「月刊ムー」の読者欄といえば、ペンフレンド募集コーナーが有名です。一時期は「前世・使命・戦士の記憶」を共有するソウルメイトを探すべく、切実な思いで文通相手を求めるムー読者たちのよりどころでした。
じつは、「月刊ムー」には、ほかにも読者コーナーがあります。創刊直後の1982年から始まった「あなたの怪奇ミステリー体験」(当初タイトルは「わたしのミステリー体験」)という投稿欄です。
『ムー実話怪談「恐」選集』(吉田悠軌・著/学研プラス・刊)は、35年以上の歴史がある「ミステリー体験」の傑作選です。
パニック!「惨殺された叔母の通夜」
青森県・15歳女性。1980年代の読者投稿です。不幸な事件で亡くなった叔母(おば)さん。その通夜の席で、投稿者はこの世ならざるショッキングな体験をします。
突然、殺された叔母さんの長女が、口から泡を吹き、目を白黒させて倒れてしまったのです。
(中略)
そのうち、今度はお経を読んでいたお坊さんが棺桶のほうへズルズル引き寄せられ始めたではありませんか。
(『ムー実話怪談「恐」選集』から引用)
当然のごとく、通夜の会場がパニック状態に陥りますが、ある人物が発した「ことば」によって……。
「月刊ムー」創刊から現在にいたる30余年のあいだ、「ミステリー体験」投稿コーナーを担当している人物がいます。ライターの「T氏」です。T氏によれば、投稿者の所在地は、なぜか北海道や東北地方に偏りがあるそうです。
そのほか、1980年代の投稿は、連続神隠しについて語った「5歳の子供は」。魂が抜けた人の表情にまつわる「笑っているんですね」。ダンプカーに轢かれたくなる呪い「道路で横に」……などが収録されています。
怪奇!!「るみちゃん人形」
北海道・27歳女性。1990年代から2000年代前半の読者投稿です。子どものころに買ってもらった「声が出る人形・るみちゃん」。投稿者はとても可愛がり、中学生までは寝るときも一緒でした。しばらくのち、結婚と出産をきっかけに実家に預けたところ……身のまわりに異変が起こり始めます。
それからです。子供がだれもいないところを指さして、急に泣きだすようになったのは。私自身、台所に立っているときなど、だれもいないのに服の裾を引っぱられるようになりました。
(中略)
るみちゃんは、今も私の実家にいます。(中略)本当に大好きだった人形なので、いずれは家に連れて帰ってきて、娘と遊ばせたいと思っているのですが……。
(『ムー実話怪談「恐」選集』から引用)
投稿者だけは、るみちゃん人形にまつわる怪奇現象におびえません。この体験談の怖いところは、ふしぎな人形よりも……。
そのほか、1990年代〜2000年代前半の投稿は、ドッペルゲンガー現象の合理的解釈を示した「別の場所の夫」。小学6年生だった投稿者が、未来の電子機器を目撃した思い出「まだまださきのもの」……などが収録されています。
「月刊ムー」は、老若男女の愛読者によって読み継がれている雑誌です。なかには、元受刑者を名乗る読者からの投稿もありました。