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2017/5/25 0:00

日本有数のパワースポット・高野山に魅せられて

平成27年、高野山は開創千二百年を迎えました。
数々のお祝い事が行われ、数多くの信者さんが高野山詣でをしました。

 

 

 

空海、またの名を弘法大師を慕う人々の思いは篤く、真言宗の仏徒であろうと、なかろうと、弘法大師のおわす山・高野山を敬虔な思いで見つめる人のなんと多いことでしょう。
私はローマン・カトリックの家に生まれ、幼児洗礼によって、クリスチャンになりましたが、高野山に対して神秘的な思いを持っていますし、興味もあります。

 

 

今も生きる弘法大師

 

『高野山の秘密』(日野西眞定・著/扶桑社・刊)は、かつて高野山で「維那(いな)」という大事なお役目を9年もの間続けてこられた日野西眞定(ひのにししんじょう)師のお話を伊豆野誠氏が聞き、まとめたものです。
伊豆野氏は、「皇室」の編集長をつとめていたことから、日野西師とご縁があったとのこと。
ちなみに「維那」とは、弘法大師に毎日、ご飯を差し上げることだそうです。
高野山には弘法大師が今もなお生きて私たちを救ってくださるという信仰があるため、奥之院の「御廟」の拝殿で、季節のご馳走をお供えし、ご奉仕を行うのだといいます。

 

 

山あり谷ありの人生模様

 

空海は774年に、現在の香川県善通寺市に生まれました。
幼名は真魚といい、名家の生まれで、大学を出て官吏になることが期待されていました。
ところが、因果関係はよくわからないのですが、生家が派閥争いに巻き込まれて大学を中退し、私度僧と呼ばれる民間の僧侶となりました。
エリートであるべき人だったというのに、挫折を味わったと言えましょう。
それでも、修行と思想遍歴を重ね、勉強を続けていた空海に、転機が訪れます。
31歳のとき、遣唐使船に乗ることになったのです。

 

 

西安での修行が高野山で花開く

 

遣唐使は唐の長安(現在の西安)を目指します。
空海も長安で勉学に励み、ここで密教と出会うのです。
師と仰いだのは恵果和尚。密教伝持の第一人者でしたが、空海をひとめみてその優れた人品と教養にうたれ、半年余りですべての伝授を終えたといいます。
本当だったら、20年近くかかるであろうと覚悟していた留学を空海は2年で切り上げ、帰国します。
そして、朝廷から高野山を下賜され、密教の根本道場を開くにいたったのです。
高野山を開山するまでには、一人の優れた若者が悩み、苦しみ、師に対峙する波乱万丈の物語が繰り広げられていたことに、私は心から驚きました。
中国から密教が伝えられるためには、こうした命がけの努力が必要だったことを今まで考えたこともなかったのです。

 

 

結界を張るということ

 

『高野山の秘密』には、のけぞりそうに驚くお話が多く、私は何も知らない自分を何度も恥じました。
とくに「結界」についての知識は持っておらず、というか、考えたこともなく、「ひょえーー」と声に出して驚きました。

 

先ほど、空海さんが高野山を開くにあたって最初に行ったことが結界を二度張ることだったと言いました。一度目は山中他界である高野山全体で、二度目は密教の伽藍を建てるための壇上の地でした。つまり、二つの結界は、死の世界である先祖信仰の世界と密教の世界を表しています。いうなれば、日本独自の民族信仰の世界と外国から導入された新しい思想の世界です。そして、それが見事に調和されているのです。これが高野山の結界の中で特に尊ばれている二大聖地「壇上」と「奥之院」の姿なのです。

(『高野山の秘密』より抜粋)

 

高野山の神秘を感じてはいましたが、ここまで深いとは・・・。

まったくもって言葉もありません。

 

 

高野山に行き、エネルギーを感じたい

 

私が最初に、高野山に興味を持ったのは、ゴルドン夫人の生涯を調べたいと思ったからです。
彼女はビクトリア女王の女官をつとめたこともあるイギリス人の女性ですが、中国に伝わったネストリウス派のキリスト教に興味を持ちます。そして、仏教とキリスト教は、源を同じくするのではないかという考えを実証しようとしたのです。
彼女は日本を愛し、日本に滞在し、研究を続け、日本のホテルで亡くなります。
そして、その墓は高野山の奥之院にあるのです。
私は彼女がなぜ高野山に魅せられたのか知りたくて、『高野山の秘密』を手に取りました。
けれども、今はただ、高野山に出かけ、そのエネルギーを感じたいと思っています。
そうすれば、ゴルドン夫人の気持ちが頭ではなく、体でわかるような気がするからです。

高野山は日本有数のパワースポットと言われますが、それもそのはず、弘法大師が今もなお生きて、見守っていてくださるという場所なのですから、当然だと言えましょう。
行くぞ、高野山へ。
これが私の今の願いです。

 

 

 

(文・三浦暁子)

 

 

【文献紹介】

高野山の秘密
著者:日野西眞定
出版社:扶桑社

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