勇者の履歴書?
著者は、前書きでこう述べています。
いまあなたが手にしているこの小さな本は、そのような思考という場を舞台に格闘を繰り広げた勇者達の履歴書ともういうべきものです。
この履歴書に飽き足らなくなった人は、ぜひ彼らが残した著作を直接手にとってみてください。その一言一句に、刻み込むようにして記された彼らの思考の軌跡を読み取ることができます。(『倫理・哲学の特別講義』より抜粋)
私はこの前書きに励まされ、通読することができました。わからないこともありましたが、言葉の一つ一つをチェックしながら読み進むのは、楽しい作業でした。
魂を分類
とくにプラトンに関する記述は熱心に読みました。プラトンが人間の魂を3つに分類していることも知りました。
すなわち、イデアを認識する理性、現象界の肉体に結びついている本能的な欲望、その間にあってロゴスに従い意欲的に行動する気概(意思)の3つだそうです。専門家には当たり前のことなのかもしれませんが、私には魂を分類しようとする行為それ自体がかなり特殊なものに思えてなりません。哲学者とはやはり特殊な訓練を経て、ようやくなれるもののようです。
閑暇は大事だと思う
輝くような言葉も知りました。
古代ギリシャで、哲学や芸術が開花した背景には、自由精神活動の基盤となる閑暇(スコレー)を、市民たちが存分に享受できたことが挙げられる。
(『倫理・哲学の特別講義』より抜粋)
「閑暇」を広辞苑でひくと、するべきことのない状態、とあります。おまけに、スコレーとはスクールの語源でもあるそうです。もし、そうなら、学校とは本来は暇であるべき場所だったのではないでしょうか?
暇だから考える、あくびしながら本を読むというのが、私の理想の生活です。息子を理解したくて読んだ本でしたが、最終的には自分のために読むことができたのですから、哲学という学問は、考えていたより間口が広く、専門家になろうとしなければ、私のような素人も受け入れてくれるものなのかもしれません。
【書籍紹介】
倫理・哲学の特別講義
著者:大磯仁志(著)、清水雅博(監修)
発行:学研プラス
センター試験に対応した「倫理」の電子書籍! 難しい「思想」の流れと概要を、見事なまでに簡潔に説明。対話形式だから読みやすく、短時間で得点力もアップすること間違いなし。高校生だけでなく、大人にも読んでほしい一冊。