日本の社会では、自分を成長させるためにがんばること、勤勉であること、努力することが美徳とされます。「がんばれ!」と叫ぶ熱血某元テニスプレイヤーのカレンダーが、ベストセラーになっています。サラリーマンは、休みの日には英会話教室に通うなどして、スキルアップをはかることにも余念がありません。
がんばらないほうが成長できる!
もちろん、気合いを入れて何かをがんばるのは素晴らしいことです。その一方で、日本人はがんばりすぎといわれます。がんばらないと認めてもらえない、結果を残さなければいけないというプレッシャーと戦い、疲れ果ててしまっている人も少なくないのではないでしょうか。
一般的に、自分を成長させることは、すなわち「何かができるようになる」「何かの能力が身に付く」「できることが増える」ことであると思われがちです。そんな発想に一石を投じるのが、『がんばらない成長論』(心屋仁之助・著/学研プラス・刊)です。
自分は十分足りている!
著者は、敢えて“成長する必要はない”と考えることが、あなたを成長へと導くと言います。例えば、仕事で失敗すると、能力のある人と比べて「自分には何かが足りない」と考えがちですね。そんなときは、著者によれば「自分は、すでに十分足りている」と気づくことが大切なのだそうです。
実は著者も、長く自己否定ばかりしたがる性格だったといいます。それまでの著者は本を3冊出していましたし、セミナーも開催していましたが、可も不可もなくといったレベル。自分はまだまだ努力が足りないから、もっともっと努力して、成長して、できるようになろうと思っていたそうです。
いまのままでいい、と考えてみよう
そもそも、世の中には自分よりもすごい人はごまんといるものです。ですから、まわりと比較ばかりしていると、ときおり不安と焦燥感に襲われてしまいます。著者は思いました。成長しなくてはと思うほど、がんばらなくちゃと思うほど、身近なことがなおざりになって、大切な人をちゃんと大切にできなくなっているのではないか、と。
ところが、著者はある瞬間から「あっ、自分はこれでいいんだ」と考えを変えることができたそうです。人と比較するのをやめたことで、自分を見つめ直すことができるようになったのです。その後、著者の本はベストセラーを連発し、セミナーは超満員。著者は成長するのをやめたことで、大きく成長することができたのです。
本来、人はがんばらなくても成長できる
著者によれば、もともと人は植物のように、何もせずとも成長できる、放っておいても成長してしまうものだといいます。逆に、成長しようと行っている努力が、成長を妨げている例も少なくないのだそうです。植物を育てるとき、肥料をあげすぎるのも良くありません。人間も同じです。成長するために休日をつぶして勉強に励んでいては、せっかくの身体を休める時間や、愛する家族や友人と過ごす時間を失ってしまいます。
著者は、成功は足し算ではないと考え、ありのままの自分を受け入れることが、成長への近道であると説いているのです。
お母さんの呪縛から解放されよう
人は無意識のうちに、自分のなかに合格点をつくってしまっていると著者はいいます。そもそも、どれぐらいがんばったら成長したといえるのか、合格点なのか…といった基準はすごく主観的なものですよね。
その基準をつくっているものは、実は“お母さん”なのです。
テストで赤点ばっかりとっても怒られない家もあれば、90点でも怒られてしまう家もあります。子ども時代の経験が、おとなになってからの価値観に大きく影響するのだそうです。がんばりすぎてしまうあなた、お母さんの呪縛から解放されて、自分の基準で自分を褒めてあげてみてはいかがですか。その先には明るい未来、大いなる成長が待っているかもしれませんよ。
(文:元城健)
【文献紹介】
がんばらない成長論
著者:心屋仁之助
出版社:学研プラス
努力、目標、向上心…。全部捨てると、「ものすごい成長」がやってくる!自分の合格ラインを下げたところから、思いもよらぬ成長が始まる――。テレビで話題の超人気カウンセラー心屋仁之助直伝!これからの時代の、まったく新しい「がんばらない成長論」