国民栄誉賞をいつもらってもおかしくないスポーツ選手がいます。柔道家の野村忠宏さんです。野村さんといえば、アトランタ、シドニー、アテネの3つのオリンピックで、柔道史上唯一の3連覇を達成した天才柔道家です。
小柄な体から繰り出される技の数々は見事で、平成の三四郎、小さな巨人といわれました。
野村さんは実は臆病だった
「戦う理由」(野村忠宏・著/学研プラス・刊)は、野村さんが2015年に引退を決めたときに執筆した自叙伝です。
野村さんといえば、その圧倒的な強さから天才肌と言われることが多かった選手です。ところが、この本の中で、本人は自分を“ビビリ”だと言っています。怖がりで、人と対峙して組み合うのも怖い。そして何より、負けるのも怖いのだとか。
自分は臆病だと語る野村さんですが、オリンピックのような大舞台で活躍できたのは、なぜでしょうか。そして、どのように憶病を克服してきたのでしょうか。
弱い自分と向き合う
野村さんの克服法のひとつが、「弱い自分がどういうときにどんなタイミングで出てくるのかを、経験を重ねて知っておくこと」だそうです。自分の弱さを認め、対処方法を考えることで、弱い自分と真正面に向き合うことが大切だと説いています。
もうひとつは、「弱い自分を知ったうえで、ビビっている自分が表に出てこない状況をつくる」ことです。野村さんはそのために、自分をとことん追い込みます。プレッシャーを与え、逃げられないような状況をつくります。練習でも強い選手と戦い、しんどい練習をとことん繰り返すのが野村流です。
こうした地道な鍛錬を繰り返すことで、はじめて、本番で強い自分を出すことができると野村さんは述べています。やはり、勝利の陰には日々の努力の積み重ねがあったのです。