1980年頃から1990年にかけて、多くの男性から熱い視線を浴びた品物があります。
「101」という名の毛生え薬です。
ちょうどその頃、我が家は家族総出で中国や香港に出かけていました。人類学を教えている夫が、資料収集と博物館巡りをかねて、夏休み中、あっちへうろうろ、こっちへうろうろを繰り返していたのです。
私のモテ期?
もうすぐ、中国へ旅行という時期になると、私は周囲の男性から急にもて始めました。自分で言うのもなんですが、「気をつけて行ってきてね」という優しい言葉と共に、「旅の前に餞別を渡したいから、ご飯、食べようよ」というお誘いまであったのです。
何事かと思ったら、何のことはない私に「101」を買ってきて欲しいのです。中国でできたこの薬は抜群に効き目があり、薄くなりかけた髪の毛がフサフサになるという触れ込みで、注目されていました。
「そんな馬鹿な」と、答えつつ、彼らの頭をチラ見すると、フサフサではないかもしれませんが、はげてもいないのです。強いて言えば、ちょっと薄いくらいの感じ…。
「毛生え薬なんて必要ないですよ」と言っても、彼らは「いや、このくらいからつけないと効かない」とか「日本では今品薄でね、待ってもなかなか手に入らないから買ってきてよ、お願いだよ」と、せまるのでした。
頼む相手が違う
彼らは頼む相手を間違えていると思います。私は男性の髪の毛が多かろうと少なかろうと、気にならないのです。大事なのは、心です。いや、むしろ、「この人、大好き」と思う人は頭髪が少ない人が多いのですから、養毛剤を見つけようとする情熱を持てません。
そこで、つい、「気にしないでいいですよ~~。私、むしろハゲた人が好き」と、言うのですが、彼らは私の言うことなど聞いてはいません。彼らが気にしているのは、私の反応ではなく、自分の恋人や妻や職場の同僚の視線なのですから。私は育毛剤101を買ってくることができる女として、一目置かれているだけなのでしょうか。
今なお続く髪への情熱
私としては、薬は副作用もあるでしょうし、海藻を食べるとか、ツボを押すといった方法を試した方がいいのではないかと思うのですが、彼らの賛同を得ることはできず、101をねだられることになるのです。
その時、思いました。男性は髪の毛の量にこだわるのだな、と。養毛剤101は、いつしか話題にのぼらなくなりましたが、髪の毛の悩みは続いているようです。今こそ、中国が誇るツボ押しや経絡の考えを試してみるべきではないでしょうか?
男性に効くツボとは?
『男によく効くツボを正しく押せる本』(邱 淑惠・監修/学研プラス・刊)は、そのタイトルが示すとおり、男性の悩みを解決するツボが書かれている本です。ツボの本というと、女性向けに「冷え性対策」とか「綺麗になるツボ」といったジャンルが多いと思います。
けれども、男性特有の悩みも多いのです。それはたとえば、前立腺であったり、加齢臭のこと、出腹をなんとかしようと思う人もいるでしょうし、もちろん薄毛も悩みです。さらには、ストレスによって起きる数々の不調が女性と同じく、いえ、女性以上にあるものかもしれません。
著者の邱 淑惠(キュー・スエ)は、中国台湾省栄民総医院鍼灸センターで中国針を学び、1974年に来日した後は、東京教育大学(現・筑波大学)でツボ・ハリ・漢方を習得して、ツボの治療を普及させるために努力してきました。
男の悩み、それは何? まずは髪の毛問題?
健康で美しく、はつらつと生きていきたいというのが、男女を通じての願いではないでしょうか。ただし、男性がとりわけ気を遣うとしたら、まずは髪の悩みかもしれません。
「抜け毛・白髪」の問題を解決するためには、まずはメインのツボとして「腎穴(じんけつ)」を押してみるのが大事だといいます。これは副腎の働きを良くするツボで、ストレスに強くなるためにも効果があります。
「腎穴」の位置は、手のひらの小指の第1関節の中央。その名のとおり、腎臓の働きを調整するためのツボです。
押すときは爪を立てて押しもむようにするといいそうです。
抜け毛や白髪の原因については、皆さんの注目が集まるところでしょう。理由は様々でひとつにまとめることはできませんが、やはり遺伝的な要素が大きいようです。家族に白髪や薄毛の人が多い場合は、遺伝する可能性が高いのです。
けれども、外的要因も見逃せません。とくに、ストレスは髪のトラブルを招きます。そんなときは、「腎穴」を押し、副腎の働きを正常にして、髪の健康を保つようにしたいものです。さらに、頭頂部にある「百会(ひゃくえ)」も、抜け毛、白髪対策に効果があります。「百会」を押すことによって、頭皮が刺激され、血行がよくなり、髪のトラブルが改善されるというわけです。
次の願いは、精力増進
男性の悩みを解決するためのツボの本だけあって、男性としてパートナーを満足させるために必要な能力についても、言及します。
たとえば、「夜の持久力アップ」のツボ。他人にはおそらく相談しにくいでしょうが、ツボ押しなら、パートナーにすら気づかれないまま、持久力を飛躍させ、憧れの強さを手に入れることができるといいます。
そのために必要なのは「横骨(おうこつ)」をメインのツボとして抑えることです。ここは局部の近く(恥骨のすぐ上)にありますが、それだけに効果はかなりのものだそうです。中国ではよく知られた有名なツボだそうです。
さらに足の裏にある「湧泉(湧泉)」も効果的。足の裏の中央よりやや上にあるこのツボを押せば、エネルギーが泉のようにわき出てくるといいます。
他にもたくさんのツボが悩み別に示されています。そのなかには、誰にも内緒にしておきたい悩みもあるかもしれません。それでも暗くならないで。自分で十分の体を慈しみ、ツボを押せば、きっとあなたは笑顔になるはずです。
【著書紹介】
男によく効くツボを正しく押せる本
著者:邱淑惠(監修)
出版社:学研プラス
腰痛・眠気といったカラダの痛みや疲れに効くツボ、二日酔いやイライラに代表されるカラダやココロの不調に効くツボ、体臭・花粉症・高血圧などの体質を改善させるツボはもちろんのこと、メタボ・薄毛・精力といった男性ならではの悩みに効くツボも多数紹介。