本・書籍
2017/3/30 10:30

羽根付き派? 薄皮派? ときどき無性に食べたくなる「たい焼き」の世界へようこそ

そんなにいつも食べるというものでもないが、なんとなく食べたくなるときがあるのが「たい焼き」だ。僕はもともと甘いものが好き。特にあんこ系のものが好きなので、年に数回、あんみつやたい焼きといったものが無性に食べたくなることがある。

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僕のたい焼きの思い出

僕自身、たい焼きにそれほど思い入れがあるわけではない。一番思い出に残っているのが、編集プロダクションにいた20年くらい前のこと。よく仕事をお願いしていたカメラマンの方が、事務所に来るときにたい焼きを買ってきてくれた。

 

そのたい焼きは、四谷の「わかば」のもの。有名店ということで、ありがたがって食べていた記憶があるが、ほかのたい焼きと比べてどうこう言えるほど、たい焼きをいろいろ食べているわけではないので、「おいしいなー」と思って食べていた程度だ。

 

 

わかばのたい焼きは「静かなる巨人」

以前はショッピングセンターのフードコートなどで見かけるくらいだったが、今は繁華街などにたい焼き専門店があるのをよく見かける。

 

気が向いたときに買って食べることがあるのだが、やはり「おいしいなー」と思うくらいで、厳密に味の分析をしたりはしない。僕にとって、たい焼きはそういう食べ物なのだろう。見た目もほぼ一緒だし、皮にあんこという組み合わせも一緒。基本、どのたい焼きを食べてもおいしい。

 

しかし、『東京のたい焼き ほぼ百匹手帖』(イワイサトシ・著/リットーミュージック・刊)を読むと、たい焼きにもそれぞれバリエーションがあることがわかる。

 

皮の厚さや食感、あんこの甘さや量、羽根付きのもの。たい焼きの顔も、よく見るとちょっとずつ違う気がする。

 

わかば」ももちろん掲載されている。「東京たい焼き界の静かなる巨人」というキャッチコピーがついている。

 

‘‘焼き立てを手に取れば薄く柔らかく伸ばしたアラレのような皮がググッと香ってくる。この皮の美味さが故にたい焼きにハマったという者は多い。しっかりとしたコシがありモチモチとした食感も楽しい。餡子は当然隅々まで行き渡ってズッシリと重く、手に馴染む。‘‘
(『東京のたい焼き ほぼ百匹手帖』より引用)

 

「わかば」が有名店ということは知っているが、何で人気があるのかは僕はよくわからなかった。しかし、この文章を読むと、なんとなく名店と言われている理由がわかるような気がする。

 

確かに、手に取ったときにちょっとはかなさみたいなものを感じた。皮が薄いのだ。それなのに、妙に口の中で存在感があった。なるほど。

 

 

羽根付きたい焼きは、パリパリ感が特徴

もう一件、食べて覚えているのが、神保町の「たいやき神田達磨」だ。仕事をしていた出版社の近くにあったので、買ってみたのだ。ここはチェーン店で、都内に数店あるのを見かけたことがある。羽根付きのたい焼きが珍しかった頃に、食べてみた。

 

羽根付きなので、普通のたい焼きよりも皮の部分が多くてお得な気分。羽根の部分はパリパリしていて、たい焼き部分はしっとりなので、2つの食感が楽しめるなと思ったのを覚えている。

 

本書には以下のように書かれている。

 

‘‘長方形でしっかり焼かれた羽根は鯛のレリーフの趣。ガブリと齧れば歯ごたえはパリパリと景気が良い。(中略)そして中の粒餡も徹底した「たいやき神田達磨」の仕事ぶりが光る。比較的淡い色合いの上品な舌触りの粒餡は柔らかくホクホクで、お見事の一言。‘‘
(『東京のたい焼き ほぼ百匹手帖』より引用)

 

見た目だけではなく、食感や味にもこだわっていることが伺える。「羽根付きたい焼き、珍しいなー」という軽い気持ちで買って食べていた自分が少し恥ずかしく感じる。

 

 

もしかしたらたい焼きの世界にハマるかも?

手軽に食べられるたい焼き。しかし、最近はあまり買って食べるということがない。嫌いなわけではないのだが、わざわざたい焼きを買おうという気持ちにならないのだ。

 

しかし本書を読むと、たい焼きそれぞれに特徴があり、味わいも違うようだ。ただ鯛の形をしているだけじゃない。

 

僕がよく行く上野の居酒屋の近くにも「たいやき神田達磨」がある。いつも人だかりがしているが、「並んでまで食べるのはなー」と素通りしていた。

 

今度行ったときには、ぜひ買ってみようと思う。庶民的でありながら、とても奥が深いたい焼きの世界を、少し覗いてみよう。

 

 

(文:三浦一紀)

 

【参考文献】

0329_FM12
東京のたい焼き ほぼ百匹手帖

著者:イワイサトシ

出版社:リットーミュージック

どれも甘くて美味しい! 東京のたい焼き約100匹がこの1冊に! 誰もが一度は食べたことがあるたい焼き。その素朴な魅力に惹かれ、街角でたい焼き店を見つけるとついおやつとして食べてしまう――そんな人も多いはずです。この“和スイーツの代表の代表”として、日本人に愛されるたい焼き。本書は2年をかけて東京中のたい焼き店を回り、約2000匹(!)を食べた著者による“東京たい焼き店ガイド”になります。紹介しているその数はタイトルのとおりほぼ100店!(※実際は102店です) 各店のたい焼きの魚影はもちろん、著者が感じた食レポや店の雰囲気なども紹介されており、各店の個性や特徴を感じ取れるはずです。

 

 

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