本・書籍
2018/11/2 21:00

年間1000冊の読書量を誇る作家・谷津矢車がオススメ!秋の夜長に読みたい10冊

「読書の秋」です。本、読んでますか?

 

本記事では、毎日Twitterで読んだ本の短評をあげ続け、読書量は年間1000冊を超える、新進の歴史作家・谷津矢車さんに、この秋に読んでほしい本10冊(+α)を選んでもらいました。ハードな人文書からエンタメ、ミステリ、ラノベからマンガまで全ジャンルを網羅。

 

必ず読みたい本が見つかるはずです!


すみなすものは 書物なりけり

高杉晋作が死の間際に辞世の句として「おもしろき こともなき世を おもしろく」と詠んだところで力尽き、野村望東尼という女性勤王家の読み継いだ下の句「すみなすものは 心なりけり」を見て「面白い」と口にして息絶えた、という逸話がある。この話の真偽はさておくにしても、この上の句は非常によくできている。下の句次第で歌い手の人生観が浮き彫りになるからだ。

 

さて、皆さんはどんな句をひねるだろうか。ちなみに、わたしは以下の通りである。

 

「すみなすものは 書物なりけり」

 

本はいい。無知なる自分を知ることができる。世界がとんでもなく広いのだと気づかされる。そして、本を読んでいる間だけは世界とつながったつもりになれる。

 

と、本を書くすべての著者、一冊の本を世に出し届けてくれるまでに尽力してくださっている皆様に感謝を捧げつつ、わたしの本棚から、今年わたしが出会った中で特に感銘を受けた本の一部を紹介したいと思う。

 

物事を俯瞰して眺める2冊

「津波の霊たち 3.11 死と生の物語」「ホモ・デウス(上下)」

まずはこちら津波の霊たち 3.11 死と生の物語(リチャード・ロイド・ハリー・著、濱野大道・訳/早川書房・刊)である。記者として二十年あまり日本に住み続けた英国人の著者が、東日本大震災の取材を通して見たもの、感じたものを描き出している。本書は大震災関連の本として出されているが、著者の視点のゆえか、震災ルポに留まらず、非常に深いところにまで切り込んだ日本社会論になっている。震災という非日常によって浮かび上がる日本列島に住む人々の心性を目の当たりにした時、わたしたちが普段意識しない不文律に影響される存在なのだと知るよすがになるだろう一冊である。

 

次に紹介するのはホモ・デウス(上下)(ユヴァル・ノア・ハラリ・著、柴田裕之・訳/河出書房新社・刊)。あの「サピエンス全史」で全世界を驚かせたビッグヒストリーの旗手による待望の新刊である。人類を生物学的視点からとらえ、前著で歴史を読み解き直して見せた著者が、今度は人類種の大きな未来像を想像しようという試みである。もちろん、本書が描き出すような未来に向かうかどうかは誰にも分からないところだが、非常に読み応えのある一冊であるとともに、「物事を俯瞰して眺める」という作業の大切さもまた思い起こさせてくれる。

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