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2018/5/30 6:00

【今日の1冊】2020年のその先へ。スポーツビジネスシーンのトップランナーたちの熱い声を聞け!――『最強のスポーツビジネス』

驚いた。ひたすら驚いた。あのアンドレス・イニエスタが本当に日本に来てしまった。Jリーグ発足25周年のメモリアルとしても十分すぎる出来事だ。南米ならジーコ、レオナルド、ドゥンガのブラジル勢に加え、ディアスやフォルラン。ヨーロッパならリトバルスキー、リネカー、ストイコビッチ、そしてスキラッチ、ストイチコフ。こういう顔ぶれと比べても、イニエスタのヴィッセル神戸加入は超弩級のニュースだ。

 

イニエスタの神戸加入に関しては、年俸33億という想像すらできない金額だけが取りざたされがちだ。しかしそこには、お金という尺度だけでは計れない大きな熱い思いがあるにちがいない。

 

 

サポーターであることの幸せ

東京で行われた入団記者会見は大盛況のうちに終わり、この原稿を書いている5月26日にはヴィッセル神戸のホームスタジアムで行われているウェルカムイベントに早朝から多くのサポーターが集結している。

 

『君の瞳に恋してる』のメロディーに乗せたイニエスタ選手向けのチャントで声を張り上げるサポーターたちは、みんなとても幸せそうだ。そりゃそうだろう。2010年、自らの決勝点でスペイン代表をW杯初優勝に導いた世界的ミッドフィールダーを信じられないくらい身近に感じることができる特権を与えられたのだから。

 

 

ドラマの枠組みを作る人たち

話は、ヴィッセル神戸というひとつのクラブチームに限ったことではない。イニエスタをはじめとするスーパースター外国人選手だけ、そしてサッカーというひとつの競技だけに限ったことでもない。

 

多くの人たちの心を躍らせ、時として涙を絞らせるため、スタジアムという非日常を舞台にしたドラマを生み出すための枠組みを作る。そのためにひたすら努力を続ける人たちがいる。

 

この原稿で紹介するのは、そういう人たちの生の声を集めた本だ。熱が込もった言葉を耳にした人たちは、自ら動きたくなるだろう。スポーツを通じて、会ったこともない誰かの心をどうやったら動かせるか。そういう話なのだ。

 

 

2018年の今だからこそ語られるべきスポーツビジネス

最強のスポーツビジネス』(池田純 スポーツグラフィック・ナンバー編/文藝春秋・刊)の「はじめに」に、次のような文章が綴られている。

 

日本は今、2019年のラグビーW杯、2020年の東京五輪という国家的スポーツイベントを控えています。この2つのイベントの成功はもちろん大きな目標ですが、それで終わりではありません。2020年以降もスポーツを文化として根付かせ、産業としてより発展させていかなければなりません。そしてそのためには、もっと多くの「ビジネス」を知る人材を育て、スポーツの世界をさらに活性化させていく必要があります。

『最強のスポーツビジネス』より引用

 

この本は、横浜DeNAベイスターズ前代表取締役社長である池田純さんが発起人となって2017年4月に開講した「Number Sports Business College」に講師として招かれたアスリートやビジネスマンの講義録をまとめたものである。

 

日本のスポーツ界、ビジネス界を代表する錚々たる面々がスポーツビジネス現場の「実態」「課題」「夢」について語る。「2020年の先を見据えた、スポーツの未来を考える」という共通テーマで講義が行われる。それぞれの講演者のプレゼンテーションと、その後行われる受講生とのクロストークを収録するという構成になっている。

 

 

スポーツとビジネスをつなげる高密度の議論

どの講義も、きわめて密度が高い。以下に講演者とプレゼンテーションのタイトル、概要をいくつかリストアップしておく。

 

・鈴木大地:スポーツ基本計画が示す日本の未来

スポーツに親しむ=「する」「みる」「ささえる」ことで、人はもっと豊かになれる。そのために、国はいま、何に取り組んでいるのか?

 

・為末大:アスリートのキャリアとスポーツベンチャー

現役時代から、自身のキャリアについて誰よりも自覚的に行動し、道を切り開いてきた走る哲学者が描くスポーツの未来予想図とは?

 

・田嶋幸三:「育成日本」復活の真意とは

Jリーグ開幕から25年、6大会連続でのW杯出場。確実に発展してきた日本サッカー界において、さらなる飛躍の要となるキーワードは?

 

・隈研吾:新国立競技場に込めた思い

あるスポーツ施設との出会いが、建築家・隈研吾の出発点にあった。新国立競技場に込めた歴史と時代、風土に根ざした設計思想を語る。

 

・堀江貴文:スポーツはビジネスチャンスにあふれている(対談)

2004年の球界再編成騒動の中、なぜ彼は球団買収に動いたのか。アイデア満載、忖度しないホリエモン流スポーツビジネスのススメ。

 

 

この他にも柔道の井上康生氏、フェンシングの大田雄貴氏、ボクシングの大橋秀行氏、そして実業界からは上野祐一氏(一般社団法人ジャパンエスアール会長)、島田慎二氏(株式会社千葉ジェッツふなばし代表取締役社長)といった人々が講師陣に名を連ねる。

 

 

何もしないでいられますか?

スポーツとビジネスを直接的に結び付けるという考え方には違和感がある。そういう人もいるだろう。でもそれと同時に、大きな感動を与えてくれるもの――それがスポーツであれほかの何かであれ――に対し、あえて何もせず傍観するだけでいようとする頑なな人は少ないのではないか。

 

ビジネスという言葉の意味は、お金が絡む“商取引”だけではない。“課題”や“顧客”という意味もある。『最強のスポーツビジネス』は、スポーツを媒体にした大きな枠組みを作ろうとしている人たちの意識や意図、そして気持ちといったものが、受け手の立場に留まりがちなわれわれ観客に向けてわかりやすく翻訳された一冊だ。

 

こういう種類の話はついつい力が入ってしまうし、正直言って力の抜きどころがまったくわからない。だからとりあえず、何らかの動きを起こそう。

 

【書籍紹介】

最強のスポーツビジネス

著者:池田 純
発行:文藝春秋

2019年のラグビーW杯、2020年の東京五輪と国家的スポーツイベントを控える日本。これらのイベントを成功させることはもちろん、2020年以降もスポーツを文化として根付かせ、産業として発展させるには何が必要なのか。プロ野球、横浜DeNAベイスターズの球団社長を5年務め、その間に赤字24億円を解消し、黒字化を達成した実績を持つ筆者が、各競技団体やスポーツ産業のトップをゲストに迎え開講した「スポーツビジネス・カレッジ」での講義が一冊に!

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