2018年最も売れた本と言えば、「漫画 君たちはどう生きるか」。80年前の名著が17年にマンガ化されて以来、18年も売り上げを伸ばし大ブレイクしました。戦前の閉塞的な空気と現代の空気が似通っているのか、“信念を持って生きる”という強いメッセージが共感を呼んだと言えます。
一方で下半期に話題となったのが、「自衛隊防災BOOK」。日本各地で大きな自然災害が頻発し、潜在的な不安が高まっていることがヒットの理由と考えられます。自衛隊オフィシャルの動画サイトとの相乗効果も大きかった。
この2冊は、前者は精神的な面で、後者は実践的な面で“生き抜く術”を教えてくれます。
【この人に聞きました!】
書評家
卯月 鮎さん
ファンタジー、SFを中心にノンフィクション、コミックなど幅広いジャンルで解説・紹介を手がける書評家、コラムニスト。
【オモテヒット】
2018年の年間ベストセラー! 累計210万部のヒット
マガジンハウス
漫画 君たちはどう生きるか
1404円/吉野源三郎(原作)、羽賀翔一(漫画)
戦前に出版された児童向けの生き方指南書が2017年にマンガ化。学校でのいじめを止められずに悩む旧制中学2年のコペル君。元編集者の叔父さんに一冊のノートを渡されて……。いじめや貧困、格差などそのテーマは現代にも通じます。
【ヒットの真相】
マンガ化で読みやすくなりギフト需要も
「“歴史的名著初のマンガ化”として2017年8月に発売されると、ジワジワと口コミで広まり部数を伸ばしました。マンガなので、原作を知っている層が子どもや孫にプレゼントしやすいという後押しもありました」(卯月)
【ウラヒット】
8月発売から早くも20万部突破! 自衛官のサバイバル術が注目された
マガジンハウス
自衛隊防災BOOK
1296円
危機管理のプロ・自衛隊に伝わる、ピンチに役立つノウハウを、イラストと実際の自衛官による写真入りでわかりやすく紹介したマニュアル本。災害時はもちろん、レジャー編、自衛隊体操など、身近な内容もウケています。
【ヒットの真相】
災害時から日常生活まで広くカバー
「“ツナ缶をローソクにする”“イヤホンを絡まず結ぶ”“ナイロン紐を素手で切る”など日常でも使える知恵が満載。もちろん、災害・避難時の対処法も多数公開され、持っていて損はないと思わせてくれます」(卯月)
【こちらもヒット】
ベストセラーの電子版エッセイが書籍化
学研プラス
自衛隊入隊日記 完全版
1080円
留学資金を貯めるため、普通の青年が突如として自衛隊に入隊! その体験を小説化した人気電子書籍に、新エピソードと4コママンガ14点を追加した完全版。
芸人のコミックエッセイでも大ヒットが現れた!
お笑いコンビ「カラテカ」の矢部太郎のエッセイマンガ「大家さんと僕」が日販の年間ベストセラー第2位。87歳の大家さんと矢部の関係が「ほのぼのする」と人気を呼びました。矢部は「Yahoo! 検索大賞2018」の作家部門賞も受賞。