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2017/7/6 0:00

SNS嫌いになる前に「スマホを捨てずに、旅に出よう!」

昭和という時代がありました。
アナログカメラが主流だった時代です。

 

 

わたしの観測範囲では、あえて料理の写真を残そうとするシチュエーションといえば、「温泉旅館の刺身盛り」か「結婚式のフルコース」くらいだったと思います。

 

そのほかでは、集合写真や記念写真のアングルのなかに、たまたま料理が写り込んでいたにすぎませんでした。

 

 

SNSと飲食店におけるスナップショット

 

時代は変わりました。
誰もが、デジタルカメラ機能を持ち歩いています。

 

非日常の記録である「温泉旅館の刺身盛り」や「結婚式のフルコース」の写真だけにとどまらず、あらゆる飲食物の写真がスナップされるようになりました。

 

注文したものが運ばれてきたにもかかわらず、箸やフォークを手にするのではなく、せっかく湯気をたてている皿に向かって、まずはデジタルカメラを構えるのです。
場合によっては、皿の向きを変えたり、ようやく箸やフォークを手に取ったかとおもえば、食べるのではなく、食材の配置バランスを整えはじめます。

 

 

いったい何をしているのでしょうか?

 

しかも現代人は、飲食物を撮影するだけに飽き足らず、それをインターネット上の不特定多数に向けて発信(シェア)することを喜びとしているのです。
そのためにTwitterやFacebookやInstagramなどのSNSがよく使われています。

 

SNSシェアを目的として飲食物スナップショットをおこなう人たちのことを「手段と目的をはきちがえた人たち」あるいは「自己顕示欲の強い人たち」であると決めつけるのはたやすいです。

 

しかし、わたしにも身に覚えがありますから、飲食物の写真をSNSにシェアする人たちのことを笑うことはできません。

 

 

スマホ撮影が恥ずかしい理由

 

飲食店におけるスマホ撮影について、わたしは消極的なタイプです。

 

お店の人や、ほかのお客の視線が気になって、撮影するタイミングを逃してしまい、1枚もスナップできずに食べ終えてしまうことが珍しくありません。
なんとなく損をしたような気持ちになります。

 

わたしが飲食店でスマホ撮影をしそこねる原因は、羞恥心と罪悪感です。

 

 

店内スナップショットの流儀

 

羞恥心について。
わたしもブログやSNSを利用していますから、写真をシェアして、自己顕示欲を満たしたいという気持ちはあります。
しかしながら、わたしは根が昭和生まれのコンサバ風味にできてるものですから、飲食店でスマホ撮影するというSNSジェネレーション的なおこないが照れくさくてたまらないのです。

 

罪悪感について。
料理はできたてがいちばんおいしいものです。
せっかく作りたてを出してくれたのに、SNSシェアというちっぽけな虚栄心を満たす目的のために、その料理における最高のコンディションをみすみす逃すなんて、お店の人に失礼ではないか。やがて地獄におちるのではないか。不安になります。

 

そういえば、グルメ通として有名なアンジャッシュ渡部建さんは、大きな一眼レフカメラで飲食物スナップをおこなっていました。
あるテレビ番組で観たのですが、渡部さんは大きなカメラを両手で構えることなく、片手だけで撮影していたのです。
それは流れるような動作であり、1皿のスナップに要するのはわずか1秒ほどでした。目にもとまらぬ早わざで撮り終えてから、すぐに食べ始めていたのです。

 

羞恥心と罪悪感をなるべく少なくするための渡部さんによるノウハウであり、さすが食べ歩きの第一人者です。感心しました。

 

 

スマホを捨てずに、旅に出よう!

 

TwitterやFacebookやInstagramなどのSNSを利用していると、楽しいこともありますが、楽しくないこともあります。
SNS依存症やSNS疲れといったものです。

 

旅と日常へつなげる』(チェコ好き・著/ブックビヨンド・刊)は、インターネットやSNSの恩恵を認めながらも、心身の健康のためにデジタルデトックス(解毒)が必要であると感じた著者による、北米・東南アジア旅行の紀行文をまとめた1冊です。

 

デジタルデトックスといっても、「スマホを捨てよ、旅に出よう」といった短絡的なものではありません。
旅行は楽しむべきものであり修行ではないのですから、インターネットやスマホは旅先で大いに活用しています。

 

この本で語られているのは、ただひとつ「旅先ではSNSを利用しない」というルールだけです。
飲食物スナップショットのような「SNSのための行動や発想」をいったん忘れるためです。

 

「捨てる」と「忘れる」は、似て非なるものです。
煩悩を「捨てる」ことは難しいですが、いったん「忘れる」ことならばできます。忘れることによって、一時的とはいえ悩みや苦しみをデトックスできるのです。

 

この考え方は、情報やモノがあふれかえっている現代を生きる者にとって、さまざまに応用できると感じました。

 

 

(文:忌川タツヤ)

 

【文献紹介】

旅と日常へつなげる
著者:チェコ好き
出版社:ブックビヨンド

著者自ら海外旅行でデジタルデトックスしてみたり、SNSを活用する方法を考察したり、芸術や映画、文学を考えてみたり…ヒントをちりばめています。「毎日ネットで時間を浪費しちゃているなぁ」と感じている人はこの1冊で考え方がガラリとかわっちゃうかも!