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2016/4/28 0:00

家事こそが脳を鍛える秘技だったのか!

テレビをぼーーーっと見ていたら、筋トレと食事療法によって、見違えるようにムキムキの体に変身した人が「どう?見てよ!!」と言わんばかりの顔で微笑むCMが流れていた。
うつむき加減の姿勢にむくんだ暗い顔が、ギリシャ彫刻のような美しさに変わっている。

 

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「おーーーーー!!お腹が割れてる~~」と、驚愕しつつ、私がまず最初に鍛えるべきなのは、肉体よりも脳ミソだと、思った。
腹もたるんでいるが、脳はもっとたるんでいるからだ。

 

 

物忘れに怯える日々

 

最近、物忘れがひどい。
書斎でパソコンにむかって原稿を書いていて、「あ、そうだ!」と、何かを思い出し、台所に向かったまではいいが、流しの前で呟いている。「えーと。何だっけ。何しに来たんだっけ。ま、いいか」
そして、書斎に戻り、座った途端に思い出す。夕飯に使う肉を冷蔵庫から出しておこうと思ったのだ、と。
で、仕方なく、また台所へ向かう。
「肉よ、肉」と、自分に言い聞かせながら・・。

 

 

人の名前が出てこない

 

もっとも、物忘れは今に始まったことではない。
電車の中で、ある俳優の名前が思い出せず、友達と呻吟絶句したことがあったっけ。
「ほら、あのさ、オーストラリアの俳優で」
「ああ、えーーと、メグ・ライアンと恋愛したとかいう」
「そうそう、顔は思い浮かぶんだけど」
「なんだっけ、ほら、数学者の役とかした」
「したっけ?もっとマッチョな人だよ」
「したよ、数学の天才の役、ほら、なんだっけ?」
と、延々、思い出そうとして、結局、果たせず、家に帰って、ようやく思い出した。
その名はラッセル・クロウ。好きな俳優だというのに。
まったくもって、トシはとりたくないものだ。

 

 

ああ、悩ましいラッセル・クロウ

 

何とかしなくちゃと、サプリメントなど飲んではみるものの、あまり効果がないような気がする。
その証拠に、先日も電車の中で、再びラッセル・クロウの名前を忘れて、身もだえた。
そして、結局、我慢できずに、iPadで調べ、「ああ、そうか!!」と、思ったものの、帰宅すると早くもその名を思い出せない。
トシだからなのか?
脳がたるんでるのか?
もう「ま、いいか」と言ってる場合じゃない。

 

 

脳を鍛えるためには何をすべきか

 

かといって、どうやって、脳を鍛えたらいいのだろう。
脳にダンベル担がせるわけにもいかないし。
そもそも私は出不精で、家にばかりいる。新しい刺激に欠ける毎日だ。
原稿と家事をしていると、買い物と家族の病院がよい以外は外出する必要もなく、一日があっという間に終わる。
「まずいな~~、でも、仕方ないしな~~」と、一人でぼやいていたのだが、救世主のような『家事で脳トレ65』(加藤俊徳・著/主婦の友社・刊)を見つけ、大丈夫かもしれないと、喜んでいるところだ。

 

 

症状別に家事に工夫を

 

著者・加藤俊徳は、医学博士で、「脳の学校」の代表もつとめている脳の専門家だ。その彼が、年齢に関係なく、家事の仕方を工夫するだけで、脳をトレーニングすることが可能だというのだから、心強い。
自覚する症状別にやるべき家事があり、具体的な方法も示されている。
3歩あるくと忘れたり、人の名前が出てこなくなった人に最適だというから、まさに私のことだ。 試さないではいられない。
たとえば、もし、旅行の計画がめんどうになったと自覚したなら、それは脳の中の思考系回路が衰えている可能性が高いのだそうだ。そういう人は、財布を開けない日を作るといいらしい。自分に制限を与えることが、脳トレにつながる。
また、食べ物をこぼすことが増えたら、運動系の衰えを疑われるので、すべてを洗濯機まかせにせず、手を使って洗濯をすると運動系の脳が鍛えられるという。
さらに、目の前のものを「ない!」と探すようになったら、視覚系に問題がある。ほうきで掃除をすることによって改善できる、等々。
人の名前が出てこなくなったら(個人的には、私はこの症状がひどい)、記憶系を鍛えるため、野菜や花を育てるのがいいという。
時間の流れを意識して、成長を見守り、記憶力をアップさせることができるからだ。

 

 

ポジティブ家事、3つの原則

 

興味深いのは、ベテランの主婦になり、目をつぶってでもできるなどと言い出したら、注意が必要だということだ。
家事をやっていればそれでいいというわけではなく、家事には「脳をボケさせる家事とイキイキさせる家事がある」のだ。

 

ボケない脳を作る3大ポジティブ家事は以下の3つ。
1.変える
2.楽しくやる
3.ひと手間かける

(『家事で脳トレ』より引用)

 

 

ぼけるための家事をしてたかも・・・

 

私には冷や汗が出る指摘である。
結婚して既に36年。以来、一応、ずっと家事をしてきた。新婚の頃に比べたら、驚くべきスピードで家事をこなせるようになった。
最近ではたいして忙しくもないくせに、「忙しい、忙しい」と言っては手抜きばかり。
毎日、同じ事をなるべく簡単に繰り返すをモットーとしてきた。昨日と同じことを今日する方が楽だからだ。

1.なるべく同じ事をする。
2.しょうがないからする。
3.簡単にすることばかり考える。
これが最近の私の姿だ。

まさに「ぼけるための家事」になってしまっている。

 

 

吉沢久子に学ぶぼけない脳の作り方

 

著者は97才になる生活評論家の吉沢久子さんの家事の仕方を紹介し、脳の検査も行って、「脱・自動化」家事の必要性を説いている。
吉沢流で脳トレ家事を続ければ、90代になっても脳が成長する。
さらには、会話を楽しむ能力も大切で、無用な昔話は脳を衰えさせるという。
フムフム、なるほど。
確かにそうだ。
周囲を見回しても、過去の事ばかり繰り返し話す人は、次第に怒りっぽくなり、惚けていっているように思う。

 

 

早くも効き目を実感!!

 

私も家事が私の脳を育ててくれると信じ、嫌々ではなく、なるべく楽しく、やるようにしようと決心した。
食事も同じものばかり作らず、面倒くさくても、失敗してもいいから、新しいメニューに挑戦するようにこころがけよう。
家にこもってばかりいないで、たまには新しい食器を見たり、電気屋さんに行き、新製品を眺めたりしなくては。
そう思って、実践してみた。
すると、不思議なことが起きた。
36年も住み続けた部屋がほんの少し違って見えるのだ。
家事も新鮮な思いで取り組むようになった。
そのおかげか、ラッセル・クロウの名前もスラスラ出てくる。
もしかしたら、脳トレ、進んでいるのかもしれない。
だとしたら、嬉しい。とても嬉しい。

 

 

(三浦暁子)

 

 
【文献紹介】

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家事で脳トレ65
著者:加藤俊徳
出版社:主婦の友社

本書はこんな人に読んでほしい!「顔は思い浮かぶのに、人の名前が出てこなくなった」「3歩あるいたら、何をしようとしていたのか忘れた」。脳番地別トレーニング法で、脳トレ界に旋風を巻き起こした脳科学者、加藤俊徳。毎日しなければならない家事、それによってボケ防止の脳トレができれば、わざわざ脳トレをしなくても一挙両得。料理、掃除、洗濯等の作業は、脳のさまざまなエリアをネットワークでつなぎ、衰えない脳を作る。日常のさまざまな家事シーンで脳を鍛える具体的トレーニング法65を伝授。97歳の現役生活評論家、吉沢久子さんの「脳を衰えさせない家事習慣8」も収録

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