私の母校である田舎の中学校の女子の制服は、3本ラインが入った紺色の襟に赤いスカーフを結ぶ…という、言うなれば、マンガやドラマに良く出てくる典型的なセーラー服でした。
ところが、上京してみると中学、高校に関わらず、こういったいかにも~なイメージのセーラー服を見かけることがほとんどないのです。セーラー服を採用しているのは、創立ウン十年という伝統校ばかり。もとは制服といえばセーラー服、というほど街にはセーラー服姿の女学生が溢れていたはずなのに、どうして?
モデルチェンジが盛んになったのは、あの時代!
セーラー服姿の女学生のイラストがかわいらしい「私学制服手帖 エレガント篇」によると、セーラー服からブレザーへ、制服のモデルチェンジが各地で進んだのは昭和の終わりから平成にかけてのことのようです。
著者曰く、この時期には“制服モデルチェンジブーム”が起こっていたとのこと。その背景には、セーラー服はブレザーに比べて重ね着がしにくいことや、温度調整が難しいこと、さらには女子学生然としたイメージが古臭さを感じさせること…などが考えられるのだそうです。
お高いデザイナーズブランドの制服
なおかつ、筆者は「モデルチェンジ効果」の大きさについて指摘しています。確かに、セーラー服からブレザーに変わると、学校の雰囲気が変わったことが視覚的にもわかりやすいですよね。あの手この手で、生徒を集めようとする学校側の思惑が感じられます。
そして、昭和の終わりから平成の時代といえば、時はバブルまっただ中。この時期には、森英恵などの有名ファッションデザイナーが監修した制服が誕生し、セーラー服からモデルチェンジした例も多かったようです。
それにしても、そんな制服はそもそもお値段も高いでしょうし、私立のお嬢様学校しか採用できないのでは…と思いきや、調べてみると地方の公立高校にも波及していることに驚きです。地方にもバブルの効果が広がっていた…ということなのでしょうか。
再び巻き起こっている制服モデルチェンジ
ところが、昨今になって、昭和の終わりから平成の時期にモデルチェンジした制服の“再モデルチェンジ”が進んでいるようです。校名を挙げるのは控えますが、個性的なデザインが印象的だった高校の制服が、相次いでごくごく普通のブレザーへと変化しているのです。
ちなみに、この「私学制服手帖 エレガント篇」で紹介されている学校でも、既にモデルチェンジが行われてしまった例があります。不景気の煽りを受けているのか、デザインが古臭いと意見が挙がったためなのか、そのへんはよくわかりません。やっぱりアベノミクスの効果があんまり広がっていないのかなあ。もうバブルのような派手な服装は流行らなくなってきたということなのでしょうか。
まあそれはさておいて、ともかくそんな時代だからこそ、バブルのモデルチェンジブームの時期に頑なにセーラー服のデザインを変えなかった学校の存在感が高まっているように思います。
なんだかんだで、セーラー服の人気は不滅!?
そういえば、ド●・キホーテでバイトしていた友人に話を聞いたことがあるのですが、コスプレ用のセーラー服は安定して売れているのだそうです。コスプレ用の制服と聞くと、なんだか忘年会でおじさんが着ているようなイメージですが、意外や意外、女性のお客さんも多いのだとか。学生時代にセーラー服を一度も着たことがないので、買い求める…という人が少なくないそうです。
確かに、ブレザーは大人になっても着る機会があるけれど、セーラー服は学生時代しか着ることができません。そういうプレミアム感が人気に拍車をかけているようです。やはり、いつの時代もセーラー服は女学生の憧れということなのでしょうか。
(文:元城健)
【文献紹介】
私学制服手帖 エレガント篇
著者:森伸之
出版社:みくに出版
進学レーダーで好評連載中の「私学制服手帖」が単行本になりました! レーダーに掲載された学校取材に加え、他誌で掲載された「生徒の街角観察ルポ」も収録。著者・森伸之が私学の生徒や校風を、内側と外側の両面から独自の視点で紹介します。カラーイラストも満載だから、親子での志望校選びに、もってこいの1冊!