シグマは、カメラをかじっている人ならレンズ専業メーカーというイメージがあるかもしれないが、実はフィルム時代からカメラ本体も開発している、れっきとしたカメラメーカーだ。
シグマのデジタルカメラ第1号は、2002年発売のレンズ交換式デジタル一眼レフ「SD9」。その後「SD10」「SD14」「SD15」「SD1」「SD1 Merrill」と発売された。最新機種は、同社初のミラーレス一眼となる「sd Quattro」。2016年7月7日に発売されたばかりだ。
また、レンズ交換式とは別に、コンパクトデジカメ「DP」シリーズも開発している。1号機は2008年発売の「DP1」。APS-CサイズのCMOSセンサーに28mm相当のレンズを搭載。その後、45mm相当のレンズを搭載した「DP2」シリーズ、75mm相当のレンズを搭載した「DP3」シリーズなどを発売している。
同社のデジカメの最大の特徴は撮像素子だ。他社が採用するベイヤー式センサーとはまったく異なった仕組みの「Foveon X3」というAPS-CサイズのCMOSが採用されている。このFoveon X3は、三層に積層した感色層により、光の三原色(R・G・B)を1画素で捉えることができる。このため、通常のCMOSに比べ解像感が高く、リアルな色を再現する。詳しい情報は、同社のサイトで公開しているので、興味のある方はぜひチェックして頂きたい。
今回紹介する「dp Quattro」シリーズは、最新の「Foveon X3 Quattro」センサーを搭載。さらに色再現性を高めている。このDP Quattroシリーズは全4機種。レンズの違いによって、21mm相当の「dp0 Quattro」、28mm相当の「dp1 Quattro」、45mm相当の「dp2 Quattro」、75mm相当の「dp3 Quattro」をラインナップしている。レンズスペック以外はほぼ共通の仕様で、解像度はいずれも約2900万画素となっている。
個性と実用性を兼ね備えたオリジナリティあふれるデザイン
それでは、シリーズをひとつずつ見ていこう。4台は同じように見えて、レンズの長さや重量などが異なっている。
背面液晶は約92万ドットの3型TFT液晶。タッチ操作には非対応。ボタン類は右側に集まっている。グリップ部が湾曲しており右手で持ちやすくなっているため、ほとんどの操作は右手で行える。グリップ部が大きいのでホールディングがしやすい。
上部にはダイヤルが2つとシャッターボタン、電源ボタンが配置されている。前後のダイヤルで絞りやシャッタースピード、露出の補正が素早く行える。
他のコンパクトデジカメに比べると右手側が大きい独特なデザインだが、これが意外と持ちやすい。個性と実用性を兼ね備えたデザインだ。
画角の違いをチェック
続いて4機種の画角&画質を比較してみよう。 最初は、三脚を使って同じ位置から風景を撮影してみた。画角の違いで、切り取れる範囲がどのくらい違うのかに注目して頂きたい。また、画像をクリックすると拡大表示することが可能なので、Dpシリーズの素晴らしい解像度も見てほしい。なお、画像はすべてJPEG記録の撮って出しとなっている。
dp0 Quattro
21mmという超広角ながら、レンズの歪みはあまり感じられない。解像感も高く遠くの木々や、自転車で通りかかった人までしっかりと写っている。これがFoveon X3の解像感の高さだ。
dp1 Quattro
28mmでも相当広角なはずだが、21mmと比較すると割と普通に感じてしまう。若干ホワイトバランスが暖色寄りか。解像感はdp0 Quattroとほぼ同じだ。
dp2 Quattro
45mm相当の標準域。使いやすい焦点距離だ。暗部が入り込んでいないため、全体的にクリアな印象。
dp3 Quattro
中望遠の75mm相当になると、かなりメインの被写体である風車が大きく写る。ホワイトバランスがかなり暖色寄りになっている。拡大するとわかるが、風車の後ろにある電線もしっかりと解像されている。
レンズによって異なる色乗り
次は、人物を被写体にして比較。人物がなるべく同じ大きさになるように撮影した。背景のぼけ具合などを見てみよう。
dp0 Quattro
超広角のため、背景に空が多く写り込んでいるためか、ややコントラストが低い。色乗りもあっさり目だ。また、背景もあまりぼけない。F値を揃えたつもりが、この機種だけF4.5になってしまった。
dp1 Quattro
dp0 Quattroに比べると色乗りが濃い。ややコントラストも高くなっている。同じFoveon X3センサーだが、レンズによりかなり色味が違う。28mm相当では、やはりぼけはあまり期待できない。
dp2 Quattro
色乗りは一番ナチュラル。標準域の45mm相当になると、背景がぼけて被写体が浮き上がるような描写ができるようになる。
dp3 Quattro
さすがに中望遠になると、背景のぼけが大きくなり被写体との差が大きくなる。ポートレートなどで威力を発揮するだろう。色味はあっさり目だ。
以上の比較から、同じFoveon X3センサーを搭載したdp Quattroシリーズでも、機種によりかなり色味が違うことがわかる。
ホワイトバランスでは、dp3>dp1>dp2>dp0の順で暖色が強くなる傾向のようだ。また、色乗りでは、dp1>dp2>dp3>dp0という感じだろう。
dp Quattroシリーズは、焦点距離による使い分けのほか、色味なども加味して使うシーンで選ぶほうがよさそうだ。
後編では、それぞれの作例と、RAW現像について解説していこう。
モデル:渡辺成美(シェリーズ・エンタテインメント)
【URL】