第2次世界大戦が生んだ諜報機関
『日本の黒幕』(高橋五郎・著/学研プラス・刊)には、 “天皇の金塊 パナマ文書が暴く影の世界支配者”というサブタイトルがつけられている。都市伝説的なニュアンスで語られる埋蔵金や秘密資金、そしてそれを管理する黒幕的存在に迫っていくのがテーマだ。
戦争は発明の母であろう。その母が生んだ第2次世界大戦の「発明品」に、宇宙ロケットがあり、水爆や原爆がある。そして、母なる戦争の陰で生まれた別の兄弟たちもいる。
情報機関、つまり秘密諜報活動体制である。
『日本の黒幕』より引用
アメリカならCIAやNSI。イギリスならMI6。旧ソ連ならKGB。そしてイスラエルならモサド。こうした諜報機関は自国の利益のためにさまざまなシーンで暗躍し、時には手荒いことをするようだ。そういえば今年の春先、イギリスで暮らしていたロシアの元スパイとその娘が毒殺未遂に遭うという事件が起きた。
天皇の金塊とは?
本書の核となる部分のひとつが“天皇の金塊”だ。著者の高橋氏がこれについて知ったプロセスは、きわめて現実的なものだった。
「天皇の金塊」とは、ひとことでいえば昭和以前の天皇が所有していた、莫大な秘密マネーのことである。
私がはじめてその話を聞かされたのは、元ナチス・ドイツのスパイ、スペイン人のベラスコの口からだった。彼によれば、天皇の秘密マネーは戦前からバチカン筋の銀行でこまめに運用されており、素の金額も莫大なものだった、と。
『日本の黒幕』より引用
第2次世界大戦中、三国同盟を形成していた日本の機密情報がドイツ側に漏れていたということなのだろうか。話はここで終わらない。
また、それから数年後に私は、ある日本人の国際金融ブローカーから、昭和天皇所有の天文学的規模の金塊と財宝が、現在もフィリピン山中に秘匿されているという話を耳にする。そこにはバチカン名義の金塊や、旧日本軍が占領支配した外国から略奪した金塊や財宝なども含まれているというのである。
『日本の黒幕』より引用
今年の6月、ルソン島中部のサンバレス州沖のカポネス島で、無断で大きな穴を掘ったグループが違法鉱業および海洋保護区に関する市条例違反で逮捕された。このグループには日本人が3人含まれていた。いわゆる“山下財宝”を探していたトレジャーハンターだったのだが、高橋氏がベラスコから聞いたという話の内容と微妙にシンクロする気がする。
パナマ文書が意味するもの
もうひとつの大きなピースとなるのが、「パナマ文書」だ。2016年4月に全世界に向けて公表されたもので、世界の政治家や有名企業の経営者などによる租税回避地の利用実態をつまびらかにした内部文書である。高橋氏は、次のように語る。
かくしてこの「パナマ文書」なるものは、金満家たちが悪事を働いた動かぬ証拠とされることになった。しかしながらその「文書」をメディアに暴露したと自負する調査報道スタッフも、肝心の「文書」の位置づけについては何もわかっていないのだ。
『日本の黒幕』より引用
この種の話を陰謀論というひと言で片づけてしまうのは簡単だろう。しかし高橋氏の情報収集能力と分析力、そして筆力を基に突き進むこの一冊のインパクトは圧倒的だ。きわめて上質な歴史ルポルタージュであり、知的好奇心をかきたてる一流のエンターテインメントでもある。
【書籍紹介】
日本の黒幕
著者:本村浩之
発行:学研プラス
世界をゆるがした「パナマ文書」の裏には世界経済を支配するひと握りの大富豪と莫大な財宝「天皇の金塊ゴールデン・リリー」の存在があった。戦争と経済パニックから透けて見える日本の黒幕とは、いったい何者なのか。タブーに挑んだ衝撃のノンフィクション。
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