本・書籍
2017/6/17 18:00

レジェンドはやっぱりすごい! 山本昌が教えるピッチングのイロハ

『梶本隆夫物語』という本を書いたことがある。伝説の野球選手・梶本隆夫と、同じく野球選手だった弟・梶本靖郎の物語だ。

 

インタビューを始めた時、梶本さんは肺癌で闘病中だった。余命いくばくもないと知ってか知らずか、「なんでも聞いてください」とおっしゃり、車椅子でインタビューに応じてくださった。

 

最初は「野球のこと知らないし、私にできるのだろうか」と、不安でいっぱいだったが、すぐに「大丈夫、きっと書ける」と、思うようになった。梶本兄弟は大変に頭がよく、野球に詳しくない私でも理解できるよう、工夫しながら話をしてくれるからだ。

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レジェンドは頭が良い

本が出来上がるのを待たず、梶本隆夫さんは亡くなったけれど、弟さんは「大丈夫。アニキはどんな本になるのかわかっていたはず」と、励ましてくださった。取材のために、何人かのプロ野球選手にお話をうかがう機会を得たけれど、その度に思うことがあった。それは野球選手は驚くほど繊細で、頭が良いということだった。

 

それまでは、どちらかといえば、彼らは肉体派で、頭で考えるより先に、体が動く人たちだと勝手に思い込んでいた。ところが、私がお会いした野球選手は、皆さん、こちらの質問を瞬時に理解して、心をこめて答えてくださるのだ。その態度に私は魅了された。とりわけ、レジェンドと呼ばれるような選手は、脳の瞬発力というべきすごみのある反応を見せた。おそろしく頭がいいのだ。

 

投手・山本昌が教えるピッチング

ピッチングマニア』(山本昌・著/学研プラス・刊)は、伝説の投手・山本昌が、自らの経験の中から導き出した考えや取り組み、そして、その技法について、こと細かに、しかし、優しく丁寧に教えてくれる本である。

 

山本昌といったら、あえて解説する必要もないほどの大投手であり、50歳まで現役として投げ続けたレジェンド中のレジェンドだ。生涯で勝ちとった勝利の数は219、41歳でノーヒットノーランを達成するなど、輝かしい成績を残している。その彼が書いた本である。手に取ったとき、私は緊張してしまった。人生に対する真摯な態度が、熱く、厳しく、開帳されているに違いないと思ったからだ。

 

ところが……。『ピッチングマニア』は、タイトル通り、真っ向勝負でピッチングについて分析する本だった。レジェンド・山本昌がこれまでやってきたすべてを惜しみなく、教えてくれる。ピッチングコーチが選手を育成するために書いた門外不出の指南書のようだ。

 

自らがモデルになって示すピッチング

写真も多数、掲載されているが、驚くのは、そのどれもに山本昌自身が自らモデルとなって、手本を示していることだ。ボールの握り方も、ピッチングフォームを説明するときも、人まかせにすることなく、自分でボールを握り、その見事な体を使い、私たちの目に焼き付くような姿をさらしてくれる。

 

186センチ、87キロの体である。他の人は代わりたくても代われないかもしれない。それに、おそらく山本投手は、何事もできることは自分でしたいと思うほうなのだろう。投げる様を映し出した写真を眺めていると、「他の人にまかせるわけにはいかない」といった意地と誇りが満ちている。

 

山本昌ファンはもちろんのこと、野球が好きな人、子供が少年野球で頑張っているお母さん、いや、野球などほとんど見たことがないという方でさえ、『ピッチングマニア』からにじみ出てくる本気に涙が出るに違いない。

 

山本昌が語るプロ野球選手たち

ご自分が必死でやってきただけに、他の選手に対する批評にも見るべきものがある。山本昌でなければ言えないような率直さで、名選手に言葉を投げかける。それはたとえば、日本ハムの大谷翔平、中日の岩瀬仁紀、ヤンキースの田中将大、レンジャーズのダルビッシュ有など、綺羅星のようなスター選手に向けて語られる先輩からの暖かい、しかし、冷静なまなざし。

 

さらに、ヤクルトの山田哲人、巨人の阿部慎之助、マーリンズのイチローなど、これまた珠玉のバッターにささげられたピッチャーとしての思い……。50歳まで現役を続けた彼だからこそ語ることのできる秘密が披露されている魔法の本だ。

 

もし、山本昌に会えたなら

もし、山本昌さんにお会いすることができたら、真っ先に聞きたいのは、故アイク・生原さんへの思いだ。アイクさんは、アメリカ留学中にピッチングの基本をコーチした方だ。

 

ピンチのときはどうやってそれをチャンスに変えるかについても、真心をこめて教えてくれたに違いない。野球が大好きな青年を「マニア」の名にふさわしい大選手に導いたのは、カリフォルニアの青い空とアイク・生原さんだったのではないかと、私は勝手に想像している。

 

一度しかない人生。できることなら、好きなことを徹底的に究めて生きていきたい。『ピッチングマニア』を読んで、改めてそう思った。人生の職人にきっとなれると信じて、生きていきたいと思う。

 

(文・三浦暁子)

 

【参考文献】

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ピッチングマニア

著者:山本昌

出版社:学研プラス

50歳まで現役で投げ続けた野球界のレジェンド・山本昌が初めて公開する、こだわり投球術と野球論。ピッチングのあらゆる点の技術、考えを惜しみなく明かし、投手目線から、投手、捕手、バッター、監督を語る、プレーヤー&ファン必読の一冊。

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