本・書籍
2015/3/5 0:00

あの有名ハンバーガーショップに行くのがこわいです

人と接するのが苦手だ。会話も得意ではない。毎日、生きづらさを感じている。

 
今日もイヤなことがあった。某ファストフード店に行って「昼マックください」と注文したつもりなのに「ビッグマックでよろしいですか?」と聞き返されてしまった。

 

……ほくそ笑んでいた気がする。あの店員め、バカにしやがって。残酷な世界。もうだめだ。生きるのがツラい。だから人と話すのはイヤなんだ。最近、髪がうすくなってきた。もう誰も愛せない。

 

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店員さん恐怖症

 

こわい。注文するとき、いまだに店員さんの目をまともに見られない。何十回も通っているというのに。

 

でも、昼マックが食べたい。昼マックのチーズバーガーセット(350円)に60円足せばドリンクとポテトをLサイズにしてもらえる。たった410円でお腹いっぱいになれる。だけど、また今日みたいに不快なやりとりがあったら――イヤな思いは二度としたくない。

 

こまった。私のワンダフルライフに昼マックは欠かせないのだ。あのフライドポテトを食べないとヤル気が起きない。だから、某ファストフード店に行くのをやめるという選択肢はありえない。でも、店員さんと面と向かって話すのが怖いよぉ、ふぇぇ……。

 

 

コミュ障は克服できる?

 

「コミュニケーションはゲームである」

 

『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』という本に書いてあった。コミュニケーションが苦手な人(コミュ障)のための指南本らしい。昼マックの参考になるかもしれないと思って読んでみた。

 

うーん。「コミュニケーションはゲームである」って書いてくれちゃってるけど――そう簡単には同意できない。なぜなら、私にとって他人と接したり会話することは「なるべく避けたいこと」であるからだ。ゲームは「楽しい」ものだが、他人とのコミュニケーションには苦痛がともなう。すくなくとも私の場合は。

 

 

著者は「しゃべり」のプロ

 

『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』の著者である吉田尚記さんの職業は「ニッポン放送アナウンサー」――ラジオでしゃべる人だ。

 

ラジオ番組は、テレビよりも出演者が少ない。たとえば、メインパーソナリティーとアナウンサーの2人だけで進行するとか当たりまえ。誰とでもうまくコミュニケーションできないと雑談がつづかない。

 

ラジオ番組において「長すぎる沈黙」は好ましくないとされている。無音状態が何秒間もつづいてしまったら放送事故になってしまうと聞いたことがある。つまり、ラジオアナウンサーは言葉に詰まったり沈黙することが許されない。誰とでも雑談をつづけられること――コミュニケーション能力が必須スキルなのだ。

 

なるほど。すこしは参考になるかもしれない。では、見せてもらおうか。ニッポン放送アナウンサーのコミュニケーション術とやらを! 私のコミュ障は53万です。

 

 

コミュニケーションは命を助ける

 

「コミュ障の克服」といっても、急に社交的になる必要はない。いちばん原始的なコミュニケーションは「ヘルプ・ミー(助けてください)」を相手に伝えることだ。それができれば、人はつまらないことで死なずにすむ。

 

だから、コミュニケーションを学ぶことは「命を助ける」

 

そもそもコミュニケーションとは、敵味方に分かれた「対戦型のゲームではない」。参加者全員による「協力プレー」だと、吉田さんは述べている。

 

コミュニケーション・ゲームは、相手を言い負かすとか、自分だけが気持ちよくなることを求めません。相手が気持ちよくなれば、自分も気持ちよくなる。相手が楽なら自分も楽だという一蓮托生のゲームなんですね。
(『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』から引用)

 

この本を読むまでは、コミュニケーションって「相手よりも優位に立つこと」だと思っていた。でも、違った。相手よりイケメンでなくても、相手よりお金を持っていなくても、相手より物知りでなくても――お近づきになりたい人と仲良くなる方法はいくらでもあるのだ。

 

私は心身ともに弱っちい人間だが、コミュ障を克服したいからといって無理に「強くなる」必要はないことを知った。本書を読みすすめていくほど、コミュニケーションに感じていた「恐れ」が減っていく。

 

 

究極の雑談テクニック

 

吉田アナウンサー直伝の数あるテクニックのうち、どれか1つだけ紹介するとしたら――

 

人は間違った情報を訂正するときにいちばんしゃべる
(『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』から引用)

 

これがオススメだ。実感しやすい「コミュニケーションの法則」であり、雑談をつづけたいときに、あまり不自然ではない感じで使えそう。

 

たとえば、初対面の女性と打ち解けていく過程において「ハーフっぽいですね?」とたずねるのは「有効」なのだろうか? ローラやベッキーなどが一定の支持を得ているご時世だから、さほど不快にはさせないと思うのだけど……※ただしイケメンに限る、なのかな?いずれにしても、人生当たって砕けろだ!

 

よ~し! ニッポン放送の大人気アナウンサー直伝のテクニック、今日さっそく試しちゃうぞ。「昼マックのライスバーガーセットください!」って言えば、ツカミはOKだ。レッツゴー! レッツゴー!

 

(文:忌川タツヤ)

 

【文献紹介】

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なぜ、この人と話をすると楽になるのか
著者:吉田尚記(著)
出版社:太田出版

相手を楽にさせる会話力! ニッポン放送の大人気アナは、些細な会話すらままならないコミュ障だった! そんな彼が20年かけて編み出した実践的な会話の技術を惜しみなく披露。 話すことが苦手なすべての人を救済する、コミュニケーションの極意! !

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