本・書籍
2018/9/6 17:00

一発屋芸人が一発屋芸人について掘り下げる――髭男爵・山田ルイ53世の『一発屋芸人列伝』正統派ルポルタージュだった!

芸能界には「一発屋芸人」と呼ばれる人たちがいます。かれらは何処からやって来て、脚光を浴びたあと、何処へ去ったのでしょうか。

 

はじめて明かされる、一発屋業界の知られざる舞台裏とは? 元・一発屋芸人による渾身のノンフィクション本『一発屋芸人列伝』(山田ルイ53世・著/新潮社・刊)を紹介します。

 

 

白塗りの怪人「コウメ太夫」

コウメ太夫。鬘(かつら)、着物、白塗りメイク ── ゲイシャガールに扮した男性が、まるで壊れたからくり人形のような動きをしながら、喉からしぼり出した甲高い声で「チャン・チャカ・チャン・チャン〜♪」 という三味線のメロディを口ずさみ、コウメ日記と称する「ツキがなかったエピソード」を朗唱したあと、怒りをあらわにした表情で「チクショー!」と絶叫する。

出オチ、ウケねらい、バカ殿もどき、意味がわからない、支離滅裂であると思われがちなコウメ太夫の芸風ですが……


大学中退後、幾つかの芸能事務所を転々とした後、梅沢富美男が主宰する劇団のオーディションに合格する。22歳の時であった。

(『一発屋芸人列伝』から引用)

梅沢富美男さんは、大衆演劇の舞台にて「女形」を演じているスターです。

コウメ太夫の奇妙な扮装は、梅沢富美男の艶姿が元ネタ。意外すぎて、びっくりしました!

 

 

コウメ太夫にまつわる誤解

本書『一発屋芸人列伝』によれば、マイケル・ジャクソンに憧れていた→ジャニーズ事務所をあきらめる→梅沢劇団に入門する→2年在籍したあと辞める→お笑いコンビ結成→解散→という流れで「コウメ太夫」が誕生したそうです。

 

社会的成功はキャリアの積み重ねによる必然ということが、よくわかる事例です。

 

ところで、コウメ太夫の代名詞といえば「チクショー!」です。一見すると、「ゲッツ!」や「○○ですから〜残念!」などのワンフレーズ型の一発屋と見なされがち。しかしながら、コウメ太夫における面白さの核(コア)は、前フリのエピソード部分にあります。

 

「露天風呂かと思って入ってみたら、ただの池でした」
「偏差値が低い学校に行ってみたら、先生がチンパンジーでした」

 

つまらないのに、なぜか笑いがこみ上げてくる。「完成度が低いネタ」の完成度が高い。ハズすことをハズさない。虚実皮膜のトートロジーを自在にあやつる。それこそがコウメ太夫の芸です。

 

ちなみに、一発屋芸人だからといって「芸がひとつ」とは限りません。現在のコウメ太夫さんは芸能活動をしながらアパート経営をおこなっています。

 

これまで紹介してきた『一発屋芸人列伝』を書いているのも、一発屋芸人と見なされているお笑いコンビ「髭男爵」の山田ルイ53世さんです。

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