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2019/7/29 21:45

ホリエモンがRTして話題に。史上最強にイライラ!そして夫婦の在り方を問われるエッセイ漫画「夫の扶養からぬけだしたい」

「専業主婦」って、何かとやいやい言われる立ち位置だ。

 

専業主婦が日々行っている家事などを金額であらわすと、年収300万円とも1200万円とも言われている。算出方法や国によって額が大きく異なるが、「無償で家族のために尽くしてるけど、実際にはこんなに評価されるべきことをやってんだぞ!」という主婦側の主張を正当化する数字だ。いわば、専業主婦肯定派の意見だろうか。

 

一方で、「出産を機に仕事を辞めて専業主婦になると、生涯賃金2億円以上の損失」だという専門家の声もある。この場合は、直接的に専業主婦を否定しているわけではないが、「ママになっても働く選択肢を!」という論調に繋がる。

 

どちらが正しいかは一概に言えないが、何かと話題になりやすく、「VS夫」、「VSワーママ」など、やたらと敵を作りやすいのが専業主婦…というのが個人的な見解だ。

 

さて、ここに専業主婦が主人公のエッセイ漫画がある。以前ホリエモンこと堀江貴文氏が、第一話を「これはひどい」とRTして話題になった『夫の扶養からぬけだしたい』(ゆむい・著/KADOKAWA・刊)だ。

 

「主婦」の立場で読むと、イライラが募る!

妊娠・出産を機に漫画家になる夢を諦めて専業主婦になった主人公・ももこと、仕事一筋で家庭を顧みず、「たった40万の収入で『共働き』って堂々と言えんの?」「僕と同等に稼いでみなよ!」などパワハラワードを繰り広げる夫・つとむ。

 

専業主婦である負い目から言いたいことを我慢し続けた末に、ついに堪忍袋の緒が切れ、扶養から抜け出して離婚を決意するのだが…

『夫の扶養からぬけだしたい』は、こんなストーリーだ。

 

私自身は、結婚後フルタイムも派遣も専業主婦も在宅ワークも経験してきたので、専業主婦の「わかってもらえない大変さ」は痛いほど理解できる。

 

作中にあったように、友人とランチをしても「夫が稼いできたお金で食べてる…」という罪悪感。保険の相談をしている中で、「奥様の収入が旦那様を超えることはまずありえないと思いますので…」というFPの人の言葉に感じるモヤモヤ。

 

ほかにも、一日家にいるからといって、家のことを完璧にできるわけじゃない! 外で働いてるよりも家事や育児の方がラクだと思うな! 「誰のおかげで生活できると思ってるんだ!」と言うのなら、「誰のおかげで食材が料理になって、水が適温のお風呂になって、汚れ物が綺麗になって畳まれて、ホコリだらけの床がピカピカになってると思ってるんじゃい!」 子ども一人のお世話でどれだけ自分の時間がなくなるのかおわかり?

 

主婦の心の叫びは果てしない。

 

 

そうはいっても、「夫」だってツライよ!

とまあ、主婦側の不満を一気に代弁してみたが、もちろん夫側だって物申したいことが山ほどあるだろう。このエッセイの良いところは、夫側の心情もしっかりと描かれているところだ。

 

すべては家族のため、妻と子どものために、朝から晩まで働く。くたくたになって家に帰ると、片付いていない部屋、山積みの洗濯物。唯一休まる場所であるはずの自宅が、休まらない。会社では上司に責められ、家では「もっと家事や育児に参加して!」と嫁に責められる。自分のやりたいことを我慢し、たくさんのことを犠牲にして、家族を養っているというのに。

 

夫・つとむは、言葉のチョイスや発するタイミングが最悪で腹立たしいが、根底にある家族に対する責任感や愛情を思うと、一概には攻め立てられない。

 

実際、『夫の扶養からぬけだしたい』を一度目に読んだときは、ももこ側に肩入れして読んだが、再読時にはつとむの気持ちも伝わってきた。そうか、この夫婦に足りないのは、相手を気持ちや状況を推し量る気持ちだ。つまり、「想像力」が絶対的に足りないのだ。

 

 

夫婦円満、良好なコミュニケーションのカギは「想像力」

おそらく、『夫の扶養からぬけだしたい』の評価はさまざまだろう。こんな酷い夫とは別れたほうがいい! 何言ってんだ、ももこは世間を知らなさ過ぎて甘い! 世の中には、子どもを複数かかえてフルタイムで働いている女性がたくさんいる! いやいや、もっと夫が歩み寄って、主婦の気持ちを理解しろ!

 

どれも真っ当で、異論はないが、視点がひとつに定まってしまっているからこそ、話がこじれる。結婚相手に不満を持ち、毎日が辛くなるきっかけは、「自分ばっかり〇〇してるのに」、この思考に尽きるだろう。

 

「私ばっかり」「俺ばっかり」の被害者意識は、負の感情こそ増産するが、笑顔も幸せも生まない。頭ではわかっているつもりなのに、いざ自分のキャパがいっぱいいっぱいになってしまうと、つい「自分はこんなに大変なのに、〇〇は△△してくれない!」と相手を攻撃することばかり考えてしまうのが人間なのだな。今一度、自分のパートナーや家族の関係性を見直そうという気持ちにさせてくれる一冊だった。

 

夫ファースト、子どもファーストの時間を作りつつ、自分ファーストの時間も捻出する。そんな、相手を慮る気持ち、想像力こそ、家庭円満の秘訣なのだ。自戒の念を込めて、このコラムの結びとする。

 

【書籍紹介】

夫の扶養からぬけだしたい

著者:ゆむい
発行:KADOKAWA

「僕と同等に稼いでみなよ!!」夫の心ない言葉、非協力的な態度。同等に収入がないと、家事・育児に協力してほしいと言うこともできないの?「離婚」の2文字が浮かび続けるももこの決断は…。

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