『本で床は抜けるのか』(西牟田靖・著/中央公論新社・刊)という本があります。その名のとおり「蔵書の重みによって建物が崩壊するのか?」を調査して、体験者たちに取材したものです。
実際に「抜けた」事例
蔵書を5000〜6000冊所有しておりまして、本のすき間にやっと暮らしているような、そんな感じでした。
(中略)
床が抜けたきっかけは地震でした。小さく揺れた後、その5分後にミシミシと音がして、床置きしているところがみるみる崩れていきました……。
(『本で床は抜けるのか』から引用)
この「床抜け」エピソードを話してくれた小山さん(仮名)によれば、崩壊のせいでアパートを建て直すことになって、数百万円を弁償したそうです。
『本で床は抜けるのか』では、本棚と耐荷重にまつわる取材をおこなっています。一級建築士の見解によれば、木造住宅に「幅80cm・奥行き30cmの本棚」を置くとしたら、その本棚の接地面積が耐えられる重さは「43キログラム」です(1平方メートルあたりの耐荷重を180キログラムとした場合。住宅の工法や構造によって差があります)。
たとえば、1冊あたり幅2cm・250グラム(0.25キログラム)とすれば……1段あたりの重量は10キログラムです。本棚の重さを15キログラムとして、3段に隙間なく並べると「15+30=45」なので、許容値(43キログラム)を超過します。本棚の4段目が余っていても、床の耐荷重を無視するのは危険です。
「押し入れ」は要注意!
押し入れは基本、布団を収納することしか考えられていません。(中略)実はここで以前、押し入れが抜けているんです。二階に住む同居人の押し入れが本の重みで抜けたんです。
(『本で床は抜けるのか』から引用)
本棚を使うほどの愛書家でなくても、読み終わった雑誌やコミックなどをダンボールに詰め込んで、押し入れに片付けることがあります。それは要注意です。
よくある2階建てアパートの多くは「木造」です。押し入れは、布団や衣服などを想定しているため、畳やフローリング部分に比べて強度が低いおそれがあります。
『本で床は抜けるのか』の著者は、住んでいた木造アパートの押し入れが「ベニヤ張り」だったので、ひと工夫をおこないました。ホームセンターでコンパネ(合板)を買ってきて、押し入れの床に敷くだけでも補強になります。
愛書家の悩みは「床抜け」だけではありません。増えすぎた蔵書がきっかけで、離婚に至ることさえあります。本当にあった話です。