音楽プリセット」も用意されていますが、筆者は特にボーカルの聴きやすさがアップする「音声」を、機内で映画やドラマ、アニメなどスマホに保存した動画コンテンツを楽しむ時に重宝しました。
続いてANC機能であるSmartSound+の効果も様々な場所で試してみました。本機能はドイツのaudEERING社が培ってきた、環境音をリアルタイムに分析するディープラーニングの技術がベースになっています。Elite 85hはヘッドホンに内蔵する合計6個のANC用マイクで環境音を拾い、正確にノイズ成分を検知、打ち消す仕組みを採用しています。
シーンに応じたモード切り替えのスピードと正確さについてはまずまずといった手応えでした。例えば飛行機の中でヘッドホンを起動して音楽再生を始めると、最初はしばらく解析が続き、続いてヒアスルー付きの「パブリック」になってしまいました。続いて2分ぐらいしてから「通勤」にシーンが切り替わるも、通常はオフのヒアスルー機能がオンのまま継続してしまい、機内ノイズが聞こえてしまいました。飛行機や電車による長旅などしばらくはシーン変更が不要な場面であれば、SmartSound+をオフにしてANCを手動でアクティブに、街を歩きながら音楽を聞く時など環境が頻繁に変わる時にはSmartSound+を活用するという使いこなし方がよさそうです。
筆者がよく知るANC搭載ヘッドホンのなかでは、ソニーの「WH-1000XM3」がペアリングしているスマホの加速度センサーで集めた情報と連携しながらユーザーの行動パターンを解析して、ノイズキャンセリングの効果を自動で切り替える「アダプティブサウンドコントロール」という、Jabraと少し似た機能を搭載しています。Elite 85hの場合はスマホのセンサーは使わず、内蔵マイクで集音した音のデータをベースとした解析、オーディオの聴こえ方を最適化する仕組みのようです。ANCの利き方はシーンが変わると劇的に変化する感じはありませんでした。
シーンが切り替わる時にはボイスガイドが「In Public Moment」といった具合に聞こえてきます。ボイスガイドと入れ替わって音楽が消音されるので、没入感が損なわれるのが残念なところ。ソニーの1000Xシリーズもやはりシーンチェンジの時にアラームが鳴るのでふと我に帰ってしまいます。ユーザーが気づかない間にノイズキャンセリング効果がかかってしまうと、移動しながらヘッドホンを使っている時に危険な場合もあり得るため、これを配慮しての仕様なのかもしれません。例えば音を鳴らす代わりに、ヘッドホンにApple Watchのようなハプティクスセンサーを内蔵して、シーンチェンジを振動で知らせるヘッドホンがあっても良いかもしれないですね。まあこれでも驚かされる感覚が嫌という場合もあると思うので、音声ガイドをオフにできる選択肢があるのがベストだと思います。
Elite 85hのANC機能はしっかりとした消音効果が感じられて、そのうえ音楽再生の自然さも損なわないバランス感覚が良いと思います。飛行機に乗りながらアナウンスを聞きたい時には、左側イヤーカップのボタンをクリックするとANCをオフに、またはヒアスルーに切り替えてすぐに反応ができました。欲をいえばクイックヒアスルー的に、ボタンを押している間だけヒアスルーに切り替わる機能もあれば完璧だと思います。