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2017/4/18 0:00

飛行機萌えの女子「空美さん」が増えている!

鉄道マニアの女子のことを「鉄子」と呼ぶように、飛行機マニアの女子のことは「空美」と言うらしい。

 

 

飛行機マニアには、撮影派、乗り派、空港楽しみ派、グッズ収集派、そして自宅で航空無線や映画やゲームなどを楽しむ在宅派などがいるそうだ。

 

先に断っておくと私は飛行機に乗るのが好きではない。
正直、怖いのだ。

 

それでも外国へ行くためには飛行機に乗らなればならないから乗ってはいるが、いつも空の旅をぜんぜん楽しめていない派なのだ。

 

 

格安で快適、安全な飛行機選び

 

料金が安いこと、これが私が飛行機を選ぶときの第1の条件。
その次に、料金が安い中でもなるべくお金持ちの航空会社であることと、使っている機体が新しいかどうかを調べて決めている。

 

経営状態が悪くて、機体が古く、さらにギリギリの燃料でのフライトなんて絶対に嫌だからだ。

 

先日、成田~パリの往復にはエティハド航空を使った。
早いのはJAL、ANA、エールフランスの直行便だが、貧乏な私には料金が高すぎる。だから格安の経由便の中からベストなものを選んだのだ。エティハド航空はUAEアラブ首長国連邦のアブダビに本拠地を置いている。同国にはもうひとつドバイを拠点とするエミレーツ航空もあり、どちらも最近は欧州方面へ向かうのに人気の路線だ。

 

気分は『ターミナル』のトム・ハンクス

 

行きの成田~アブダビ~パリは乗り継ぎもスムーズで遅れもなく定刻にシャルル・ド・ゴール空港に着いた。
が、ハプニングは帰りに起きた。機体の整備点検が遅れ、出発が約3時間も遅れた。アブダビでの乗り継ぎ時間は2時間しかない。

 

で、私は聞いた。「成田行きの便は待ってくれるでしょうか?」と。すると「当便には日本人のグループがいませんから待ちません。アブダビで次のフライトに振り替え手続きをしてください」と、あっさり言われてしまったのだ。

 

エティハドの成田便は1日1便しかない。ってことは私はアブダビの空港にいつまで足止め? その後、パリ~アブダビのフライト中、私の気分は映画『ターミナル』のトム・ハンクス状態だった。ニューヨークの空港から出られなくなった主人公がターミナルでしばらく暮らす物語のシーンが次々と頭に浮かび、アブダビのターミナルで彷徨う自分を想像してしまったのだ。

 

幸い、アブダビ空港では乗り遅れた乗客の名を掲げたプラカードを持ち、声を張り上げる空港職員がずらりと待ち構えていた。

 

「ミセス・ヌマグチ。これからアブダビ市内のホテルにご案内します。次のフライトは20時間後ですが、それまでホテルでおくつろぎいただけます。またお食事もすべてエティハドが負担いたします」となった。

 

自腹では絶対に宿泊できないようなアブダビの高級ホテルに案内され、私はターミナルの人にならずに済んだのだ。遅れにはまいったが、それでもお金持ちの航空会社ならではの対応だったとは思う。

 

もしも、私が「空美」だったら、こういうハプニングも「ラッキー!」と思えたのかも?

 

ヒコーキを撮る女子たち

 

『今日もヒコーキに会いに行く』(蘭木流子・著/イーストプレス・刊)は、自らを“ヒコーキオタ女子”という著者が、飛行機をもっともっと楽しむ方法を紹介した漫画本だ。

 

飛行機はただの乗り物じゃありません。マニアな人々のおかしな生態から、飛行機ライフを楽しむためのお役立ち情報まで。読めばハマれる入門書!

(『今日もヒコーキに会いに行く』から引用)

 

空港の展望デッキに行くと、望遠レンズのカメラを構えた“撮り派”が大勢いる。以前は男性が圧倒的に多かったが、最近では女性が増え、女子会ができるほどになっているという。

 

本書では羽田、成田、伊丹などの空港でより迫力のある飛行機写真を取れるスポットをかなり詳しく解説している。

 

おもしろいのは、次々と降りては上がる飛行機には撮り派の人々がつけたアダ名があること。「あ、カレーが来た!」と言えば、それはエア・インディアのこと。「ピザが来た!」と言えば、それはアリタリア航空を指すそうだ。

 

また、航空無線を傍受しているマニアが「ランチェンだ!」と叫ぶと、それは離着陸の滑走路変更のことで、そうすると撮り派の人々は民族大移動のごとく、別の撮影スポットに一斉に駆けていくのだという。なんだか、とても楽しそう。次に空港に行ったら、私は彼らの姿を観察してみたいと思う。

 

乗り派は機窓からの景色を楽しむ

 

長時間のフライトの時、私は必ず通路側の席を選ぶ。それは行きたいときにすぐにトイレに行けるからだ。窓際に座ってしまうと隣が飲食中や睡眠中だと立ち上がってどいてもらわないならず、とても面倒だからだ。

 

が、乗り派は窓際席を、しかも富士山など見たい撮りたいスポットがあるときは、翼の真横を避けるなど座席指定にはかなりこだわるという。

 

天気の良い日は富士山を通過する前に、本日は雲が少なく、右手に富士山が望めます、と機内アナウンスがあることも。そして窓をのぞくと、わああああああ~、眼下には、地上から飛び出す富士山の姿が!!

(『今日もヒコーキに会いに行く』から引用)

 

確かに、こういう場面では飛行機の窓は小さいから通路側に座った人は損した気分になるかも?

 

乗り派には、この他に、マイルを貯めることに熱意を燃やす“マイラー”、各社の機内食を食べ比べて楽しむ人々、さらには乗った飛行機のデータを記録した“フライトログブック”作りに夢中の人々もいる。

 

空港派、グッズ収集派、在宅派も

 

飛行機ファンの中には“空港萌え”な人も多いそうだ。
本書では訪れた空港の数が500を超える(2014年ギネス認定)という航空写真家のチャーリー古庄氏に著者が会い、空港の楽しみ方をレクチャーしてもらうページがあり、これがとてもおもしろい。

 

大分空港の荷物受取所のベルトコンベアにはスーツケースと一緒に並ぶ巨大寿司!が見られるとか、中部国際空港セントレアでは飛行機が見えるお風呂があるとか、海外の空港の見所なども紹介されている。

 

本書には、集めてみたいエアライン・グッズや売っているお店の情報、そして自宅で飛行機を楽しめる数々の映画の紹介、さらには“ヒコーキ女子の生態学”の4コマ漫画もおもしろい。

 

飛行機マニアも、そうでない人も、とにかく楽しめる1冊だ。

 

(文:沼口祐子)

 

 

【文献紹介】

今日もヒコーキに会いに行く
著者:蘭木流子
出版社:イースト・プレス

だから飛行機ファンはやめられない! 乗り派、撮り派、空港満喫派、グッズ収集派。奥深くて楽しい旅客機の世界を漫画でアテンド!「飛行機はただの乗り物じゃありません」マニアな人々のおかしな生態から、飛行機ライフを楽しむためのお役立ち情報まで。
飛行機ファン向けの雑誌「月刊エアライン」などで人気連載中の「ヒコーキ漫画家」蘭木流子(らんきりゅうこ)がフルカラー漫画でお届けする「飛行機をより楽しむため」コミックエッセイ。