世界三大珍味といえば、フォアグラ、トリュフ、そしてキャビアです。
フォアグラは、ガチョウやアヒルの肥大化した肝臓、トリュフは希少なキノコ、そしてキャビアやチョウザメの卵を塩漬けにしたものです。
僕は長らく、キャビアは「サメの卵」だと思っていましたが、実はサメの卵ではないようなのです。チョウザメの卵なのに、なぜ……?
キャビアの親「チョウザメ」はサメじゃない?
実は、チョウザメはサメではないのです!
『ほぼ命がけサメ図鑑』(沼口麻子・著/講談社・刊)の著者は、世界でおそらくただ一人の「シャークジャーナリスト」、つまりサメ評論家。大学時代からサメの魅力に取り付かれ、世界を飛び回ってサメの研究を行っています。
その著書に、このような記述があります。
このチョウザメ、名前に「サメ」とついていますが、サメの仲間ではなく、シーラカンスと同じく「古代魚」のひとつといわれています。チョウザメのチョウは蝶々のような形の鱗を持っていて、口が下のほうにあることと、尾びれの形が上下非対称なことがサメに似ているため、その名がつけられたようです。
(『ほぼ命がけサメ図鑑』より引用)
つまり、チョウザメはサメではなく、シーラカンスに近い古代魚に近い種類。なので、キャビアはサメの卵ではなく、普通の魚卵ということです。
ちなみに、コバンザメもサメではなく、スズキ目に属する魚。名前はサメですが、サメではありません。サメによくくっついていることから、サメの名前がつけられたのではないかという説があります。
サメは軟骨でできている「軟骨魚類」
じゃあ、サメは魚じゃないのかというと、そんなことはありません。しかし、普通の魚とサメはグループが違います。魚は「硬骨魚類」、サメやエイは「軟骨魚類」というグループに属しています。硬骨魚類は硬い骨がありますが、サメやエイは、すべての骨が軟骨となっています。
そのほか、エラも異なります。
「硬骨魚類」のエラには、エラを守ったり水を取り込んだりするための「エラブタ(鰓蓋)」と呼ばれるフタがついていますが。「サメ」や「エイ」のエラの孔(あな)は身体の表面にむき出しです。
(『ほぼ命がけサメ図鑑』より引用)
また、硬骨魚類はエラは左右一対ですが、軟骨魚類はエラの孔が左右5~7対ある点も違います。大きくくくれば「魚類」ですが、サメやエイはちょっと違うグループなんです。サメやエイにすれば「同じにせんといて!」と思っていることでしょう。
サメの過半数は胎生
「サメ」と一口にいっても、実は生態がさまざま。たとえば一般的に魚類は、卵を産んで子孫を残す「卵生」のものがほとんど。しかしサメは、6~7割が体内で子どもを育てて赤ちゃんを産む「胎生」、3~4割が卵を産む「卵生」。その胎生のサメでも、お腹の中での育ち方はいくつかあるようです。
卵から孵った子ザメが、母体内で自分の卵黄だけで成長する「卵黄依存型」と、母ザメから栄養補給を受ける「母体依存型」の2つです。
(『ほぼ命がけサメ図鑑』より引用)
しかも、母体依存型のなかには、子宮内で子ザメ同士が共食いをし、生き残ったものだけが体外へ出てくるというサメ(ホオジロザメやアオザメなど)もいるとのこと。生まれた瞬間から生存競走が激しいようです。
サメのイメージが一変するかも?
一般的に、映画『ジョーズ』のように、サメは人を襲う危険な魚というイメージがありますが、本書を読むとそうではなさそう。実は臆病で、人を襲うということはあまりないとのこと。
また、手のひらサイズのサメもいれば、6mほどにもなるサメもいます。食べておいしいサメもいれば、リンゴの香りがするサメもいます。本書を読むことで、サメのイメージが変わることでしょう。
ああ、水族館に行きたくなってきたなー。サメのいる水族館に行きたいなー。
【書籍紹介】
ほぼ命がけサメ図鑑
著者: 沼口麻子
発行:講談社
巨大ザメも深海ザメも存在します。でも、人食いザメは、存在しません。世界でたったひとりの体験的シャークジャーナリストの本!