高速老婆(こうそくろうば)を知っていますか?
車やバイクなどに対して、人間離れをした速度で追いかけてくる「おばあさん」にまつわる都市伝説(フォークロア)の総称です。
『日本現代怪異事典』(朝里 樹・著/笠間書院・刊)によれば、走るババアは日本各地で目撃されており、地域によっては快速バーチャン、120キロババアなど、さまざまな異名があるそうです。紹介します。
彼女(ババア)たちの事情
【ターボババア】
高速道路に出現し、走る車を四つん這いで追いかけてきて、追い付くと横にぴったりとついて並走するという老婆の怪異。
(『日本現代怪異事典』から引用)
ちなみに、ジェットババア→ターボババア→ハイパーババア→光速ババアという変異を遂げます。本書『日本現代怪異事典』には、高速老婆の怪というカテゴリーだけでも20項目以上を収録しています。
習性や呼称がバリエーション豊かであることも「ババア怪異」の特徴です。
首を引き抜く老婆、足喰いババ、サイクリング婆ちゃん、壁からバーサン、千婆さま、ババサレ、アメおばーさん、バスケばあちゃん、タンスにばばあ……など。数えてみたところ、110種類を超える「ババア怪異」が収録されています。
ババア怪異たちの多くは、たいてい「ワケ有り」です。
たとえば、スケボーババアは、飲酒運転の車にはねられて事故死したという来歴があります。けっして逆恨みで怪異になったわけではありません。セーラー服のババアは、みずから命を絶ってしまったときは若い女子生徒でした。何十年も成仏できないからババアになったのです。若作りではありません。
バラエティ豊かな「トイレ怪異」
【三本足のリカちゃん】
人形にまつわる怪異。(中略)トイレの花子さんのように学校のトイレで「三本足のリカちゃん、あそぼ」といった言葉をかけると三本足のリカちゃんが現れ、場合によっては足を切断されるなど害を被るものがある。
(『日本現代怪異事典』から引用)
キャラクター性がある、耳目を集めるような「怪異」は、多くの派生エピソードを生み出します。
三本足のリカちゃん(さんぼんあしのりかちゃん)の項目には、包丁で襲い掛かってくるパターンのほか、数種類のバリエーションが報告されています。由来もさまざまです。工場から流出した「幻の欠陥ロット」である説。三本目の足は「人肉」で作られている説。いずれにせよ、読んでいるだけで背筋がゾッとします。
本書『日本現代怪異事典』には、数多くのトイレにまつわる怪を収録しています。花子さんや三本足のリカちゃんに限らず、怪異は「トイレ」で目撃されることが多いようです。
不幸の手紙は、時代とともに電子メール(チェーンメール)へ置き換わりました。怪異には、その時代の世相が反映されるからです。