昨年末、思わず購入してしまったデジタル一眼カメラ「LEICA Q2 Reporter」が、ようやく我が家に到着した。オリジナルモデルは「LEICA M11」を思わせるクラシックスタイルだが、「LEICA Q2 Reporter」は、深みのあるオリーブグリーン、あるいはよもぎ色で、光が当たるとかなり明るく見える。ボディの底面以外この色で塗装されており、張り革にはケブラーが使われるため、近未来的な印象を受ける。このカメラを見て、すぐにライカだと気付く人は少ないだろう。
気分を盛り上げてくれるパッケージ
ライカのカメラはミニマルデザインが特徴だが、その思想はパッケージにも活かされている。製品の外箱はシルバーで内側はブラック、これはどのモデルも共通だ。「LEICA Q2 Reporter」の箱は3ピース構成でカメラ、付属品、書類に分かれていた。付属品は個別にLeicaのネームが入った袋に収められ高級感に溢れている。さらに製品番号が記載された保証書には、製品担当者の自筆サインがあり、マスプロダクツではなく手作り感が伝わってくる。これでカメラ開封前から気分が盛り上がる。
ズミルックスレンズがAF、マクロ、手ぶれ補正で使える
「LEICA Q2」はライカのデジカメのなかでは実用性が高く、操作性にも優れている。まず、レンジファインダーでなくEVFを内蔵したミラーレスであり、AFと手ぶれ補正機能付きの「LEICA SUMMILUX f1.7/28 mm ASPH.」が使えるのだ。ズミルックスMレンズは開放絞り値F1.4と明るいが、MFで最短撮影距離は70cmまで。Mシステムのレンジファインダーの距離計連動範囲が70cmなので、ライカMレンズは最短撮影距離70cmがデフォルトだったが、最近、デジタル化されライブビューが使えるため30cmまで寄れるレンズが加わった。
それに比べても「LEICA Q2」のズミルックスはマクロ切り替えで最短17cmまで寄れる。マクロへの切り替えは専用リングを回すのだが、この感触がいい。リングの回転によりmとフィートの距離指標が切り替わるギミックもよく出来ている。マクロ撮影時は開放絞り値F2.8になる。少し離れてF1.7で撮るか、マクロで寄ってF2.8を選ぶか、悩み所である。
単焦点レンズだが、4種類の焦点距離が選べる
さらにMシステムのライカはレンジファインダーを活かすため、ズームレンズが使えない。「LEICA Q2」はズームレンズ搭載可能だが、レンズの性能を追求した結果、単焦点レンズを採用したと思われる。その代わりにクロップ機能を使って、35mm、50mm、75mm相当で画像をトリミングできる。EVFとライブビューに白いフレームが表示され、この枠内が撮影される仕組みだ。本機は4730万画素もあるので、35mmで約3000万画素、50mmでも約1500万画素と充分な記録画素数がある。RAWで保存すればフル画素のまま記録される。
これでレンズ4本分の画角が得られるため、単焦点レンズながら使い勝手はかなり向上する。実際に使ってみると、28mmでは広すぎる被写体をトリミングできるため、35mmと50mmを選択する機会が多かった。撮影後にPCのモニター上でトリミングしても結果は同じなのだが、撮影時に構図を決められる方が気分良く撮影できる。
肉眼を超える高解像度4730万画素が捉えた世界
最近、ライカが打ち出しているのがセンサーの高画素化である。「LEICA Q」は2400万画素だったのに対して「LEICA Q2」は4730万画素を採用。Mシステムの最新モデル「LEICA M11」も6000万画素と、国産メーカーもビックリの高画素を実現した。もともとライカレンズはポテンシャルが高く、画素数を上げても心配はないが、ここまで高画素化する必要はあるのだろうか。
プロ用一眼レフであれば、クライアントの要求で高画素が必要なこともあるかもしれないが、一般的なフルサイズミラーレスなら、2400万画素もあれば充分だろう。画素数が多ければトリミング耐性が上がり、大判プリントもできるが、高感度でノイズが出やすくなり、ブレにもシビアになる。保存データサイズも大きくなり、連写も不利になる。メリットもデメリットもあるが、カメラ業界全体としては高画素化に向かっている。
「LEICA Q2 Reporter」は高画質に適したフルサイズセンサー、AFの高性能レンズ、手ぶれ補正機能を搭載して、そのメリットを甘受しやすいカメラに仕上がっている。ビシッとピントが決まれば、撮影時に気付かなかったモノまでしっかり記録されている。PC上の画像を拡大するのが楽しくなる写真が撮れるカメラなのだ。
【作例】(クリックすると拡大されます)
スマホとの連携にも強く、エージングも楽しめる
「LEICA Q2 Reporter」を肩から下げて歩けば、普段歩き慣れている道でも新たな被写体に出会えるような気がする。ぶらぶら歩きでも撮影が楽しくなるカメラである。カメラとしての魅力もあるので机の上に置いて眺めているだけでもいい。これをさらに進めるとシャッター音にまでこだわったMシステムのライカに進むに違いない。レンジファインダーとMFの組み合わせに交換レンズ沼、しかし、今はまだ本機を味わい尽くしたいと思う。
撮影した写真はスマホに転送して、すぐにSNSにアップできる。そのための専用アプリが「Leica FOTOS」である。Wi-Fiに加えてBluetoothでの常時接続にも対応。撮影した画像をリサイズして転送したり、スマホからのリモート撮影もできる。伝統的なだけでなく、きちんとスマホと連携してくれる所が素晴らしい。
さらに「LEICA Q2 Reporter」は使っているうちにケブラーが紫外線によりボディカラーのダークグリーンに近い色合いに変化するという。これなどはブラックペイントのライカの塗装がはがれて真鍮の地金が見えてくる趣に近い演出といえる。次々と新製品が登場するデジカメを長く愛用しようと思わせてくれる。
世界中のライカの使い手と競う
「LEICA Q2 Reporter」購入をきっかけにLFI Galleryに参加した。LFIとはLEICA PHOTOGRAFIE INTERNATIONALの略称で、ライカで撮影した写真を投稿、プロの編集者が審査して、審査を通過した写真だけが世界に向けて公開されるWebギャラリーである。メールアドレスの登録で誰でも無料で参加でき、自分だけのアルバムボックスが与えられる。早速、ライカで撮影した東京のスナップをアップロードしたのだが、残念ながら掲載のメッセージは未だ届かない。
ここには世界中のライカで撮られた傑作が毎日、アップロードされ説明文と撮影データが掲載されるため参考になるし、写真を撮ろうというモチベーションも上がってくる。こうして私はライカの世界に足を踏み入れたのだ。
【フォトギャラリー(画像をタップするとご覧いただけます)】