作業着が汚れたらどうするのか?
清掃職員は、作業によってはごみまみれになったり、臭いが染みついたりする。(中略)したがって、清潔な格好で帰宅できるように、洗身が必要となる。そのための施設が清掃事務所や清掃センターには整備されている。
(『ごみ収集という仕事』から引用)
1日の作業は、「回収」と「運搬」に分けることができます。前半は、ごみ収集所を巡回する。1時間の休憩。後半は、収集のつづき、不燃ごみの破袋(はたい)という仕分けをおこなったり、焼却場へ運んだりします。
本書『ごみ収集という仕事』を読めば、役所のパンフレットには書いていない生々しい実態を知ることができます。たとえば、「清掃職員にまつわる複雑な雇用システム」や「休憩時間の過ごしかた」や「洗身」についての記述です。
夏場は、大量の汗や飛沫によって作業着がずぶ濡れになります。そのため、お湯を使える洗身施設や洗濯機を利用できることになっていますが……はたして運用実態は!? 現場で働いている人たちが「匿名」で証言しています。
動物死体の引き取り
死んだ犬や猫をそのままビニール袋に入れて渡されたり、タオルに巻いただけで渡されたりする場合もある。引き取る際は、ごみ収集時に着用する手袋をしていては配慮に欠けるので、素手でおこなう。
(『ごみ収集という仕事』から引用)
新宿区は、亡くなったペットを有料(3000円)で引き取っています。
ご遺体は冷凍保管したのち、まとめて火葬するそうです。荼毘に付したあとの「骨」を引き取りたい飼い主には、専門業者を紹介してくれます。
ごみ収集に関わっている人は、運転手や作業員だけではありません。
たとえば、回転盤付きの小型プレス車をメンテナンスする専任の自動車整備士がいます。収集中に、ごみ袋のなかに混ざったライターやスプレー缶のせいで火災が発生することが珍しくなく、破損したプレス機構を修理するためです。
本書『ごみ収集という仕事』には、最近増えてきた清掃車の女性運転手にまつわるドキュメントも収録されています。現場第一主義の研究者による画期的なフィールドワークの記録です。お試しください。
【書籍紹介】
ごみ収集という仕事: 清掃車に乗って考えた地方自治
著者:
発行:コモンズ
若手研究者が新宿区内で9か月間にわたって、ごみの収集を中心に清掃指導や環境学習などを体験。それに基づいて、過酷な清掃という仕事の奥深さ、日があたらない場所で真摯に働く職員の姿、歌舞伎町や新宿二丁目のごみ事情、民間委託の問題点、そして本来の地方自治のあり方について論じる。