子どものころ、いわゆる歴史上の偉人の伝記を数多く読んでいた。湯川秀樹、キュリー夫人、野口英世、夏目漱石などなど、確かうちに全集のようなものがあったので、それを片っ端から読んでいた。
やはり、後世に名前を残すような人たちは、とても努力をし、逆境を乗り越え、普通の人にはできないようなことを成し遂げたんだ。偉いなー。そう思っていた。
偉人はちょっと変わった人が多い?
大人になると、偉人と呼ばれている人たちも、実はお金や女性にだらしないといった面があったり、それほどいい人ではなかったというようなこともわかってきた。まあ、聖人君子というのはそうそういないだろうし、何か大きなことを成し遂げるには、多少逸脱した思考回路みたいなものが必要なのかもしれない。
『ざんねんな偉人伝 それでも愛すべき人々』(真山知幸・著/学研プラス・刊)という書籍は、偉人の残念なエピソードが満載だ。
たとえば、モーツァルトがおしりとかうんちのことばかり書いた手紙を大量に書いていたりとか(小学生か!)、豚肉恐怖症やデンマーク風果実スープ恐怖症、広場恐怖症、旅券恐怖症など、とにかく恐怖症のデパートだったアンデルセン、清貧のイメージがあるが実は割と俗っぽい宮沢賢治とか、残念極まりないエピソードが目白押しだ。
でもまあ、才能のある人というのはどこか常人とは違うところがあると思うので、多少のことはしょうがないのではないだろうか。
天才画家・ダリの無銭飲食テクニック
そんな残念エピソードのなかで、僕がおもしろいなと思ったのが、画家のサルバドール・ダリだ。彼は自己プロデュースに長け、マスコミへの露出も多かったという。かなりの売れっ子でお金持ちだったようだが、セコい一面もあったという。
レストランに友人らを呼んでごちそうをすることもあったというが、支払いには必ず小切手を使っていたそうだ。しかし、そこがポイント。
ダリは、その小切手の裏に、ウェイターの目の前で落書きをするようにしていた。落書きとはいえ、天才画家のスケッチである。たいていのレストランの支配人は、小切手を額に入れて飾るため、換金されることはない。
(『ざんねんな偉人伝 それでも愛すべき人々』より引用)
小切手も換金されなければ支払いが発生しない。ゆえに支払いが無料になるということだ。
真似しようと思っても、小切手が使えないし、有名人でも天才画家でもない。ダリならではのテクニックといえる。
偉人は変わり者が多いようで、この書籍には65人の国内外の偉人が登場する。こういうのを読むと、僕のようなだらしない人間はとても安心する。
ただし、真似しようと思ってはいけない。時代が違うし、そもそも豪快で極端なエピソードが多いので、現代で同じようなことを一般人がやったら、すぐ社会から抹殺されるかもしれない。
あくまでも、「昔の偉い人はおもしろいなー」くらいでとどめておくのが一番だ。
【書籍紹介】
ざんねんな偉人伝 それでも愛すべき人々
著者:真山知幸
発行:学研プラス
エジソン、野口英世、アインシュタインら、歴史を変え、時代を作った天才たち。しかし、彼らの素顔は、失敗を繰り返し、トンデモ行動のオンパレードの超変わり者だった。それでも、彼らが時代を超えて愛される理由とは?驚きながら楽しく読める、新しい伝記。