シュア初のハイブリッドドライバー搭載「AONIC 4」
AONIC 4は意外にもシュア初のハイブリッドドライバーを搭載するイヤホンです。BA型と6.8mmのマイラー振動板ダイナミック型ドライバーをそれぞれ1基ずつ載せています。本機の発売後もデュアルBA型ドライバー仕様の「SE425」は販売を継続されるとのこと。
本機の開発秘話は、先述のWeb発表会に登壇したシュア本社のショーン・サリバン氏が話してくれました。
サリバン氏は「BA型とダイナミック型のドライバーは電気特性や力学特性が違うため、ひとつのイヤホンに合わせて搭載することがとても難しいという理由から、シュアではこれまで長くハイブリッド型イヤホンを手がけてこなかったのだ」と前置きをした上で、ある重要な人物の粘り強い頑張りによってAONIC 4がこの世に生み出されたのだと振り返ります。その人物とは、サリバン氏が“ワールドクラス”と称える音響エンジニアのパリー・サンガリス氏です。
サンガリス氏が何度もトライアル&エラーを繰り返した末に、ある日できたプロトタイプを試聴してみたところ、サリバン氏がその日の仕事がまるごと手に付かなくなるぐらい夢中になって聴いてしまうサウンドに到達していたそうです。「素晴らしいプロトタイプができて、よしこれで行こう!と一同奮起したことでAONIC 4が完成した」といいます。
AONIC 4はSE425と比べて本体のシェルが丸みを帯びたラグビーボールのような形をしています。フィット感の好みは人それぞれだとしても、ハイブリッドドライバーを搭載するイヤホンにしては本体が小さく軽いことが大きなメリットでしょう。初めてシュアのイヤホンを使う音楽ファンも抵抗なく身に付けられそうです。シェルの外側のパーツが半透明になっていて、内部のパーツが透けて見えるデザインもマニア心をくすぐります。
サウンドは艶っぽいディティールの再現力に富んでいます。微小な音がクリアで粒立ちよく、空気が澄み渡った音響空間がイメージできるほど。中低域は熱量たっぷり。長年シュアのハイブリッド型イヤホンを待ちわびたファンは、この完熟ぶりに熱狂すると思います。
中高域の見晴らしが良く、広大なサウンドステージが描かれます。AONIC 3のタイトな力強さに対して、AONIC 4はしなやかで緻密、透明かつ繊細。ジャズのピアノトリオではピアニストの指先を繊細に描きながら、軽快なタッチのメロディを広々とした空間に響き渡らせます。ドラムスのクラッシュやハイハットのシルキーな高音域の余韻が演奏空間をゆっくりと満たしていきます。
ジャズのビッグバンドは管楽器の高音がとても煌びやか。エレキギターのコードカッティングが小気味よくジャキジャキっと刻まれます。ボーカルはミントのように爽やかな余韻を残しながら耳元を駆け抜けます。