本・書籍
ひみつシリーズ
2018/9/14 17:00

復刻版「できるできないのひみつ」が絶好調! 学習まんがのカリスマ・内山安二を知っているか?

学研の学年誌「科学と学習」に連載されていたまんがや、70〜80年代に多くの小学生を虜にした学習まんが「ひみつシリーズ」。

 

これらを電子復刻するプロジェクト「もう一度見たい! あのころの学研」シリーズが2018年6月から刊行されている。ラインナップの第1弾を飾った「できるできないのひみつ」は、初版が40年以上前の本であるにも関わらず、復刻から2か月経った 2018年8月4日の「Amazon売れ筋ランキング」電子書籍の学習まんが部門において1位を獲得するなど話題を呼んでいる。

 

↑『できるできないのひみつ』の初版は1976年。42年前の本が話題になった!

 

この「できるできないのひみつ」の作者は、60年代から80年代にかけて、とくに学習まんがのジャンルで活躍した漫画家・内山安二氏。

 

その名前にピンとこなくても、内山氏の描く元気いっぱいの少年キャラや、にぎやかな動物キャラたちが、ドタバタと活躍する学習まんがの数々をよく覚えているという方も多いのではないだろうか。

 

それもそのはず、学年誌「科学と学習」が12誌合算で670万部発行という最盛期を迎えた1980年前後、内山氏は「科学」において全学年連載、並行して「学習」でも数々の作品を執筆。また、小学校の図書室などにはたいてい置かれていた「ひみつシリーズ」などにも多くの作品を残している。当時の小学生が日常で内山氏の絵を目にしている機会はたいへん多かったはずだからだ。

 

↑当時、内山キャラたちを目にしたことのある人は多いだろう

 

〝学習まんがの大看板作家〟内山氏ではあるが、週刊や月刊の少年まんが誌ではなく、小学生が読む学習まんがという限られたジャンルで活躍していたため、その略歴については、あまりふれられることはなかった(本人もあまり表には出していない)。そこで、簡単にではあるが、ここで見てみよう。

 

内山氏は1935年、熊本県に生まれた。中学生のころからまんがの楽しさに目覚め、当時のまんが好きの少年たちから作品を公募していた雑誌『漫画少年』に投稿、たびたび入賞を果たす(なお、「漫画少年」公募の入賞常連には、石ノ森章太郎氏ら「トキワ荘」の漫画家たちもいる。つまり内山氏も彼らと同世代の漫画家だ)。

 

1954年、毎日新聞西部本社(福岡県)に入社。毎日小学生新聞編集部でイラストや、ニュースを小学生にもわかりやすく伝える学習まんがの執筆を担当した。ここから氏の漫画家人生、そして学習まんがが始まった。

 

ちなみにこのころ、同新聞で連載をもっていた3歳年下の松本零士氏と出会い、その友情は生涯続く。

 

その後、毎日新聞社を退社すると、プロ漫画家として、「毎日小学生新聞」のほかに、学研の「科学と学習」などの児童書に活躍の場を広げていった。

 

また、1981年には、学習まんがの質の向上をはかる「LAC(Learn Assistance Cartoon)の会」を結成。これは、学習まんがの創始者とされる秋玲二氏の発案で内山氏が中心となった、学習まんがを描く漫画家たちの集まりだ。80年代に学習まんがのシリーズ単行本が各出版社から発行され、名作も多く生まれたが、その背景には「LACの会」の影響もあっただろう。

 

内山氏は〝学習まんがの立役者〟とも呼ばれるのだが、それはこうした活動の実績によるものだ。

 

↑LACの会結成時の会員名簿

 

その後、財団法人経済調査会の「土木工事の積算」など、大人向けの専門性の高い学習まんがの分野でも執筆。また、闘病をきっかけに日本オストミー協会からまんが集「ストーマ人生を歩き出して」を発行するなど、児童向け学習まんが以外でも作品を残した。
もちろん、2002年に亡くなるまで、児童向け学習まんがの執筆も継続。子どもたちの成長に寄り添うあたたかい作風は、生涯を通じて変わることはなかった。

 

↑専門性の高い大人向け学習まんが

 

内山氏は学習誌を主戦場にしていたこともあり、週刊誌と比べればその認知度が低いことを認めていた。「一度くらいは週刊少年誌なんかでメジャーなキャラを世に出したかった」と、息子でありイラストレーターのうちやまだいすけ氏に本音を語ったこともあった。

 

しかし、日のあたりにくい学習まんがにあっても、内山氏の残したキャラたちは、読者の心にまちがいなく残っている。冒頭でも触れた「できるできないのひみつ」の復刻が好調なセールスを記録し、また、学研のアカウントから発信された「デキッコナイス」「ヤメレ食っちまうぞ」などの内山ギャグが、SNS上で飛び交ったことは、その証左ではないだろうか。

 

↑内山ギャグの定番のひとつ、「ヤメレ食っちまうぞ」

 

「もう一度見たい! あのころの学研」シリーズでは、内山氏の作品のうち、「できるできないのひみつ」と「コロ助の科学質問箱」が刊行済みで、9/27に「科学物知り百科」が刊行予定。さらに「ひみつシリーズ」作品だけでなく、「科学と学習」連載作品も「内山安二コレクション」として随時、刊行される予定だ。あのころ出会った作品に、あなたももう一度再会していただきたい。

 

もう一度見たい!あのころの学研シリーズ購入ページ

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↑既に刊行されている「コロ助の科学質問箱」「内山安二コレクション」1巻と2巻

 

そして内山ファンは、今後の刊行予定に「チューいせよ!」

 

文=こざきゆう 監修=内山大助