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自己啓発
2015/6/3 0:00

スターとスーパースターを分ける要素は意外にも…

5月22日、本拠地マーリンズ・パークでの対ボルティモア・オリオールズ戦で2安打を放ち、ベーブ・ルースの通算安打数2873本を抜いたマイアミ・マーリンズのイチロー選手。チームメイトからもファンからも絶大な信頼を受けるリードオフマンとなったサンフランシスコ・ジャイアンツの青木宣親選手。5月29日現在で17試合に登板し、すでに10セーブを挙げているボストン・レッドソックスの上原浩治投手。トロント・ブルージェイズの人気者、川崎宗則選手が再びメジャー昇格したのも嬉しい限りだ。

 

MLBは、今年も開幕直後から日本人選手の活躍がクローズアップされる展開となっている。

 

 

 

 偉大なピッチャーたちが切り拓いた道

 

日本人初のメジャーリーガーは、南海ホークス(移籍当時)からアメリカ野球留学を経てサンフランシスコ・ジャイアンツで2年間プレーした”マッシー”こと村上雅則氏だ。デビューした1964年の成績は9試合の登板で1勝1セーブだったが、投球回数15回で奪三振15、防御率1.80という数字には十分なインパクトを感じる。

 

ロサンゼルス・ドジャースでメジャーリーガーとしてのキャリアをスタートさせた野茂英雄氏のトルネード投法は、日米野球ファンの脳裏にいまだに鮮烈な記憶として残っているはずだ。アメリカへ渡るまでは紆余曲折があったが、1995年5月2日、村上雅則氏以来31年ぶりにメジャーのマウンドに立った。最速151キロのストレートと、”off the table”=テーブルから落ちるほどの落差があるフォークボールでたちまち頭角を現した。のちにナショナル/アメリカン両リーグでノーヒットノーランを達成したMLB史上4人目のピッチャーとなり、ドジャース時代は、リトル・トーキョーのすし店で”トルネード・ロール”という巻き物が大人気を博したという。

 

その後もマック鈴木氏や長谷川滋利氏、伊良部秀輝氏、吉井理人氏、佐々木主浩氏と、日本人メジャーリーガーと言えばピッチャーという時期が長く続く。

 

 

ピッチャーからフィールドプレイヤーへ

 

そして2003年、ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜選手が本拠地開幕戦で満塁ホームランを放つという華々しいデビューを飾った。ルーキーが本拠地開幕戦で満塁ホームランを打つというのは球団史上初の出来事で、地元ニューヨークでも大きく報じられた。

 

やがて外野手ならイチロー選手、内野手は井口資仁選手、キャッチャーは城島健司選手というように、フィールドプレイヤーの活躍も目立つようになった。アメリカの野球ファンの間でも日本人メジャーリーガーの存在がごく普通となり、2008年シカゴ・カブスに入団した福留孝介選手のデビュー戦で、本拠地リグレーフィールドの観客がなぜか「偶然だぞ」と日本語で書かれたバナーを掲げて応援したり、イチロー選手の安打数を表示する自作の”イチメーター”で有名になったエイミー・フランツさんが来日したり、ということがあった。

 

 

MLBでのプレーが見たかった選手

 

答えが野球ファンの数だけあることはわかっている。それでも、あえて言っておきたい。MLBでプレイする姿が見たかった選手のベスト3を尋ねられたら、筆者は即座に江夏豊氏、秋山幸二氏、そして赤星憲広氏と答える。

 

江夏氏は、”江夏の21球”という伝説になった1979年の日本シリーズ第7戦のようなピッチングをアメリカでも見せてくれただろうか。秋山幸二氏は、ひょっとしたら3割・30本塁打・30盗塁を実現できたのではないか。赤星憲広氏は、MLB屈指の俊足選手だったリッキー・ヘンダーソンやビンス・コールマンにどこまで近づくことができただろうか。

 

 

ア・ボールプレイヤー・アンド・ア・ジェントルマン

 

日本人に限らず、メジャーリーガーたちはファンやチームメイト、そして何より野球の神様に愛されているに違いない。

 

では、愛される条件とは何か。

 

まず、野球に対して謙虚であることだ。この事実を学ばせてくれたのが『メジャーリーグの息子たち』だ。グレッグ・マダックス(サイ・ヤング賞4回受賞)、トム・グラビン(最多勝利投手タイトル5回受賞)、カル・リプケン・ジュニア(MLB史上歴代1位の2632試合出場記録保持者)、マイク・ピアザ(ドジャースで野茂英雄氏とバッテリーを組んでいた強打のキャッチャー)、言わずと知れたデレク・ジーターといったスーパースターたちが自分の言葉で、メジャーリーガーになるまで、現役時代のエピソード、そして仕事としての野球との向き合い方について語っている。

 

共通するのは、”謙虚”というキーワードだ。これほど名の知れた人たちから「謙虚であれ」と言われれば、ちょっと考えてみようかという気にもなる。生き方や仕事に関するモットーはシンプルなほうがいい。

 

次に煮詰まったときは、バッティングセンターで無心に球を打ち返しながら、謙虚さについて考えてみるか。

 

(文:宇佐和通)

 

 
【文献紹介】

メジャーリーグの息子たち
著者:瀬戸口仁
出版社:ブックビヨンド

メジャーリーグで活躍してきた5人の選手に注目し、彼らがどのような人生を歩み歴史を歩んできたのか。一人ひとり丁寧に解説し、5人に共通する「謙虚さ」から明日を生きるヒントをお伝えします。